Affair Story -wct- 三章

まあ三章。相変わらず考えてるようで考えてなくてちょっとなー。まあ色々と含みある感じで。
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窓の外を見れば、宣言通り雨だった。しかしそれほど激しくはなく、ともすれば傘をささずに歩いてもいいような気もする。だがまあ今日は長く歩くだろうわけで、また、雨の調子が変わるのが目に見えて思い浮かぶので、「傘は必須だな、うん」持ってなかったら怒られる場合もあるし。 #as_wct

2011-04-28 22:56:03
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そんな訳で傘を手に外に出てみれば、「遅い!」結局怒られたよ。俺は傘を開いて肩にかけ、眉を立てる『雨』の前まで歩く。「時間指定はされてない気がするんだけど」「私がいつからここに居ると思ってるのよ」知らんがな。予報では朝早くから降るとか言っていたか? 今は昼前だけど。 #as_wct

2011-04-28 22:59:35
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「ってかいつものお前なら待ったりせずに窓叩いて起こすだろ」「ふ、ふん、そんなに心狭くないわよ!」今怒ってるじゃん。思ったが、口には出さない。苦笑しながら『雨』を見ていると、立てられた眉が少し下がり、「そ、それに……」「ん?」 #as_wct

2011-04-28 23:02:35
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俯いた『雨』は俺からわずかに顔を逸らし、「窓叩いたら、あんた『音』に起こされるじゃない……」「ん? 何か言ったか?」「な、なんでもない!」『雨』が叫び、俺はその音量に驚く。そして、横に現れ同じように肩をすくめた『音』に、「……あいつ、何て言ったんだ?」「わー!」 #as_wct

2011-04-29 23:24:24
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俺の横から『音』を引っ張り『雨』がこちらを睨んでくる。「なんでもないってば! ね!?」「あはは、なんでもないぞ、うん」首を傾げる俺をおいて、『雨』は『音』と一緒に俺に背を向け、「……何よ、結局『音』呼んで……」「あはは、ゴメンな」「別に『音』は悪くないわよ……」 #as_wct

2011-04-29 23:30:39
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睨まれて眉をひそめると、『雨』はため息を一つ。何だ、悪いの俺か? え、何した、俺? 訳が分からない。そんな中、まぁまぁ、と「なあ」「何よ」「『雨』が思っているほど、彼はそんなに悪くはないぞ」「……何よ、それ」『音』は『雨』に笑顔を見せ、そのままこちらに顔を向ける。 #as_wct

2011-04-29 23:36:45
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「どこか出掛けるのか?」「ん、ああ、ちょっと散歩にな」「おお、雨の中散歩っていうのも風情だな!」「あー、『音』、悪いけど」「ん?」首を傾げる『音』に、俺は頭を掻く。ちらりと窺い見た『雨』の不機嫌だ。それに苦笑しながら、親指で『雨』を示し、 #as_wct

2011-04-30 21:18:37
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「今日は『雨』と散歩って約束なんだ」 #as_wct

2011-04-30 21:19:43
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告げると、『音』は分かっていたという感じで頷き、「それは残念だ。でも、今度は私と散歩してくれると嬉しいぞ?」「ああ、今度な」ニカッと笑った『音』は踵を返すと『雨』に顔を近づけ、「な? 悪くないだろ?」『雨』の顔が一気に赤面する。 #as_wct

2011-04-30 21:23:21
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「……悪くないから、悪いのよ」「あはは、そうともとれるか」うなだれる『雨』の肩を叩いて、『音』はこちらに半身で振り向いて手をあげる。「じゃあ、私はこれで。楽しんでくれ」「ああ、ありがとう」ぽん、と一際強く傘を雨が叩き、『音』はどこかに行ってしまった。 #as_wct

2011-04-30 21:25:32
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さて、と。『音』の消えた空間から『雨』に目を向けると、『雨』がびくっと肩を跳ねさせる。「え、なに、その反応……」「え、い、いいえ、別にっ」若干身構えるように傘の柄を強く握っている。「何だ? 体調悪いのか? そういや雨弱いし、何かお前顔赤いし」「ち、違うわよ!」 #as_wct

2011-05-01 23:06:50
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うーん、でも顔は赤いしなぁ。来ると宣言しておいて雨も弱いし。溜息をつきながら『雨』に近付き『雨』の額に手を伸ばし、「……本当か?」「――!?」額は熱くなかったが、『雨』の表情は一気に赤くなる。「な、ななな――」「ん?」「何でもないわよ――!!」ざ、っと雨が降った。 #as_wct

2011-05-01 23:11:57
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雨の勢いは一瞬だったが、一気に足元と伸ばした手がびしょびしょになり俺は無言で目を薄くする。「てめぇ……」「な、何よ!?」傘の柄を抱いて二歩引かれ、俺は再度溜息。「着替えてくるから、待ってろ」「え?」「こんなに濡れて外歩けねえだろ。すぐ戻るから」「あ、う、うん……」 #as_wct

