耳のいいエレキ・ギタリストが実はいちばん純正律を理解できているかもしれないのです。

体に悪い音を避ける例として、エレキ・ギターの話をしましょう。エレキ・ギターは通常、ロックやジャズに使われるので、「純正律」とは無関係だと思われるかも知れませんが、絶対にそんなことはありません。
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玉木宏樹 @tamakihiroki

平均律ピアノよりも少し広い完全五度を基調にしているヴァイオリンの音程は、メロディを奏く場合、少しずつ広めの音程のピタゴラスになる。しかし、自分一人で二重音を出す時には、しっかりとハモらないと気持ち悪いので、その時は「ミ」がピタゴラス音律よりもずっと低く「純正律」で音程をとっている

2017-10-30 15:15:34
玉木宏樹 @tamakihiroki

オクターヴを単純に12等分し、響きを犠牲にして調律と演奏をたやすくしたのが平均律だが、この平均律の濁った「ドミソ」はなかなか浸透せず、やっとプロにまで認知されたのが約100年くらい前のこと。だからそれ以前の音階の調律が平均律であったはずがない。

2017-11-10 11:40:24
玉木宏樹 @tamakihiroki

ミーントーン、ヴェルクマイスター、キルンベルガー等、チェンバロ用にも種々の調律があった、その基礎となっているのがピタゴラス音律と純正律である。ピタゴラスとはもちろん、ピタゴラスの定理の発見者として有名だが、彼は数学者というよりは古代ギリシャの数秘学による秘密結社の親分だったらしい

2017-11-15 11:54:54
玉木宏樹 @tamakihiroki

ピタゴラスが、一本の弦(仮に「ド」として)を張った一弦琴の響きを分析したところ、その長さの2分の1がオクターヴ上、3分の2が完全五度上の「ソ」であることを確認した。そこで、完全五度上の一弦琴を用意し、またその弦の完全5度をとる。すると「ドソレ」という三つの完全五度の積み重ねができる。

2017-11-24 10:37:44
玉木宏樹 @tamakihiroki

次は「レ」から5度上の「ラ」という風に音をとっていくのが基本だけど、この順でいくと、すごい高い音程になってしまうので、「ドソ」の次の「レ」は一度オクターヴ下に下げる。

2017-11-24 10:38:03
玉木宏樹 @tamakihiroki

この順番で音をとっていくと、13回目に「シ」の「♯」とオクターヴ上の「ド」より半音の100分の24高い。しかしこの近似値の高さを、オクターヴ上とみなして並べ替えたのがピタゴラス音律である。

2017-11-24 10:38:19
玉木宏樹 @tamakihiroki

100分の24高いオクターヴ上の「ド」を100分の24低くして純粋なオクターヴにするとどこかにしわ寄せが行くはずだが、その100分の24を分散させないで、使わない場所の完全5度に押し込める。これがピタゴラス音律である。

2017-12-04 15:02:14
玉木宏樹 @tamakihiroki

だから、昔からこの100分の24の差を平均的に完全5度に分散させる方法を考えた人はたくさんいた。これが平均律なのである。世界で最初に平均律を考えついたのは中国人だと言われている。

2017-12-04 15:02:29
玉木宏樹 @tamakihiroki

ピタゴラス音律、実はピタゴラスが発見したわけではなく、ごく自然に世界中に存在している。中国の三分損益とか日本の順八逆六という調律法が実はピタゴラスである。日本の順八逆六の場合、「ド」と「ソ」の間は順に半音が八つ、そして逆に半音六つ下がれば「レ」になる。そこで順八逆録というのである

2017-12-20 14:16:54
玉木宏樹 @tamakihiroki

この方法で並べ替えた音階には、「ファ」の高さの音がない。そこで「ド」の完全五度下から始めると、純粋な「ファ」の音ができる。実は中世のオルガンの基音は、「ドレミファソ」という音階を作るために、「ド」の完全五度下の「ファ」であった。

2017-12-20 14:17:11
玉木宏樹 @tamakihiroki

一弦琴で自然な音程をとる方法がもう一つある。これはギターでもハープでも、ヴァイオリン属の楽器でも簡単にできる、それはハーモニックスを細かく分析してゆく方法。これは完全な自然倍音で、それを並べ替えた「ドミソ」のハモりは非常に美しい。この「ミ」はピタゴラスでは絶対に現れない高さである

