柏vs広島。前後半で流れの対照的な試合となったが、その中でも完璧な柏対策を施して前半の45分間を過ごす事に成功した広島。その理由とロジックを以下で解説
2018-04-09 21:02:31広島の柏対策を端的に言うと、『人数を集めて柏の左サイドから攻撃を仕掛け、絶対に柏の右サイドを攻めない事』である。これには幾つかの明確な理由がある。それを順を追って紐解いて行きたい
2018-04-09 21:02:42まず最初に「プレス回避のため」。柏はボールを保持して攻撃をしたいチーム。ボールを保持する事がクラブのアイデンティティになっている。よって、その柏に対して広島はセオリー通りに前線から連動したプレスを敢行する事で柏のボール保持の時間を削ろうと画策した
2018-04-09 21:02:54そうしてボールを失う機会が増えた柏だが、それでもボールを保持したい。保持したいなら奪わなければならない。つまり柏も同じ様に前線からの連動したプレスを敢行。広島からボールを取り上げようとしたのである。ここからが問題。「ではプレスを回避するためにどのように振る舞うか?」
2018-04-09 21:03:08柏は蹴っ飛ばした。広島が連動したプレスを敢行した事で、背後にはスペースがある。前線には足の速い選手が居る。CBが相手FWに引っ掛けられてショートカウンターを喰らいたくない。それらの理由で「前線目掛けて蹴っ飛ばす事でプレス回避を図った」
2018-04-09 21:03:20しかし、前線でハイボールを競る事ができるのはクリスだけである。クリスは頑張って競ってはいるが、屈強なCB相手に五分以上に競り勝てる能力は無い。ならばCBよりサイズ・フィジカルで劣るSBの所で競ろう!となるが、この日はハモンが不在。ターゲットの居ない柏は蹴ってはボールを失う展開
2018-04-09 21:03:34翻って広島。広島は『人数を集めて柏の左サイドから攻撃を仕掛ける』事によって、相手のプレッシング部隊より多い人数を確保してボールを繋ぐ事に成功した。具体的には「攻撃時にDHが2人共に柏の左サイドに極端に寄る」「逆サイドのSHすら柏の左サイドに寄る」
2018-04-09 21:03:45『人数を集めて柏の左サイドから攻撃を仕掛けた』広島は、仮にそこでボールを失ったとしても、即時奪回を狙うだけの人数が必然的に居る事になる。当然、柏は上手くカウンターを発動できない。密度の高い中で大きい展開を使うことができず、スペースのある逆サイドへボールを運べない
2018-04-09 21:03:58「逆サイドへ運べない」。ここが肝である。逆サイドには誰が居るか。伊東純也だ。カウンター時に伊東純也にボールが渡れば、長距離のヤードゲインを許して陣地回復されてしまうし、失点のリスクも高まる。広島はそれを嫌ったのだ。だからこそ『人数を集めて柏の左サイドから攻撃を仕掛けた』のである
2018-04-09 21:04:08攻撃をデザインする際には「どのルートで攻めるか」を綿密に練っておく必要がある。何故なら「ボールを失う場所を規定する」事に繋がるからだ。サッカーは足を使わなければならないスポーツである以上、ミスが多発する。必然、ボールを失う回数が多い。だからそのミスをカバーする約束事が必要になる
2018-04-09 21:04:18予め攻撃の際のルートを決めておけば、ボールを失う可能性の高い場所が解る。サイドを攻めればサイドで失うし、中央を攻めれば中央で失うだろう。であれば、事前にその場所へDHやCBを配しておく事で相手のカウンターの芽を摘める。つまりネガティブトランジションの準備という事
2018-04-09 21:04:27広島が『絶対に柏の右サイドを攻めなかった』のはコレである。柏の右サイドを攻め、ボールを失った場合には伊東純也がボールを持つ事になり、彼の前方にはスペースがある。CBやDHを配していても、彼なら抜き去る可能性が高い。だから広島はそのサイドを捨てた
2018-04-09 21:04:38しかも、伊東純也の居ない柏の左サイドを攻めている時でさえ、ネガティブトランジションの準備として佐々木翔を伊東純也に貼り付けた。セオリー通りなら中央に絞るべき場面でも。こうした周到な準備によって、広島は伊東純也を試合から消す事に成功。柏の片翼をもぎ取ったのだった
