漫画編集長による作家とマンガ誌の温度差と、SNSにおける宣伝のお話

SNSとどう向き合うか
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荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

作家とマンガ誌の間の温度差がちょっとまずい域に来てるぽいので、今から徒然に書きます。どうもマンガ誌が新連載をどういう風に回してきたかから書かないといけないぽい。

2018-03-18 22:36:07
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

マンガ誌から新人がデビューするには大きく分けて2つのルートがあります。1つ目はマンガ賞の投稿や持ち込み等の、作家側から働きかけるルート。大手誌はこちらが主流ですが、業界全体で見れば少数派だと思います。今回はこちらには触れません。

2018-03-18 22:42:47
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

マンガ家志望の子の気持ちになって考えればわかりますが、子供の頃からマンガを描いている、本気でマンガ家になりたい子は超有名誌、ようはジャンプ編集部とかに持ち込みに行くわけです。大多数のマンガ誌は志望者の量も質も足りないので、外から作家を連れてこないと回りません。

2018-03-18 22:49:38
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

2つ目は編集者が作家をスカウトしてデビューさせるルート。スカウトのための狩場は時代により流行り廃りがあります。リアルでは同人誌即売会とエロマンガ誌がある一方で、インターネット上ではpixiv→twitterの流れが強まりつつあります。ここまでが前置きです。長い。

2018-03-18 22:57:15
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

SNS普及以前と以降では、作家さんを取り巻く環境が大きく異なります。作品を大勢の人に読ませたり売ったりしたいと思った時、昔はほぼ出版社一択しか選択肢がありませんでした。ですが今はtwitterやpixivがあり、とらのあなやメロンブックスがあり、dmmやdlsiteがあり、entyやfantiaがあります。

2018-03-18 23:09:16
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

最近の編集者は作家のフォロワー数やバズったネタのRT数を重視するという話があります。実際そういう編集もかなりの数いると思うのですが、彼らが見落としていることがあります。彼らが好むタイプの作家は「出版社の力を借りるまでもなく、自力でファンとバズったネタを既に獲得している」のです。

2018-03-18 23:15:05
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

一方スカウトする側の出版社はどうでしょうか。マンガ誌は毎年10%に迫るペースで売上を落とし続けて底も見えません。雑誌の部数を背景にした宣伝力もいまやありません。よほど話題性があるタイトル以外はろくに宣伝予算もつかず、初週の売上で打ち切りが決められます。そこにダメ押しのマン◯村です。

2018-03-18 23:26:53
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

「単行本は売れないし、出版社で描いても宣伝にならない」「担当は宣伝ツイートしろとうるさく言ってくるのに、公式twitterは満足に宣伝もしてくれない」「なんとか作品を盛り上げようと自前で企画を考えても、出版社の営業部がダメだと言う」「印税が安すぎて、同人誌で出した方がよほど収入になる」

2018-03-18 23:38:59
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

私は先日「作家にとって編集者の存在は有益か有害か」を問うアンケートを実施しました。最終結果は、僅差とはいえ過半数が有害。過半数が「いないほうがマシ」と思っているということです。商業出版に携わる人間の一人として深刻に反省しなければいけない事態だと思っています twitter.com/gouranga_/stat…

2018-03-18 23:59:28
荻野謙太郎(フリーランス漫画編集者) @gouranga_

過去半年以内に商業原稿を描いているマンガ家さんに質問です。今まで付き合ってきた編集者、ざっくり分けると有益ですか? 有害ですか?

2018-03-02 01:35:19
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

作家の怨嗟の声を聞くと「商業ってなんだろう?」と思います。同人誌で出した方が収入がいいと言われ、作家自身のツイートが最大の宣伝という状況で「売れないのは実力不足。食えないのは自己責任」と言って誰が納得するでしょうか。商業出版を名乗るなら、その名に相応しい処遇があってしかるべきです

2018-03-19 00:15:47
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

いまtwitterで精力的に活動している作家さんは、商業に行く前にすでにtwitterに揉まれています。大勢の人に見てもらう方法を考えて、活発に発信をして、フィードバックを得てさらなるネタを開発していきます。日々の活動がセルフプロデュースに等しい彼らから見て、出版社はあまりにだらしなく映ります

2018-03-19 00:25:28
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

「載せてやる。売ってやる」的な態度が通用する時代はとうの昔に終わっています。出版社は「何もしてくれない」という作家の不満を解消するために、作家個人ではできない広告宣伝、売り方、利益の出し方を提示する必要があります。提示できないなら出版社はその歴史的役割を終えたということです。

