ラテン語たん による『カルミナ・ブラーナ』第12曲「炙られた白鳥の歌」の解説

黒焦げにした料理人は、料理の腕が悪かったのではあるまいか…
人文 ラテン語 カルミナ・ブラーナ ラテン語たん
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ラテン語たん @Latina_tan
#今夜のラテン語 は「炙られた白鳥の歌」とも呼ばれる歌、『かつて私は湖に住んでいた』です。「カルミナ・ブラーナ」の第12曲、カウンターテナーがコミカルに歌い上げる名曲ですよ
ラテン語たん @Latina_tan
Olim lacus colueram, olim pulcher exstiteram, dum cygnus ego fueram. かつては湖に住んでいた それはそれは美しかった 私が白鳥だったときには #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
olim は「かつて」という副詞です。変化しません。 lacus は「湖」の複数対格です。イタリア語の lago とか、語尾のついた lagoon などがありますね。「ラグナ・セカ」は「乾いたラグーン」です。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
colo 「住む、耕作する」という動詞があります。 完了形にするときは colu- に色々とつけます。「私は住んだ」なら colui です。 「私は過去に住んでいた」のなら colueram です。 was living というやつです #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
extiteram は「exsisto 存在する」の、同じく過去完了です。 ここまでの2行で Olim(かつて) lacus(湖に) colueram,(私は住んでいた) olim(かつて) pulcher(美しい) exstiteram,(私は在った) こうなりますね。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
cum によく似た dum は「~の頃に」。 cignusは cygnus とも綴り、ガソリンスタンドの名前にありますね。「白鳥」です。 fueram は -eram という語尾からもわかるようにここまでと同じく過去完了の一人称です。「私が白鳥であった頃には」。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
Olim lacus colueram, olim pulcher exstiteram, dum cygnus ego fueram. わたしは湖に住んでいた それはそれは美しかった わたしが白鳥だったときには #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
Miser, miser! modo niger et ustus fortiter! 今までの部分が白鳥の「独白」というテイでカウンターテナー独唱だったのに対し、こちらは男性コーラスでし miser は miserable とか misery と関係のある「哀れな」という形容詞です。詠嘆っぽく「哀れな!」とか「かわいそうに」。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
modo は、流行の mode とかと関係がありまして。「今は」とか「~だけ」です。 nigerは「黒い」という形容詞です。英語圏の文化ではこの綴りで示される語彙は差別と結びつきますが、ラテン語やその子孫の言語では生活に必須レベルの単語ですから無論そういうことにはなりません #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
ustus は uro 「焼く」から派生した「焼かれし」です。fortiter は フォルティテル と読みまして「強く」。副詞です。形容詞の「強い」なら fortis、「フォルテ」の語源でもあります。 比較級は fortior で、その中性形は fortius 。オリンピックの標語になってましたっけ。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
Miser, miser! modo niger et ustus fortiter! 哀れ、哀れ! いまや黒く、 こんがりと炙られて! #今夜のラテン語 (この部分は毎回繰り返す)
ラテン語たん @Latina_tan
Girat, regirat garcifer; me rogus urit fortiter; propinat me nunc dapifer. 料理人がぐるぐると回せば 薪がこの身をじっくりと焼き ああ、もう給仕がわたしを配りはじめる #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
girat は gyrat とも書きますが gyro 「回す」の三人称。「彼は回す」ですね。 re- がつくと反復です。「回し、また回す」。「ジャイロボール」なんかの「gyro」ですよ。 garcifer は「料理人」。ぐるぐる回しながら肉をまんべんなく焼くさまを思い浮かべましょう #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
me は「私を」。白鳥が歌ってる設定なので白鳥を、です。 rogus は「薪」を意味する名詞です。urit は「焼く」の三人称。もとの形は uro です。さっき出てきたの覚えてますか、ustus とは同じ単語の異なる変化形ですー。 さっきも出てきた fortiter と合わせて「薪が私を強く焼く」 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
nuncは「今」、meが「私(白鳥)を」。dapiferは「給仕係」です。 propinat は propino の三人称、「乾杯する」の意味もありますが、「(食物を)配る、給仕する」の意味もあるようです。文脈的に、給仕係が勝手にカンパーイ!とやるのも妙なので、「配る」「取り分ける」くらいですかね #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
「料理人がぐるぐると回し、私はこんがり焼かれていく。ああ、給仕が取り分けていく…」と臨場感たっぷりに調理されるサイドの情景描写です。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
もう一回「哀れ、哀れ…」を挟んで最終節。さあ、とうとう食べられてしまうのか。 Nunc in scutella iaceo, et volitare nequeo; dentes frendentes video. 小皿にわたしは横たわり もう飛ぶことも敵わない ぎしりと噛み合う歯が見える #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
nuncは「今」。scutella は scutra に指小辞がついたもので「小さな皿」「薄い皿」です。iaceo は「私は横たわる」。iacio「投げる」とはまた違いますよ。 volitare は「飛ぶ」。volare とかと関係してますよ。 nequeo は「私はできない」です。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
dentes は複数で「歯」です。単数は dens ですが、複数などで形が変わるときには本来の姿の dent- が出てきます。デンタルクリニックやデンタルフロスの dental とかですね。Dandelion「たんぽぽ」にも含まれます #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
frendentes は frendo 「歯ぎしりする、すり潰す」の変化形。dentes frendentes で「歯ぎしりをしている歯」です。何よりこの音の並び、爽快感がありませんか。デンテス・フレンデンテス。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
それを video 「私は見る」なのですから、今にも食べられそうなのですね。 この節はすべて -eo で押韻してあります #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
一般にもよく見かける video という単語ですが、ラテン語で「私は見る」という意味で、辞書で「見る」という動詞を引くと代表としてこの形で載っています。 映像技術を開発した人が、何らかの理由をもってラテン語で「私は見た」と名づけられたのであればまあ、よいんですが。 #今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
ひょっとして、ラテン語の素養がないのに無理してラテン語の辞書を持ってきて、出てきた「(私は)見る video」を商品名にしたのかも…?と考えると悲しいものがあります。 audio も然り。#今夜のラテン語
ラテン語たん @Latina_tan
というわけで #今夜のラテン語 は「カルミナ・ブラーナ」より「12番:かつては湖に住んでいた」でした。白鳥こんがりな歌でしたね!

コメント

こばやしゆたか @adelie 2018年2月9日
この歌は、「ボクさかな、きのう海、きょうはかまぼこ。」で好きです。//
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