2018-04-09 21:04:48これらの理由をスタッツが裏付けている。伊東純也がボールを持つ事を許されなかった柏は攻撃が左サイドに偏り(DHの攻撃参加等、中央からは攻めない約束事が元々ある)、伊東純也の居るサイドを捨てた広島は右サイド、柏の左サイドに攻撃が極端に偏っている事が解る pic.twitter.com/JhjdDN787l
2018-04-09 21:05:261分。サイド奥に流れたパトリックのキープから。和田、柴崎とボールを繋ぎ、青山が様子を伺う。その先に居たのは稲垣。両DHがここまで寄っている。サイドでキープ後、柴崎がPA角からの大外への逆足クロスという黄金パターンでパトリックが決定機 pic.twitter.com/BANQ63YFaL
2018-04-09 21:07:06中盤でのセカンドボール争い。どうにか拾った柏だが、広島のFWはGKまで襲いかかる。蹴らざるを得ない桐畑。蹴った先には伊東が居たが、マークに付いていたのはCBもこなす対人能力オバケの佐々木翔。跳ね返され、更に3人に囲まれてボールを失い、ピンチを招く pic.twitter.com/o2ZvhWFF1j
2018-04-09 21:08:26ボールサイドにスライドして442で守る広島。柏はどうにか左サイドにボールを運ぶが、広島も人数を集めて抵抗。更に「柏がアタッキングサードに侵入してきた際はFWが中盤のラインまで戻って埋めろ」とタスクを与えられていたと思われる工藤がここまで戻っている pic.twitter.com/1pOYqi6aV1
2018-04-09 21:09:33キム・ボギョンに対する2度のタックルでボール奪取に成功した稲垣。なお広島のカウンターは「柏のSBが上がったサイドのスペースを狙う」事になっており、FWが流れる約束になっている。CBを引っ張り出して中央を薄くし、あわよくば警告等による退場すら狙える pic.twitter.com/jbiOklzcoB
2018-04-09 21:10:19広島の得点シーン。柏のスローインからの展開とはいえ、広島は9人が片方のサイドに集まっている。こうして人数を集める事で広島は柏のプレスを無効化し、空いたスペースを突いて攻撃。和田のクロスをファーでフリーになっていた佐々木翔が叩き込んで先制に成功 pic.twitter.com/dXvkDZBwzV
2018-04-09 21:11:50このシーンを詳しく見ていくと、パトリックに縦パスが入ったシーンと、工藤に縦パスが入る1つ前のシーンで裏抜けをしているのは本来逆サイドに居るはずのSH柏好文である。パトリックから青山にパスが渡ったシーンを見ると解るが、逆サイドには伊東純也を見ている佐々木翔しか居ない
2018-04-09 21:12:05そして何故得点シーンでPA内に佐々木翔が居たか。前述の通り、ネガティブトランジションの準備で伊東純也に付くために高い位置を取っていたから。通常、クロスは相手選手の少ない逆サイドに跳ね返すのがセオリー。この場合だと伊東純也が拾うことになる。そこをケアするための佐々木翔だったのだ
2018-04-09 21:12:10ネガティブトランジションの準備のために高い位置へと配された佐々木翔がある意味“伊東純也を捨てて”PA内に入ってきたのは彼自身の判断、嗅覚によるところだろう。前半はタスクを完遂しながらも、要所ではピッチ内の判断で得点を奪った佐々木翔の事は称賛されるべきだ
2018-04-09 21:12:22失点してしまった柏は得点するためにもボールを保持したい。しかしそれを許さない広島のプレス。GKに戻して蹴り飛ばすしかない柏だが、クリスは競り勝てず。失うと同時に猛然と襲いかかる柏のプレッシング部隊だが、奪えずにプレス回避されかけた所でファウル pic.twitter.com/cpyvyaiT1N
2018-04-09 21:14:33ワンサイドカットしながら、柏が左サイドにボールを逃がせないようにプレスを試みる広島。柏はどうにか左サイドへボールを逃がす事に成功したが、ロングボールはオフサイド。その後の広島の攻撃で柴崎からパスを受け、大外を駆け上がる和田へパスを出したのはまたも逆サイドの柏好文 pic.twitter.com/N8ZbVigHkT
2018-04-09 21:15:41