山田太郎参議院議員(当時)VS児ポ法改正案Part2:「【附帯決議】をめぐる闘い編」
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※シリーズ索引
Part1:「【附則第二条】との闘い編」
Part2:「【附帯決議】をめぐる闘い編」※当ページ
Part3:「成立前日の国会質疑編」※作成中
Part4:「成立後の新たな闘い編」※作成中
Part2:「【附帯決議】をめぐる闘い編」
※以下、役職は全て当時のもので表記。
※前回までのあらすじ
2013年の児ポ法改正案に紛れていた【附則第二条】は、実はマンガ・ゲーム・アニメの規制のための条文だったことが発覚。
参議院議員:山田太郎氏の世論喚起が功を奏したこともあり、大規模な反対世論が発生。2014年、遂に「【附則第二条】を入れるのは諦めました」「【附則第二条】を外した新しい改正案(再提出案)を出します」との連絡が入る。
しかし、それでもなお「児ポ法」は問題の多い法律だったのだ。
GW明けから児ポ法についての本格的な協議が始まります。マンガ・アニメの附則がなくなったとはいえ、まだまだ問題の多いこの法案について、修正要望をまとめましたのでご覧下さい。最後まで戦っていきます!taroyamada.jp/?p=5375
2014-05-01 17:50:09【児ポ法の問題点とは】
最大の問題点は、「法律本来の目的である、『子どもを性犯罪から守る』ことすら出来ない」ケースがあるという点だ。
これには、大きく分けて二つの理由がある。
①【児童ポルノ】と言う名称がそもそも不適
「子どもを性虐待から守る」ことが目的なら、規制対象は「子どもに性虐待をして撮った作品」すなわち【児童性虐待記録物】とするべきなのだが、何故かこの法律では規制対象を「児童を題材にしたえっちな作品」程度の意味しかない【児童ポルノ】と言う単語で呼称している。
【児童ポルノ禁止法】が「児童性虐待を防ぐ法」ではなく「えっちな創作禁止法」にすり替わってしまう(=子どもを性犯罪から救う法律ではなくなってしまう)危険性をはらむ、重大な問題だ。
②規制対象となる「児童ポルノ」の定義が雑でザル
1999年の立法当時から特に問題となっていたのが【三号ポルノ】の定義で、凄くざっくり言うと「半脱ぎもしくはそれ以上の格好になってる子どもの姿を記録したもので、一般人が見たら興奮するようなもの」が規制対象になるとしたものである。
……つまり、
● 子どもが自分の意志で撮ったきわどいコスプレの自画撮り
⇒その写真が色っぽく、一般人が見て「興奮する!」と思えば取り締まられ、子どもが処罰される
● 子どもが意に反して無理やり撮られた暴行されつつ犯された様子の動画
⇒その動画が残虐で、一般人が見て「興奮しない」と思えば取り締まられず、誰も処罰されない
……と言うことが平気でありえるのだ。
これでは、罰する必要のない子どもを罰することになってしまうばかりか、救うべき子どもを救うことすら出来ない。
これらの問題を、実例を交えて山田太郎氏が解説した記事がこちら(※2015年6月の記事)。
本来であれば、まずは衆議院の国会審議でこの問題が取り上げられ、それによって児ポ法を「真に子どもを守ることが出来る法律」に変化させていくことが行われるべきだった。
が、衆議院の議論は全力で明後日の方向に突き進んでしまう。
2014年6月4日①
児ポ法改正案(再提出案)が衆議院に提出される。
2014年6月4日②
再提出案、衆議院法務委員会で審議されたのち通過。
この委員会審議においては、【附則第二条】撤廃に反対する議員たちから
「マンガを規制しないのはおかしい!」
「気持ち悪い表現を守る必要はない!」
「児ポ法を『健全な社会を作る法律』として使えるようにすべき」
等の意見ばかりが噴出。
2014年6月5日
再提出案、衆議院本会議にて可決される。
「児ポ法を子どもを守るための法律にする」と言う論点は見事に無視され、「児ポ法を表現規制のための法律にするかどうか」だけが議論されて終わってしまったのだ。
また、この時点で「参議院でもこの法案が可決されること」が情勢的にほぼ確定する。
良くも悪くも、「法律の条文そのものの修正はもはや不可能(この条文のまま成立することが事実上確定)」と相成ったのだ。
