浜風、免許を取る

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグへお願いします。

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浜風、免許を取る #落ちぬい二次

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ある日の午後、浜風は基地司令室に呼び出されていた。 「非番に呼び出して悪いな」 「いえ。それでお話とは？」 「お前免許取れ」 「結構です」 取り付く島もない。#落ちぬい二次

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「なんで？」 「だって車なんて買うつもりないですし……」 「車買えって言ってるわけじゃねえよ。免許だけでいいんだって」 「でも使う予定もない物を取るのって無駄じゃないですか」#落ちぬい二次

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実はそうでもないのである。自動車を使った陸上移動の場合、運転は隊員の持ち回りである。艦娘の場合は兵器扱いでもあるのでほとんどの場合は一般の軍人が運転するのが通例だが、そうも言っていられない場合だってある。 だが、兵頭はそう言った事情は敢えて伏せた。#落ちぬい二次

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「谷風は大型まで持ってるし、浦風も普通免許はあるな。磯風だって今教習に行ってるだろ」 「そういえば。長門さんと首都高バトルするんだって張り切ってました」 「よし全力で止めろ」#落ちぬい二次

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艦娘が首都高で暴走して検挙された、なんて事になったら特大の不祥事だし、桜の代紋に弱味を握られる事にもなる。 「それはともかくだ。軍のIDじゃ何かと不便だろ。なんせ運転免許証は最強の身分証だから、運転するしない以前に持ってて損はないぞ」 「うーん、それは確かに……」#落ちぬい二次

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艦娘はなにも艦娘のまま一生を終えるわけではない。結婚や健康上の理由などの都合で退官する事も充分に有り得る。そうして軍の身分証を失った時に他の身分証が無いというのでは、普通の生活にすら支障を来してしまう。#落ちぬい二次

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「遠出もしやすくなるし」 「確かに徒歩じゃ近くのスーパーくらいが限界ですね……」 「そこで最初に出てくるのがスーパーってところがお前らしいわ」 年頃の娘ならちょっと遠くまで遊びに行くというのが正しい在り方ではなかろうか。#落ちぬい二次

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「なお取得費用は公費です」 「取ります」 「ほんと現金な」 先程とはまるで違う真剣な眼差しに、兵頭は若干引く。#落ちぬい二次

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「で、どうする。身分証だけでいいなら原付だが、せっかくだし普免くらい取っとくか」 「いえ、とりあえずは原付で。磯風の教習が終わったら普通免許も考えます」 「そうか。ま、気長にな」 その言葉に浜風はよく分からないという顔をする。#落ちぬい二次

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というのも、磯風は教習所であっという間に運転を修得したのは良いものの、すぐに飛ばしたりカーブを攻めたりしたがるので実技の単位を落としまくり、ついには兵頭の所に『こいつに免許はやれん、引き取れ』と苦情が来たのだ。#落ちぬい二次

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それでも磯風の免許、ひいては長門とのドライブに掛ける熱意は強く、実費を出して教習を続けている。だから、磯風が免許を取るか放逐されるかしないと浜風は普通免許の教習に行けない事になる。#落ちぬい二次

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最悪、陸軍に頭を下げて朝霞基地に併設された教習所を使わせてもらうという最終手段も無いことは無いが、海軍、特に艦娘部隊と陸軍はあまり仲がよろしくないうえ、同じ軍人という事で磯風の遠慮が無くなるという危険性があるので本当に最終手段としたいところである。#落ちぬい二次

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「学科のテキストは用意しとく。引っかけ問題ばっかだから素直に考えるとミスるぞ」 原付であれば簡単な講習の後で筆記試験を受け、合格したら実技講習というごく簡素な手順で取得できるが、念には念をである。 「気を付けます」#落ちぬい二次

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「名前については本名は駄目な。適当な偽名考えとけよ」 艦娘の本名は防衛秘密に指定されており、漏洩する事は禁じられている。郵便物のあて名も原則として基地内の私設私書箱にするよう定められているほどだ。#落ちぬい二次

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かといって免許証の氏名欄が空欄というわけにはいかないので、艦娘の場合は適当な偽名とし、裏面に身分照会については所属基地に問い合わせるよう記載される。#落ちぬい二次

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「わかりました」 浜風は目を輝かせて返事をする。どうやら公費での資格取得というのが大分嬉しいらしい。 さもありなん。一般の軍人であれば業務に関連する大型車や重機、各種の技師などの資格を取得できるが、職域が特殊な艦娘ではそれも叶わないのだから。#落ちぬい二次

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「ちなみに浜風さんや」 「はい？」 「塩肉じゃが、食いてっす」 豚とろを使った浜風の得意料理である。 「はいはい。作っておきますから、夜に来てくださいね」#落ちぬい二次

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先程までの上官と部下ではなく、親しい間柄の者にしか見せない微笑みを見せる。まるで、家族からの夕食のリクエストを受ける母のような。 「うす」 浜風は入室時のような畏まった礼ではなく、小さく手を振って退室していった。#落ちぬい二次

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兵頭が塩肉じゃがをたかるついでに浜風にテキストを渡してから数日後、早くも浦風や谷風に相談して原付を買う手配を進めているらしい事が聞こえてきた。 というのも、相談を受けた谷風がさらに兵頭に相談を持ちかけたからである。#落ちぬい二次

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「提督からも言ってやってよ。浜風ってば中古の安いやつでいいって聞かないんだよ」 プレハブの司令官宿舎にやって来て、我が家のように冷蔵庫を開け、発泡酒を取り出して兵頭の差向いにどっかと胡坐をかいてプルタブを開けながら言った。#落ちぬい二次

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「ちっと意外だな。免許だけ取って原チャリは買わないもんだと思ってた」 「いろいろ調べたら、原付ならちょっと遠くの安売りスーパーまで行けるとかで乗り気になっだんだよ」 「ほんっと所帯じみてんな」#落ちぬい二次