2017-12-22 13:03:41
玉木宏樹 @tamakihiroki

ピタゴラスのはじめの三つ目の音「レ」は、純正律の自然倍音には絶対に存在しない。チェロやヴィオラは下から「ドソレラ」と完全五度に調弦するが、この、下から三つ目の「レ」を「ソ」の完全五度上に調弦することによって、既に純正律的矛盾が起こる。それは、

2017-12-25 14:31:14
玉木宏樹 @tamakihiroki

「ソ」の弦、つまり、G線で「ラ」を押さえた時に起こる。下の「ド」と長六度をキレイに完全にハモると、その「ラ」と「レ」の開放弦が絶対にハモらない。「レ」に対して「ラ」が低過ぎるのである。また「レ」に対して完全四度下にキレイに協和させると、今度は下の「ド」との間の長六度が全く合わない

2017-12-25 14:31:38
玉木宏樹 @tamakihiroki

エンヤをはじめとするケルト系ポップス、そしてヒリヤード・アンサンブルやキングズ・シンガーズ等のクラシック・コーラスがくりひろげる天国的な透明感のあるハーモニーの世界、これが純正律(純正調ともいう)という、古代から伝えられている最もよくハモる調律の世界なのである。

2018-01-10 12:33:25
玉木宏樹 @tamakihiroki

純正律などというと、むずかしそうだが、そんなことはない。単純によくハモることであって、ウィーン少年合唱団の天使の歌声を思い出してみればよく分かる。彼らの音程の訓練は絶対にピアノではやらない。

2018-01-10 12:33:47
玉木宏樹 @tamakihiroki

今のピアノやオルガン、ギター、シンセサイザー等、音程を固定させる楽器はオクターヴを単純に12に平均分割した調律であり、平均律というが、この本来の意味は、平均的に音を狂わせてあるという意味である。

2018-01-12 12:47:36
玉木宏樹 @tamakihiroki

実は、バッハもモーツァルトもベートーヴェンも、そして、19世紀のロマン派前期の作曲家たちは、いずれも平均律では作曲していない。12個の鍵盤だけで純正律の調律をすると使えなくなる和音が多すぎるため、古代から純正律に近づけるためにいろいろな調律の工夫がなされた。

2018-01-12 12:49:42
玉木宏樹 @tamakihiroki

バッハは平均律を広めるために「平均律クラヴィーア曲集」を作曲したと日本語では記しているが、ドイツ語でも英語でも、どこにも「平均律」という言葉はない。ただ「Well tempered」と書かれているだけである。

2018-01-15 14:24:49
玉木宏樹 @tamakihiroki

この Well tempered とはいったい何だったのかというのが歴史的問題で、ベルクマイスター第IIIの調律だといわれている。バッハの時代に「平均律」の調律法は存在しなかったのだから、「平均律クラヴィーア曲集」とは、恐れ入った誤訳である。

2018-01-15 14:25:07
玉木宏樹 @tamakihiroki

バッハは対位法に適合したベルクマイスター調律だったが、後のモーツァルトに影響を与えたヘンデルはモノフォニーに適した中全音律(ミーントーン)を愛用した。モーツァルト時代に平均律の調律法が確立したが、モーツァルトは大変平均律をきらった。

2018-01-17 12:35:38
玉木宏樹 @tamakihiroki

ショパンもミーントーンで作曲し、転調の範囲が限られるため、一晩のコンサートでステージに3~4台のピアノを置いたと伝えられている。ところで最近、モンゴルやトゥバ地方の一人二重唱、ホーメイという唱法が脚光を浴びているが、これこそ、人間の声帯が自然倍音で成り立っていることの証明である。

2018-01-17 12:36:42
玉木宏樹 @tamakihiroki

この自然倍音を下から並べ替えたのが純正律である。ピアノの「ミ」は純正な「ミ」より半音の100分の14高いのだが、この違いは誰にでも分かるほどの差であり、とても汚い。音程を純正にとれるコーラスやアンサンブルはぜひ純正律でハモる訓練をしてほしい。純正律こそ「音の自然食」である。

2018-01-17 12:37:12