児童ポルノ規制法改正案を審議した衆議院法務委員会の議事録を公開します。漫画・アニメについて規制すべきとの議員からの声が相次ぎました。次の青少年健全育成法等関連の法案も心配です。 6/5 衆議院法務委員会 議事録 taroyamada.jp/?p=5583
2014-06-06 18:22:53※2018年1月現在、未だ解消されていない表現の自由の大問題「青少年健全育成基本法案」についてはこちらを参照。
表現規制派の執念深さをも見せ付けられた山田太郎議員は、この時ある危惧を抱いていた。
【附帯決議】と言う裏技を参議院で使って、表現規制派が【附則第二条】を事実上復活させる可能性があったのだ。
【【附帯決議】とは何かの大雑把な解説】
国会が法案を通す際に付けられる、政府が法律を使う際に注意するべき事柄を示したもの。
国会が政府に渡す「法律の取扱い注意書」だと思っておけば大体合ってる。
参考:
参議院webサイト「参議院のあらまし 委員会の活動(1)法律案の審査」
万が一参議院で「児童性虐待を防ぐため、マンガ・ゲーム・アニメの規制準備を進めること」等の(【附則第二条】と同様の)内容を含む【附帯決議】を提案・通過させられてしまった場合、政府が表現規制をはじめることを防ぐ手立てはなくなってしまう。
2014年6月5日~6月17日
山田太郎議員、「【附帯決議】によるマンガ・ゲーム・アニメ規制」阻止のための作戦を立案・実行。
参議院で表現規制派が規制のための【附帯決議】を提案するよりも先に、全く別の内容の【附帯決議】案を自分で作って各会派の同意を取り付けてしまうことで、規制に繋がる【附帯決議】案が出る余地を封じてしまったのだ。
2014年6月17日
再提出案、参議院法務委員会で審議される。
この場で、事前に全会派の同意を事前に取り付けていた山田太郎議員の【附帯決議】が全会一致で採択された。
先ほどの児童ポルノ禁止法の改正案の参議院法務委員会で、私が原案を作成した附帯決議が全会一致で採択されましたのでその全文を掲載します。原案から多く削られてしまったとはいえ、衆議院ではなかった附帯がついたことは非常に大きいです taroyamada.jp/?p=5701
2014-06-17 16:26:27【山田太郎議員の【附帯決議】の意味】
最も重要だったのが、山田太郎議員の【附帯決議】の第一項である。
”一 児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと。”
この一文により、山田太郎議員は
①「児ポ法は『子どもを守るため』の法律だぞ分かったな」
②「つまりそれ以外の目的(ex.表現規制)に使っちゃだめだぞ分かったな」
と言う二つの“念押し“を政府に対して行うことに成功したのである。
山田太郎議員による、この【附帯決議】に関する非常に細かい解説を文字起こししたものがこちら。
2014年6月18日山田太郎議員ニコ生文字起こし詳細版(児童ポルノ法改正案国会審議の裏側とは) - 二次元規制問題の備忘録 nijigenkisei.ldblog.jp/archives/38760…
2014-06-21 22:10:482014年6月18日
児童ポルノ禁止法改正案(附帯決議付きの再提出案)、参議院本会議を通過。
この採決に際し、山田太郎議員は「賛成」でも「反対」でもなく「棄権」を選んだのだった。
声明を発表しました 「本日の児童ポルノ禁止法に対する参議院本会議での採決について」 taroyamada.jp/?p=5715 私にとっても苦渋の決断でした。
2014-06-18 19:36:29実は「附帯決議を作成した議員は事実上その法案に反対出来なくなる」という縛りがあり、山田太郎議員は「子どもと表現の自由を守るために、附帯決議を作成するか」「結果は変わらないことを承知で、あくまでも反対の主張を貫くべきか」と言う究極の選択を余儀なくされていたのだった。
苦渋の決断の末、山田太郎議員はこう宣言した。
『今回の私の戦略については、様々な評価があることはもちろん承知しています。しかしながら国会議員として、皆さんの代表として、附帯決議をつけるという選択は正しかったと信じています。』
「児ポ法は子どもを守るための法律だろう」
「『表現規制は是か非か』なんて、そんなくだらないことで盛り上がってることの方がおかしいだろう」
そのことを国会でしっかりと主張し、なおかつその内容を政治的効力のある約束事の形で残すために、山田太郎議員が全力を尽くして下さったことだけは紛れもない事実である。
⇒Part3:「成立前日の国会質疑編」に続く…