ディナーにて

竹村京 @kyou_takemura

基地の公用番号からの着信だったため、念には念を入れて店の端に身を寄せてから電話を取る。同じ海軍所属とはいえ、部隊が違えば当然秘密はある。まして兵頭と長瀬は指揮官、嵐は尉官待遇の艦娘である。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「浜風です。お時間よろしいでしょうか」 普段と違い、業務モードなので話し方が硬い。兵頭の許可を待ち、先を続ける。 「先ほど岡野という方から連絡がありました。至急の伝言だそうなのでお伝えします」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

岡野。そんな名前に心当たりはない。だが浜風に伝言を頼むのならば、おそらくは軍関係者だろう。 「長瀬大佐の帰還は来週、だそうです。では、失礼します」 「は？」 兵頭が聞き返す前に電話は切れていた。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

長瀬と一緒にいるのに、その長瀬の帰還が来週とは？ 岡野とは何者か？ そもそも長瀬が帰還する日程をなぜわざわざ伝言という形で自分に届けたのか？ 分からない事だらけだ。だが、当の長瀬がここにいるのだから直接聞いてみればいいと思い直し、振り返った。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

景色は一変していた。 客席は無人に。 薄暗いながらも高級感のあった店内はぼろぼろに荒れ果てた廃屋に。 照明は落ちて、光は割れた窓から差し込む月明かりしかない。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

事態が飲み込めず、先ほどまで自分が座っていた席に恐る恐る戻る。そこには先ほどまでと同じように、二つの人影があった。 「モグリ」 長瀬の影は身動き一つしない。 目が闇に慣れ、徐々に輪郭が鮮明になる。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「おい、モグリ……」 長瀬と見えた影は、長瀬ではなかった。 ボロ切れを丸めて人の形に仕立てたような、等身大の人形であった。 その隣の嵐と思っていた影は、顔が不気味に歪んだフランス人形である。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

そして、先ほど口に運ぼうとしていたステーキは。 蛆の湧いた猫の死骸であった。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

兵頭の耳もとを、生臭い風が通り抜ける。 「あとすこしだったのに…………」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

おしまい #落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

本編からして心霊体質の駄提督が酷い目に遭う、日常系ほのぼのでした。 モグリさんと嵐に化けてた人形は「ほんとにあった！呪いのビデオ」シリーズに登場したやべーやつがモチーフ。 彼等の目的はヨモツヘグイ的な…？ #落ちぬい

竹村京 @kyou_takemura

なお、唐突に名前が出てきた岡野ですが。 過去作に何度か登場させているキャラで、 岡野＝陸の 瑞穂＝「あきつ」洲と同義 というわけで、あいつの偽名という事で。 詳しくは「オカルト探偵あきつ丸」シリーズで。 #落ちぬい