フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」#9 「焦熱する痛み④」

24・25の間に抜けがあったので補足しました。 カクヨム版:https://kakuyomu.jp/works/1177354054884869599 実況・感想タグ: #禁森感想 続きを読む
0
まとめ フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」#8 「焦熱する痛み③」 カクヨム版:https://kakuyomu.jp/works/1177354054884869599 実況・感想タグ: #禁森感想 全話+まとめのまとめ http://togetter.com/li/1059871 1話「英雄たちの遺産」まとめ http://togetter.com/li/1020459 2話「バケグモ大進撃」まとめ http://togetter.com/li/1024051 3話「蝶舞の町内」 まとめ http://togetter.com/li/1059870 4話「大規模作戦・発動!」 まとめ https://togetter.com/li/1090962 5話「選ばれし者、選ぶべき者」 まとめ https://togetter.com/li/1108885 6話「フォビドゥ.. 1009 pv 3
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

2-8:「混乱」 フォビドゥンフォレスト/ヴォイド - カクヨム kakuyomu.jp/works/11773540…

2018-04-07 02:13:46
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」#8 「焦熱する痛み③」 - Togetter togetter.com/li/1209958 @togetter_jpさんから

2018-04-08 23:06:02
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

(前回のあらすじ:幼い片桐は、瑠梨が巫女の力を維持するために激痛を伴う儀式を行っているのを目撃し、ショックを受ける。彼女を傷付けてしまったと感じていた少年はせめて同じ痛みを背負おうと自分の身体で儀式を再現しようとするが、激痛と恐怖でその手は震えるばかりだった……)

2018-04-08 23:15:19
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」 #8 「焦熱する痛み④」 実況・感想タグ: #禁森感想

2018-04-08 23:15:53
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

―鳥姫神社の娘は七歳で巫女の資格を得る。制度上の話ではなく、本人がある日、唐突に自覚を持つのだ。神が夢に現れて資格を得たことを告げる、ともされる。加えて、身体にも鳥を模した文様のような痣が浮かび上がる。 1

2018-04-08 23:19:11
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

だが本来なら継承を行うのは十代半ば、近世以前で言う成人の頃になる。巫女の負荷は儀式の痛み一つとっても、大の男ですら気絶するであろう代物である。血の宿命とはいえ年端もいかない子供に負わせるべきではない、と昔の人々も考えていたようだ。 しかし瑠梨は六歳で資格を得てしまった。 2

2018-04-08 23:24:43
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

その上、継承もすぐに行わねばならなかった。巫女の力が欠かせない事態が間近に迫っていたからだ。本来なら、子を成した後も先代の巫女が一度だけ神降ろしを行うことができるのだが、瑠梨が資格を得たことで母、杏子の権能は失われてしまった。 3

2018-04-08 23:27:36
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

この時、起きようとしていた事態に関してはここでの言及を避けるが、巫女の力抜きでは風科の外の人間を含めた多くの死傷者が出る事態とだけ述べておこう。発生時期の予見はかなり正確に出来るが、対処には多くの強力な人員を要し、その確保は容易ではない。どうしても鳥姫の巫女が必要だった。 4

2018-04-08 23:32:31
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

杏子はあまり体が強くなく、再度の神降ろしを行えば命に関わる可能性もあった。幼いながらにそれを察していた瑠梨は、一日も早く巫女になることを望んでいた。早くに資格を得たのは神がその意を汲んだからかも知れない、幸い、瑠梨は健康体で幼い体での神降ろしにも十全に耐えた。少なくとも体は。 5

2018-04-08 23:36:12
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

瑠梨が幼くして巫女にならねばならなかった理由は、これだけではない。杏子が巫女の資格を捨て瑠梨を授かってから、風科は七年近く巫女が不在の状態だった。千年の歴史の中でもほんの数度しかない事態である。鳥姫の巫女が不在の間は、結界の力が弱まり妖怪の出現数が大幅に増える。 6

2018-04-08 23:43:38
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

一・二日なら良いが、一週間も風科を離れると妖怪が目に見えて活発化するたね、巫女の良好や外出には大きな制限がある。不在に備え、結界を数年間強化する儀式もあるが、それを行ってなお通常の数倍の妖怪が出現する。僚勇会も全力で対応していたが、瑠梨が資格を得た頃にはシフトに無理が出ていた。7