2018-03-19 00:43:11
鈴木綾一@講談社クリエイターズラボ @ym_suzuki

主語も述語も大きいので反対でも賛成でもありませんが、たぶん問題意識の根っこには同意です。 講談社で働く30代の問題意識から生まれたのが「コミックDAYS」と「DAYSNEO」と、いま仕込んでるもろもろです。具体的な行動しないとね。 正解かどうかは将来わかるから知らない。 twitter.com/gouranga_/stat…

2018-03-19 02:52:59
鈴木綾一@講談社クリエイターズラボ @ym_suzuki

危機を煽るだけなのはオチのない話みたいでむずがゆい。 通販番組みたいに「そこでこれ!」って出されると気持ちいい。 それが万人にとって良い商品かはさておき、売り手に信念と自信があればいいと思います。

2018-03-19 03:07:16
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

重暗い話だけして終わるのもあれなので、ちょっと違う話もしてみましょうか。これとか。 twitter.com/gouranga_/stat…

2018-03-19 03:23:07
荻野謙太郎(フリーランス漫画編集者) @gouranga_

【メモ】 「ウケるツイートはできても宣伝や売上に繋がらねえんだYO!」という諸兄のための補足説明。「客を温める」の詳細。スキルは身につけるよりも換金することのほうが難しいというお話。

2018-03-14 07:09:01
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

前に自分というおもしろい人間がいることを知ってもらって、応援してもらえるようになろうぜという話をした時にですね「フォロワーがいっぱいいたり、ツイートがバズったりするけど、肝心の本業の宣伝のRT数は全然だYO!」という嘆き節のリプライを結構いただいたんですね。これについて。

2018-03-19 03:29:55
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

まず最初に。フォロワー数やバズったツイートのRT数というのは、人気やおもしろさを示す数字じゃありません。あれは単なる「野次馬の数」です。「珍獣がいるからちょっと見たろか」程度のものだと思ってください。応援とかしてくれないし、お金もくれません。

2018-03-19 03:37:09
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

人が集まる、集められるというのは貴重な才能ですが、それだけでは応援してもらえません。「集まった野次馬をファンに変える」という工程を経る必要があります。

2018-03-19 03:46:06
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

なんとなく珍獣という言葉を使いましたが、折角なので動物を例にとりましょう。東武動物公園にグレープくんというペンギンがいました。けものフレンズのフルルのパネルに寄り添ったことで有名になったフンボルトペンギンです。

2018-03-19 03:55:32
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

グレープくんがしたのは「フルルのパネルを見つめる」「パネルの前から動かない」これだけです。ただこれだけのことがファンの心を打ち、ペンギン舎の来場者は約20倍に増え、死を惜しむ大勢のファンから献花を受けました。

2018-03-19 04:02:58
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

一体何が起きたのでしょうか。グレープくんはフルルの傍らにいただけです。変化したのはそれを見た我々人間の心です。

2018-03-19 04:08:09
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

我々は最初「アニメキャラに恋したペンギン」を面白ネタとして見ました。彼が同じことを繰り返すのを見て「あれは本気なのではないか、俺らと同じじゃないか」と感じました。話題になったことで個体名が判明し、老齢であることもわかり、ますます気になる存在になり、そしてお別れの日が突然訪れました

2018-03-19 04:18:57
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

東武動物公園の飼育員さんはニコニコ生放送で「これまで『東武のペンギン』として一纏めに扱われていたものを、それぞれ名前を持った『個』として見てもらえるようにしたグレープの功績は大きい」と語りました。

2018-03-19 04:22:03
荻野謙太郎(マンガ編集者) @gouranga_

応援されるにはただおもしろいだけではだめで、『個』として見てもらえるようにならなければなりません。あなたがやるからいい。あなたのやることをもっと見たい。あなたに幸せになってほしいと思った人だけが、あなたに力を貸してくれるのです。

2018-03-19 04:32:28
小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

「出版社」というものが持っている機能は単に原稿取り立てるだけではなく、企画印刷流通営業とにかく多岐にわたるので、「自分で全部やって電子や同人でやったほうが儲かりますよ小太刀さん」と言われると、「原稿に集中したいんで出版社と組む方がゼニになります」と答えることにしてます

2018-03-19 14:03:49