【ある冒険者の日常】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の日常47】「やあ旅人さんかい？ この村では、今日は故人の霊を迎える日なんだ」「よーし、じゃあ僕の出番ですね！」彼の死霊術によって呼び出された亡霊が蔓延り村は大混乱。村長たちに叱られはしたものの、亡くなった者たちと会話できた村人からは感謝もされたそうな。

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【ある冒険者の日常48】「手遅れだと気付けたなら大丈夫さ。気付くことができれば対処を考えることもできるからね。本当に手遅れなら、それと気付かずにすべてが終わってしまうのさ」「この誰も来ないような遺跡で水没する部屋に閉じ込められた俺達は手遅れだと気付いたのだが、どうすればいい？」

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【ある冒険者の日常49】日々恵まれない子に寄付を続ける高名な冒険者に興味を持ち、ある者が彼の素性を密かに調査したところ、寄付のたびに国から同額の報酬を受け取っていたことが判明した。彼は「施設の宣伝になっている」「俺も食っていかなければならない」などと叫ぶが、誰も耳は貸さない。

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【ある冒険者の日常50】異世界からの来訪者や転生者が激増する昨今、異文化交流の末に既存の文化の保持が困難となった国民は大慌て。事態を重く見た王は異世界出身者を一箇所に集め国を与えた。隔離同然の措置に非難も覚悟したが、彼らからは気兼ねなくかつての生活ができる、と概ね好評であった。

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【ある冒険者の日常51】「バアル王の即位10周年を祝して、乾杯！」「バアル王万歳！」「バアル王！ バアル王！ バアル王！」――「噂で聞いたんだけど、ある国では毎年決まった時期に王を罵倒する風習があるらしいよ。バーロー、バーローって……」「なにそれこわい」

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【ある冒険者の日常52】「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」「……てめぇ、それ本気で言ってるのか」「当然」「俺が甘いもの嫌いだと知っててか！」「死ぬよりいいでしょ。さっきから私のケーキ分けてあげるって言ってるのに」「俺はパンと干し肉しか食わん！」「偏食はダメ！」

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【ある冒険者の日常53】「冒険の前に泥水みてえなコーヒーを一杯。それが俺の流儀よ」「へー、なんかカッコいい！」「ま、ボウズにゃ早いかもな」少年は知らない。それがブラックを飲めない者による泥水のような色のミルクコーヒーの隠語であることを。それに気付いたとき、少年は一つ大人になる。

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【ある冒険者の日常54】もはや冒険は存在しない――世界中が探索し尽くされ、あらゆる土地が人類の支配下に置かれた。それでも少年は諦めなかった。夢物語だと人々に笑われるのも構わず、未知なる冒険を求めて彼は旅立つ。それこそが冒険の第一歩であると自覚することなく。

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【ある冒険者の日常55】「『もはや冒険は存在しない』かの名言も二万年前のものか」「さぞかし得意気な顔だったろうよ。銀河系どころか惑星すら脱出できない時代に」「今や人類があちこちに飛び出してるからな」「さ、休憩はこれくらいにして次の亜空間突入だ。ちょうど256箇所目だぞ」

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【ある冒険者の日常56】「毎日毎日培養肉に栄養カプセル。こりゃ食事じゃなくてエサだ」「データベースで見たんだが、大昔の人間は天然の肉を食っていたらしいな」「しかも生だろ？ 食中毒のリスクを冒してでも食いたがるなんて、絶品なんだろうなあ」「どうせ死ぬなら旨い肉食って死にたいもんだ」

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【ある冒険者の日常57】『山賊討伐隊壊滅』先日出立した冒険者による山賊討伐隊が返り討ちに遭ったとの報が入った。証言によると山賊達は非常に統率された動きを見せ、成す術もなかったという。噂では山賊の正体は亡国特殊部隊の残党とも言われ、第二次討伐隊には精鋭を投入する動きが見られている。