2018-04-08 23:54:29
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

鳥姫の巫女は常に一人しかいないが、一子相伝という訳ではない。姉妹や従姉妹、時には再従姉妹などの血族の女性にも伝承される。処女でなければ巫女ではいられないが、それでもなお資格者が一人になることはそうはなかった。 それが一人だけになった原因は、瑠梨の祖母の代にまで遡る。 8

2018-04-08 23:58:31
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

祖母・佐緒梨の代には、彼女の姉が巫女をしており、佐緒梨は十六で巫女を引き継ぐ予定だったのだが、その前に姉が戦死してしまった。これも千年間で僅か数度の事件である。備えの充分でないまま巫女を継ぐことになった佐緒梨だが、更に事態が悪化した。分家の若夫婦が失踪を遂げたのだ。 9

2018-04-09 00:11:58
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

状況から夜逃げだと思われた。生まれたばかりの自分たちの娘に巫女の宿命が降りかかることを嫌ったのだと周囲は判断した。真偽は定かではないが、ともかくこれで完全に巫女の資格者が一人になってしまった。佐緒梨が娘を産む前に僚勇会の戦力を揃える必要があった。 10

2018-04-09 00:20:19
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

しかし、戦力確保が別の事情により上手くいかず、佐緒梨が杏子を産めたのは巫女の定年を五年以上過ぎた三十歳代後半になってからだった。これは現代の基準でさえ高齢出産に入る。そうして産まれた杏子はやや早産で、また体も平均よりは、であるが弱い方だった。 11

2018-04-09 00:28:00
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

これが高齢出産のせいかは分からないが、少なくとも佐緒梨や周囲はそう信じていた。少なくとも事情を知る者は佐緒梨を責めず、むしろ同情した。特に僚勇会関係者は、自分たちのせいで無理をさせたと謝罪すらした。それでも佐緒梨は自分を責め続けたのだという。 12

2018-04-09 00:31:57
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

―そう言った顛末を、瑠梨の父・勇隆(いさたか)は幼い片桐少年に語って聞かせていた。今は神社の一室の畳の部屋だ。 「……だから瑠梨が今の年で、巫女をしているのは誰のせいでもないのだよ」 「誰のせいでもって……逃げた家の……」 片桐は途中で言葉を止めた。 13

2018-04-09 00:38:37
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

―儀式の痛み、戦いで体を焼かれる痛み……本来なら十代になってから負う筈のものだとはいえ、自分の子供に負わせたくはないだろう。一端を目撃した今、片桐には逃げた分家のことを責めることは出来なくなっていた。いやむしろ……。 「私たちこそ逃げるべきだった、かね?」 「……!」 14

2018-04-09 00:42:22
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

苦笑と悲嘆の中間のような勇隆の表情。片桐には『はい』とは言えなかった。勇隆と杏子も逃げてくれれば、瑠梨は辛い宿命は負わなかったかも知れない。だがそれが何を意味するのか?こちらはまだ実感が湧かないながらも、理屈としては分かっていた。 15

2018-04-09 00:45:44
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

片桐は勇隆の顔から半ば逃げるように俯き、そのまま崩れ落ちそうに重い顔の側面を両手で支えた。 「俺は……どうしたら良いんですか……っ!」 全身を震わせ、目を熱くするものが流れ出ないように堪える。それを抑えきった、と判断してから顔を上げた。勇隆が片手を少年の肩に置く。 16

2018-04-09 00:49:17
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「瑠梨を案じてくれるのは嬉しい。だが、同じ痛みを背負おうとはしないで欲しい」 「でも!」 「私たちが瑠梨を思うように、君のご両親も君を心配しているんだ」 「うっ……」 片桐は顔を反らした。 「それに君が痛みを負ったところで、瑠梨が楽になるわけではないだろう」 17

2018-04-09 00:56:45
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

……心臓に痛みを覚えた。比喩でなく息が苦しくなる。火傷の痛みなど忘れてしまうほどに全身が痛みを訴えた。 「君が傷ついた分、瑠梨が楽になるのなら、私は止めないかも知れない。君のご両親には申し訳ないが。だが君が今日していたのは、ただの……自己満足だ」 18

2018-04-09 01:00:23
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

小学生の子供に投げかけるには酷で、些か難しくもある言葉を瑠梨の父は容赦なく投げかけ、片桐はそれをそのまま受け止めた。心の痛みがそのまま体の痛みとなって全身を蝕む。 「すまない。昔の私を見ているようでね……正直、かなり言い過ぎたと思う。大丈夫かい?」 19

2018-04-09 01:03:51