Affair Story -wct- 序章

とりあえず序章として区切りのいい所に来たと思うので個別に一つ。これから、色々とやらかしていくつもりです。
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風が一気に駆け抜け、肩に居た『風』が両手を広げて歓声を上げた。「あ、こら、お前、あんま暴れるな危ないだろ」「気持ちいいですよ!?」知らんがな。落とさないように両手で補助をしながら歩く。顔をぺちぺちと叩く『風』をそのままに土手を見回せば、「お――?」 #as_wct

2011-04-07 20:41:55
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視線の先、栗色の長い髪がすらりと落ち、細い肩と、手を後ろで組んでゆっくり歩くその後ろ姿は見覚えがある。見覚えどころではない。見つけるたびに、胸が高鳴るほど、目に、脳裏に焼き付けている後ろ姿。今日会いたいと願い、そして、見つけられた後ろ姿だ。 #as_wct

2011-04-08 17:48:35
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俺は『風』から手を離し、落とさないように気をつけつつも手を振り上げ、「おーい!」声をかける。「ん? どうしたんです?」『風』が不思議そうに上から覗きこんでくるのに対し、俺は顎で前を示し、「どうしたって、ほら。お前も好きだろ?」『風』が前を見て、それでも首を傾げる。 #as_wct

2011-04-08 17:51:13
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珍しいな、と思うがまあいい。俺は前を歩く彼女に、気付いてもらえるようもう少し声を大きくして、「おーい!」景色を眺めていた頭が、俺の声に反応して少し動いた。足が歩調を緩め、肩が動き、そして顔がこちらに向いてくる。俺は笑顔を深め、「よ――え?」 #as_wct

2011-04-08 17:53:39
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後ろ姿は彼女だった。しかし、振り向かれた顔を見て、俺の笑みは固まる。思い描いていたものとはちがう、元気そうな顔を持つその少女は、固まっている俺に対し、疑問を混ぜた笑みを向けている。振っていた手が少しずつ力を無くし、俺は、自分の中の疑問をそのまま口走る。 #as_wct

2011-04-08 17:57:49
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「誰……って、声かけたの貴方じゃないですか!」『風』が責めるように髪を引っ張ってくる。「い、いて、いやだって、俺はてっきり――」『君』だと思って。しかし、違った。俺は『風』から目を離し、その少女にもう一度目を向ける。――あ、まずい。 #as_wct

2011-04-09 21:03:14
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少女が驚いた顔をしている。それは、見知らぬ男から声をかけられたからではない。先程までは疑問はあるが、それでも笑顔だった。それが、驚いた顔になっている。理由は一つだろう。俺が――声をかけてきた見知らぬ怪しい男が、急に頭の上に独り言を発したからだ。 #as_wct

2011-04-09 21:23:46
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怪しさ満点だ。人前では事象達と不自然に喋らないように心掛けていたのだが、最近はこいつらとの付き合いも自然になっていて、そして今回突然の動揺でついやってしまった。うわぁ人違いの謝罪もしないといけないのにさらに面倒な事に……。「あー……」とりあえず謝ろうとして、しかし #as_wct

2011-04-09 21:28:27
Affair Story @affair_story_s

少女が駆ける。後ろではなく、前に。逃げるのではなく、俺に向かって。え、と思ったときには少女は俺の目の前にいて、その目が俺を見つめてくる。じっと。そして、ずれる。上に。上にずれた視線は再び俺に向き、また上に。交互に俺とその頭上を見て、少女は感嘆の息と共に口を開き、 #as_wct

2011-04-09 21:31:25
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「もしかして、貴方も――!?」 #as_wct

2011-04-09 21:34:06
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春、こうして俺は、後輩となる少女に出会った。そして、逸らしていた目は、止めていた物語が、前を向く。 #as_wct

2011-04-09 21:39:30