【ある冒険者の日常】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の日常24】取り分によるもめ事を避けるため、手に入れた宝は換金してからの分配が好まれる。複数の宝剣を一人一本ずつ受け取って、ほとんどがレプリカだった事例は教訓として今も語り継がれている。その場で山分けしたい理由があるなら、最低限の鑑定技能は身につけておこう。

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【ある冒険者の日常25】「おいおい、そんな錆だらけの恰好で俺らとやりあおうってのかよ」「転けただけでぶっ壊れちまいそうだな、はっはっは！」「食うに困っての賊退治なんだろうが、相手が悪かったな」――「これ、剣も鎧も盾もぜーんぶ、ただの模様なんだよね」「い、インチキだ……」

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【ある冒険者の日常26】信仰の力を侮ってはならない。選択に悩んだ際にも、窮地に陥ったときも、命を賭して戦う際にも、信じるものが己の芯となり、確固たる信念になる。迷いなき行動は時として己の能力を高めるのだ。冒険者の間でも、神を信仰する者は多い。

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【ある冒険者の日常27】「見ろよこの立派な剣。こいつをちらつかせりゃ野盗共も逃げ出すってもんだ。銀貨20枚でどうだ？」「ふん、見てくれが立派だからってナマクラじゃあ意味がねえ。せいぜい10枚がいいとこだな」価格交渉は冒険者の基本。言い値で売買するのは金持ちか世間知らずぐらいだ。

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【ある冒険者の日常28】「困っている人を助けて『君の笑顔が報酬さ』とか言いたいじゃん？」「やっぱりこだわりとかプライドってもんがあるよね」「汚い仕事に手を出して噂とかされると恥ずかしいし……」「見栄！ 誇り！ 外聞！ 冒険者として恥ずかしくないのか！」

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【ある冒険者の日常29】「派手でもない、効果も分かりにくいせいか、周りはみんな敬遠していますが、幻術は適切に扱えば非常に強力なんですよ。一方的に相手を無力化できるどころか、何をされているかも分からないまま嬲り続けることもできて」「あんたがそんなんだから触れたくないんだろ……」

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【ある冒険者の日常30】才能のある者は魔物すら手懐けて、共に戦うこともできる。しかし冒険者全体から見て魔物使いの数が少ない要因は才能の有無に限ったことではない。「今じゃすっかり我が子同然ですよ」「戦わせる？ そんな危ない真似させられるか！」魔物に情が移ることも往々にしてある。

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【ある冒険者の日常31】「冒険者なんて、魔王の討伐に失敗して死ぬこともせず生き恥晒してる奴らじゃないか。何がかっこいいんだ」「違う！ あの人はそんなんじゃない！」「後ろめたいことがないなら、堂々と故郷に帰ればいいだろう。負け犬には逃げ回るだけの人生がお似合いだな」「違う、違う！」

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【ある冒険者の日常32】家族の仇を討つべく幼くして冒険者となり、長い歳月を経て復讐は果たされた。しかし人生を復讐に捧げ他の生き方を知らない彼はもはや平和な世界へ戻ることもできず、培われた経験を基に人々の無念を晴らす復讐代行者となった。

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【ある冒険者の日常33】「あなたは膨大な魔力を秘めている。この私の魔力感知ですら、その潜在能力は計り知れません。もし本気で魔法を使えば右に出るものはいないでしょうに、なぜどんな状況でも一切使おうとしないのですか？ 先ほどの巨人も一瞬で灰にできたでしょう」「呪文の暗記が苦手なんで」

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【ある冒険者の日常34】狼を相棒としてからというもの、魔物狩りの効率も上がり犯罪にも巻き込まれなくなった。その冒険者は狼の存在を誇りとして、自分よりも食料を優先し、大層丁寧に世話をした。ある時、同じく狼を連れた冒険者と出会う。（よお、そこの人間がお前の主人か）（いいや、召使いだ）

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【ある冒険者の日常35】冒険者の死体を見つけても金品を漁ろうとしてはいけない。もちろん人道的な問題ではなく、用心深い冒険者は持ち物に魔法印を仕込んでいることがあるからだ。最悪の場合、持ち主から離れた途端に罠が発動する可能性もあるだろう。まあ、解術に自信があるなら止めはしないがね。

