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「はい……でも……!俺は、じゃあ、どうしたら!」 「私たちからお願いしたいことは……一つだ」 片桐は顔を上げた。 「どうか今までと同じように、あの子の……友達でいてやってくれ」 「それは……!」 「難しいかも知れないが、特別扱いではなく、あくまで普通に接してやって欲しい」 20
2018-04-09 01:06:08「はい……」 『守ってやってくれ』そう言って欲しかった。だが、それは頼まれたところでとても無理だろう。鳥姫の巫女の力は、一端を見ただけだが、あれは人が一生涯を捧げて努力しても届く領域ではない。守るなど考えるだけで烏滸がましいのは子供の頭でもよく分かった。 21
2018-04-09 01:09:51「瑠梨を、守りたい……そう思ってくれているのかい?」 「!?……はい!」 意外な言葉に片桐は姿勢を正した。勇隆が告げたのは二つ。僚勇会の隊員として戦い、巫女の戦闘機会を減らせば間接的に巫女を守れること、だが今の片桐ではまだ隊員になれないことだった。 22
2018-04-09 01:15:37魔術の能力検査が水準に満たない場合、十八歳未満は隊員になれない。落胆する片切を勇隆は励ました。 「風科では一般人の家から魔術適性を持った者……覚醒者と言うんだが、そういった人が目覚めることが多いんだ。体を鍛えていれば、若干だが目覚めやすくなると言われている」 23
2018-04-09 01:18:21「本当、なんすか?」 「ああ。それに力が目覚めなくても、鍛えた体は無駄にはならないさ。瑠梨は定年の三十歳まで巫女をしたいと言っている。入隊が十八になっても遅くはないさ」 「……はい!俺……やります!」 少年は力強く返事をした。 24
2018-04-09 01:22:53子供を誤魔化そうと適当を言っている訳ではないように見えたし、後にそれは本当だと知ることになる。ただし鍛えて上がる覚醒の確率は微々たるもので、実際は後者が本命だったのだが、結果的に片桐は中学の頃に魔術適正が入隊水準に上がった。
日々体を鍛え、桐葉やその兄などの隊員に稽古を受けて技を磨き、密かに魔術知識を習うなどした成果だった。入隊後は、虫との会話能力の応用で妖怪図鑑の整理を行ったり、戦闘でも並列思考を活かしたサポートで成果を上げたのだが……結局は、瑠梨を守れてはいない。片桐はそう感じていた。 25
2018-04-09 01:30:37フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」 #8 「焦熱する痛み④」 終わり #9 「焦熱する痛み⑤」 に続く
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