2011-05-01 23:15:07
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手早く着替えて再度外へ。俺は傘を深く差す『雨』の前まで行って、自分の傘の先で『雨』の傘を叩く。「行くぞ」傘が上がり、強く結ばれた唇が見える。「あー……」頬を掻き、一度視線を逸らして、戻す。「急に触って悪かったな」「え」「それでさっき怒ったんだろ?」「ち、ちが……」 #as_wct

2011-05-02 21:51:47
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一瞬否定するように身を乗り出した『雨』だが、身を引き、目を明後日に向け、「そ、そうよ、身の程を知りなさい」「はいはい、悪うございました」謝るような、謝ってないような。だが、これでいい。俺が何も言わずに歩き出せば、すぐに『雨』も横について歩きだす。 #as_wct

2011-05-02 21:58:54
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空から落ちる雨は最初に外に出たときと同じ静かなもの。吐息と共に肩を落としながら下ろした視線を横に向ければ、自分のものより少し低い位置にある傘は弾んでいる。「どこに行く?」「どこでもいいわ」「行きたいところは?」「別に」「じゃあ、適当に」「ええ、そうね」 #as_wct

2011-05-02 22:02:00
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さあ適当に歩こう。歩幅を合わせ、ゆっくりと。「今日はいつまで?」「夕方には行く予定よ」「じゃあ昼ご飯は一緒に食えるか」「私、貴方と食べるなんて言ってないわよ?」「一緒に食べていただけませんか?」「……しょうがないわね」 #as_wct

2011-05-03 21:13:39
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「何食べたい?」「何でもいいわ」「じゃあ適当な店にでも」「いやよ」「……何でもいいんじゃないのかよ」「貴方が作りなさい」「手作り?」「べ、別に手作りが食べたい訳じゃないわ。貴方が二人前頼んで変な目で見られて落ち着いて食べられないからよ」「……そりゃ悪うござんした」 #as_wct

2011-05-03 21:15:58
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となると、何作ろうか。「パスタとか?」「カルボナーラがいいわ」「じゃあそれで。しばらく歩いたら買い物しようか」「そうね」よし、じゃあ散歩ルートは土手を通って商店街に向かう方向にしよう。少し前を歩いて道を示す。「そ、そういえば……」『雨』の伺うような声に、振り返る。 #as_wct

2011-05-03 21:21:03
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「どうした?」問えば、『雨』は傘から僅かに顔をのぞかせ、「さ、最近、彼女とは会ってるの?」彼女。彼氏彼女ではない、三人称の彼女だ。そして、『雨』のいう三人称の彼女は、「会ってないよ」俺が会おうとして、会えてない人の事だ。「いやー、何か」 #as_wct

2011-05-04 22:30:10
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俺は、はは、と乾いた笑いで頭を掻き、「互いに都合が合わないのかな。姿すら見なくて」「貴方に問題があるんじゃないの?」「何だよ、それ。地味に傷つくぞ。俺別に悪い事は――」「悪いとかそういうのじゃなくて」「ん? じゃあ、何」「貴方が会おうとしてないだけじゃないの?」 #as_wct

2011-05-04 22:33:04
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目を丸くして『雨』を見ていると、眉が顰められる。「何よ」「いや……どっかで聞いたセリフだなと思って」「どこかで誰かに言われたんじゃないの?」「あー……」誰だったっけ。ともあれそれが誰だとしても、「そんな事言われても、俺は会いたいし会おうとしてるつもりなんだけどね」 #as_wct

2011-05-04 22:35:39
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「つもりなだけなんじゃないの?」うおっと厳しいぞこやつ。俺は口を歪ませ、唸る。「本当に、俺は会おうとしてるよ。会いたいし。ただ探しても居ないんだ。何処にも」「会いたいって事の意味、ちゃんと分かってるのかしら?」「へ?」意味? 会いたい事の? #as_wct

2011-05-05 23:25:28
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「……そ、それって、つまり、あれか?」「あれ?」「いやだから、その」俺は緩む頬を掻き、「ほら、えっと、あ、好き、とか……へへ」「気持ち悪い」「ばっさりだな!?」確かにニヤけた自分は気持ち悪いだろうが、それでもここまではっきり言われるとへこむ。「それに、違うわよ」 #as_wct

2011-05-05 23:39:45
Affair Story @affair_story_s

「え、違うの?」何だそれ、恥掻き損じゃないか俺。「貴方は、彼女に会いたいんでしょう?」「そうだって言ってるじゃん」「なら、ちゃんと彼女と向き合いなさいよ」「……は?」向き合うも何も、喧嘩してる訳じゃないしそもそも顔を合わせられなくて悩んでるんだけど。 #as_wct

2011-05-05 23:42:32