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【ある冒険者の日常36】「これはどんな物もバラバラにする武器、これはどんな攻撃も跳ね返す盾です」「じゃあ、この武器でその盾を攻撃したらどうなるんだ？」「お兄さん、興味があるなら試してみますか？ 気に入ったら買ってくださいね」「いいだろう……いくぞ！」男と盾はバラバラになった。

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【ある冒険者の日常37】邪悪なる魔王を討ち果たし世界平和や英雄となることを夢見る者は少なからず存在する。しかし今や魔王を名乗る者が現れれば我先にと冒険者が殺到する始末。新たな魔王の捜索など可愛いもので、ある者は無実の一般人を魔王と決めつけ討伐する『魔王狩り』すら行っているという。

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【ある冒険者の日常38】あなたは狂喜した。長年の研究の果てに、ついに時間を自由に操作する術法を身に付けたのだ。真っ先に犯罪への利用が脳裏をよぎるも、あなたの良心が咎めたので思いとどまった。そして、それは正解だった。時間操作を可能とする術者は、あなた一人とは限らないのだから。

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【ある冒険者の日常39】死霊術師になりたい？ 変わってるね。術の扱いは難しい、活かすことができる機会も少ない、想像以上に険しい道だよ。さらには世間の目もあるからね。死者の冒涜だとか言われているうちは可愛いもんだけど、世の中には「死人に口なし」の前提が崩されると困る人もいるんだ。

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【ある冒険者の日常40】変身する魔法を悪用し、最後は元の姿に戻れなくなったという話を耳にしたことはないかね。そう、幼い頃に親から絵本を読み聞かされただろう。あれは作り話ではないのだよ。悪人というものは不思議な事に、変身を見破る魔法の存在に思い至らないらしい。君も心しておきたまえ。

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【ある冒険者の日常41】「ちょっとどころじゃなく暑いし、君の得意な氷魔法で冷やしてくれよ。あ、氷漬けは無しで」「ちっ」「何か言った？」「何も。魔法の制御は難しいんだ。特別に銀貨二枚でやってやろう」「そこは友達のよしみでタダじゃない？」「ちょっと頭を冷やしたほうが良さそうだな……」

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【ある冒険者の日常42】『冒険者たるもの備えを怠ってはならないが、荷物を無闇に増やすのは愚の骨頂である。ならば一つの道具を様々な目的に用いれば良い』「というわけだ」「だからって盾と剣で調理ってどうなの」「別に変な匂いはしないぞ？ ちゃんと洗ったし」「ゾンビ斬ったやつだよそれ……」

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【ある冒険者の日常43】冒険者の一人が何も言わずに他所の団へ移ったことについて、ある者は薄情だと嘆いて、ある者は優しさだと呟いた。君の考えは知らないが、広いようで狭いこの界隈、また顔を合わせた際に交わす言葉の一つでも考えておくことを勧めるよ。金でも情でも、どんな理由でも人は動く。

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【ある冒険者の日常44】『巷を騒がせた連続殺人鬼、遂に捕まる』老若男女問わず殺害を繰り返した男が衛兵に取り押さえられ、その場で死刑が執行された。男は「俺は英雄になるんだ。あと一人なんだ」と供述しており、精神錯乱の症状が見られた。被害者は99名にも上り、史上稀に見る惨事となった。

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【ある冒険者の日常45】「『私たちが作りました』ってあるじゃん」「ああ、さっき買ってきた野菜もそうだな」「……俺たちもやってみる？」「やめろ、食欲が失せる」「でも疑う奴もいるし」「客足が遠のくほうが深刻だ」「大丈夫だよ、絵なら石化もしないし」「やめろ！」魔物料理専門店での会話

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【ある冒険者の日常46】いがみ合う異教徒同士が祭りの間だけは手を取り合う。依代を得た神々の降臨も相まって辺りは異様な熱気に包まれる。「明日には殺し合うかもしれない人々が談笑するなんて、珍妙な光景だろう」「揉め事は起きないんですか？」「そういう輩は『居なかった』ことにされるのさ」