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【ある冒険者の日常58】呪術の依頼？ 人を呪いたいなら、自分自身もまた呪われる可能性を知っておくことだ。術が長く続けば痕跡を辿られ、身元が割れるどころか呪いを返されることもある。多くの場合は、術者よりも依頼人のほうに返ってくることも覚えておくといい。心中するなら話は別だがね。

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【ある冒険者の日常59】世襲制と古い伝統に縛られた故郷の王家を打倒すべく立ち上がった冒険者の一団。国に新たな風が吹くことを期待して多くの者が賛同し革命は成されたが、国は悪化の一途を辿る。人々が問い詰めるも「我々は約束通り王家を打倒した。お前たちもそれを望んだのだろう」の一点張り。

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【ある冒険者の日常60】「私たちの冒険に終わりはあるのかな」「やっぱり死んだとき？」「路銀が尽きたとき」「結婚したとき」「おなかがすいたとき！」「親父から家業を継がせられたとき」「飽きたとき」――「なるほど。『やめよう』と思ったそのときまで、私たちの冒険の旅は続くようだね」

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【ある冒険者の日常61】「あんたが暴風雨の中を出歩く物好きなら、幾つか依頼を紹介するけど？」「畜生、無駄足かよ」「ね、暇なら俺の暇潰しに付き合ってよ」「ガキのお守りが依頼？ 報酬は出るんだろうな」「燻製肉にパンと岩塩、乾燥野菜の新作携帯食料セットを三日分取り置きするよ」「乗った」

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【ある冒険者の日常62】「まさるちゃんご飯よ～」「もうすぐ行くから！ セーブしたら行くから！」

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【ある冒険者の日常63】「俺が前に訪れた国は、国民が王政を批判するわ情報屋がデマを流して人を煽るわ誰かが何かを成功させれば称賛より先に嫉妬が来るわ、ありゃ間違いなく今までで一番平和な国だな」「はあ？ どこがだよ」「内輪で揉め続けてるってことは、外敵の驚異がない証拠だよ」

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【ある冒険者の日常64】『自ら望んで冒険者となった者たちの、実に七割が「こんなはずではなかった」と回答している。決して安定しているとは言えない、冒険者の現実を教えることもまた我々の使命であり、そもそも冒険者の輝かしい活躍ばかりを語る吟遊詩人が――』～冒険者ギルドの掲示板より～

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【ある冒険者の日常65】危険な目に遭うことなく冒険ができるという話題が民衆の間に広まっている。他界した冒険者の記憶を一時的に移植して、過去の冒険を擬似的に追体験させるというものだ。臨場感溢れる冒険が味わえると好評な一方で、記憶を移植することに対する精神面への不安の声も少なくない。

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【ある冒険者の日常66】「冒険がしたい」「ふむ」「でも危ないのは嫌だ」「我儘だな」「そこで君の出番だ」「ほう」「君の魂と肉体を分離させて、魂の抜け殻を操る」「おい」「安全な場所から透視魔法で様子を眺めつつ、君を操って迷宮を攻略する」「先にお前の魂を剥ぎ取ってやろうか」

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【ある冒険者の日常67】「なぜ冒険者になろうとしたのですか？」「魔王を倒し世界を救うためです！」「それは冒険者でなくともできますよね」「え、えっと……」――「冒険者を勇者や英雄だと勘違いしている者が多いのは何故でしょうね……」「別にいいだろ。冒険者は何をしようと自由だ」

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【ある冒険者の引退68】あるゲームの新作が出るたびに友人のことを思い出す。あいつはシリーズの一作目を遊び続けているが、やってることは最初の町周辺でレベル上げ。理由はわからないが、今も続けているんだろうか。――「……『帰ってきたら一緒に進めよう』って約束したから」誰ともなく呟く。

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【ある冒険者の日常69】「僕が間違ったから、仲間が、みんなが死んだ。僕はこんな自分が許せないのに、誰も僕を責めないんだ。気にするなとか、お前は悪くないとか、叱りも、怒鳴りもしない、殴りもしなければ無視もしない。だったら、誰も責めないなら、自分が自分を責めるしかないだろう！？」