浜風、暗夜航路

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次です! 今回は浜風の日常話……? タイトルの不穏さとあわせ是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない および #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグまでお願いします

2015-08-09 19:05:33

本編

竹村京 @kyou_takemura

うだるような暑さと肌にまとわりつく湿った海風が不快この上ない日だった。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:08:40
竹村京 @kyou_takemura

買い物を終えた浜風はフードコートでアイスクリームを食べていた。なんと普通なら2個の値段で3個食べられるのだ。箱アイスより断然高価だが、暑さとアイスの魅力が無駄遣いへの罪悪感を超えてしまったのだから仕方がない。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:10:36
竹村京 @kyou_takemura

溶けかけたアイスをスプーンで削り取って少しずつ口に運んでいると、目の前を通る広い通路を男が血相を変えて走ってくるのが見えた。この暑い時期に厚手のジャケットを羽織っているのは少し不自然だったが、そういうファッションなのだろうと思ってアイスに目を戻した。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:12:37
竹村京 @kyou_takemura

アイスを一口舐めた時、鋭い破裂音が二回鳴った。 ―――なに!? この音は浜風には馴染み深いが、街中では聞くはずのないものだ。 顔を上げると、先ほどのジャケットの男が黒い銃を頭上に掲げていた。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:15:17
竹村京 @kyou_takemura

ショッピングセンターは静まり返っている。図太い若者が撮影しようとスマートフォンを取り出し始めていたが、それ以外にはまだ混乱はない。 ―――どうしよう?#落ちぬい二次

2015-08-09 19:17:01
竹村京 @kyou_takemura

周りの人達に警告する? 駄目だ、むしろ混乱を助長してしまう。 取り押さえる? 分が悪すぎる。向こうは銃、こっちは素手だ。近付くまでに撃たれるのは間違いない。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:19:01
竹村京 @kyou_takemura

拳銃男は銃を振り上げて叫ぶ。 「どけ!道を開けろ!」 乱射魔ではなく、逃走のために銃を使う冷静さを持っているらしい。だったら対抗できるかもしれない。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:20:50
竹村京 @kyou_takemura

拳銃男が銃を振り上げて再び走り始める。浜風は咄嗟に横の椅子に置いてあったエコバッグに手を突っ込み、さっき買ったばかりのドレッシングを掴むと思いきり投げつけた。瓶は過たず男の顔面に命中し、鼻を叩き潰した。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:22:38
竹村京 @kyou_takemura

浜風は男に駆け寄るが、それよりも早く走って来た女がひるんだ男の膝を横から思い切り蹴り抜いて転ばせ、手早く右腕を捻りあげて制圧した。銃は素早く人がいない一角に蹴り飛ばされている。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:24:47
竹村京 @kyou_takemura

拳銃男を制圧した女は肩までの長さに切り揃えた黒髪と真っ白い肌が印象的で、この暑いのにシャツの上に黒のジャケットを着込み、ボトムスも黒のタイトな七分丈パンツ、頭には黒のキャスケット帽という、スーツか喪服をカジュアルにしたような装いだった。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:27:46
竹村京 @kyou_takemura

黒尽くめの女は私服警官だろうかと思いながら遠巻きに見守っていると、やや遅れて女の仲間と思しき男が駆け付けた。彼は手早く銃を拾って弾倉を抜いてから自分の懐に納め、組み敷かれた男に手錠をかけた。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:31:00
竹村京 @kyou_takemura

「岡野殿、大丈夫ですか」 男が黒尽くめの女に問うた。 「この阿呆、こんな所で道具を出したであります。もう少しまともな頭があると思って二手に分かれたのは失敗でありましたな」#落ちぬい二次

2015-08-09 19:33:43
竹村京 @kyou_takemura

「申し訳ありません。自分がもっと早く追い詰めていれば安全に制圧できました」 「謝る必要はないであります。手順も手際も限られた人手では最良でありましたよ」 男の方が拳銃男を引っ立てながら浜風の方を見る。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:35:15
竹村京 @kyou_takemura

「ところで、あちらの方は?」 「そうそう、この阿呆が道具を出そうとしたところに瓶を投げつけて……おや」 黒尽くめの女が浜風の方を見て言葉を切る。 「どうしました?」#落ちぬい二次

2015-08-09 19:37:56
竹村京 @kyou_takemura

「カモネギというか棚ぼたというか、ちょうどいい助勢がいたであります。お前はそいつを連れて行っていいであります」 「大丈夫なんですか?」 「もちろんでありますよ。なにしろ彼女は……」 女が耳打ちすると、男は納得した様子で拳銃男を引きずるようにして去って行った。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:39:41
竹村京 @kyou_takemura

「さて。そこのドレッシング女史」 不穏な様子を見て取った浜風がドレッシングを諦めてその場を離れようとしていると、黒尽くめの女に呼び止められた。 「捜査への協力、感謝するであります」 「ええ……その、咄嗟に」#落ちぬい二次

2015-08-09 19:42:38
竹村京 @kyou_takemura

「では引き続き捜査にご協力願うであります」 「私はこれで……って、ええ!?そんな、困ります!」 「そっちが困ろうと自分の知ったこっちゃないであります」 その身勝手な言い分にむっとした浜風が黙ってエコバッグを掴んで立ち去ろうとすると、目の前に身分証が差し出された。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:44:56
竹村京 @kyou_takemura

情報機密監査部(Division for Audit Information Security)、略称DAIS(ダイス)。黒尽くめの女の身分証にはそう書いてあった。氏名は岡野瑞穂。階級は特務大尉。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:47:30
竹村京 @kyou_takemura

特務士官とは通常の階級とはまた別枠の制度だ。旧海軍ではベテラン兵曹長をそのまま退役させるのではなく、特務士官に特例的に昇進させて下士官の不足を補った。士官と特務士官は同等ではなく、指揮系統にあっては特務士官は士官の下に置かれる。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:49:25
竹村京 @kyou_takemura

が、自衛隊やそれを改組した現在の日本軍には特務士官は存在しないはずだ。ごく一部の例外を除けば。 「憲兵……」#落ちぬい二次

2015-08-09 19:51:34
竹村京 @kyou_takemura

それも通常の警務隊ではなく、旧軍のように一般国民への捜査権も有する厄介な方の憲兵である。DAISという組織名さえも正式なものではないと言われていて、一般の軍人には強い権限を持つ秘匿された部署程度にしか知られていない。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:54:30
竹村京 @kyou_takemura

「さて、自分の目が確かであれば貴官は兵頭鎮守府所属の駆逐艦娘、浜風でありますな?」 「え、ええ。それが、何か」 岡野はわざとらしく辺りを見回して浜風のエコバッグに目を止めると、その中を覗き込んだ。#落ちぬい二次

2015-08-09 19:56:37
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