カウンシル・フジミ #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もう一枚も焼けたからね」スージーが一枚目よりも大きなピザを持ってきた。ビスマルクだ。スーサイドがカッターを入れると、コトブキとシキベが歓声をあげた。黙々とピザを頬張るマスラダにスージーがタッパーを渡した。「ほら。スシだよ。お望みの」マスラダは頷き、受け取った。 16

2018-06-06 23:30:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピザを呑み込み、自家製のジンジャーエールで流し込み、スシタッパーの中からマグロとイカを取り、順に咀嚼する。コトブキがビスマルクの一切れをマスラダに手渡す。半熟の卵の黄身が滴り落ちる。手ですくい、生地に載せ直して、かぶりつく。フジキドもスージーにスシを所望した。 17

2018-06-06 23:34:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキはモニタ越しに彼らの食事を無言で眺めている。「人心地つきましたか?」コトブキがマスラダに尋ねる。マスラダは口を拭い、頷いて、席を立とうとする。「ゴチソウサマ。これで十分だ。エッジカム火山への道筋をくれ」「……ア?なに?」タキが我に返った。「どうするつもりだ?」「直接行く」 18

2018-06-06 23:40:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待て……ちょっと待て!」ガガピー!ロボが腕を振り上げて抗議すると、ノイズが発せられた。「直接ってお前、何の為にこうして……」「飯とスシの補給だ。後はエッジカム火山に行って、奴を殺す。それでケリがつく」「わたしも行きます」コトブキが頷いた。「やっつけましょう!」 19

2018-06-06 23:45:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「敵の規模もわからねえんだぞ!」タキが抗議した。「オイ、スーサイド=サン、アンタも……」「ダメだ。座れ」スーサイドがピシャリと言い、飲み干したコロナの瓶をズンと置いた。マスラダがスーサイドを見た。スーサイドはじっと見る。マスラダは一旦、座り直す。コトブキも不満げに従った。 20

2018-06-06 23:50:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺らの利害は一致してる」スーサイドは言った。「ちっとは俺の話も聞け」「そうだ!絶対協力したほうがいい!オレもそう思うぜ」タキが勢い込んだ。「今回の相手は組織だ。サンズ・オブ・ケオスの時は一人ずつ狙ってったからうまくいった!」「おれ達の事を無駄に話すな」マスラダが黙らせる。 21

2018-06-06 23:59:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「過冬を抑えるにはひと手間必要だ」スーサイドが言った。「シンウインターを倒したとして、お前らはその後どうする、ニンジャスレイヤー=サン。確かにお前らはシトカを出ていきゃそれで済むだろうが、俺達は違う。ここは俺達の街だ。うまくやらなきゃいけねえんだよ」 22

2018-06-07 00:03:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そういうアンタこそ、どういうつもりだい」口を挟んだのはスージーだった。スーサイドが取ろうとする二本目のコロナ瓶を奪い、睨みつけた。「ネオサイタマのソウカイヤを呼び込んで取引して、何のつもりだい。街をメチャクチャにするのがアンタの作戦かい?」「違う」スーサイドは瓶をひったくる。23

2018-06-07 00:06:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スージー=サンよ、まあそういうなって。ソウカイヤは味方につければ千人力だぜ」タキが説明した。「奴らはハンパしねえ。オレは日頃からケツモチとしてコキつかってやってるがよ……」「奴らの事は利用するが、頼りはしない」スーサイドが言った。「頼れば、付け込まれる。わかってら」 24

2018-06-07 00:11:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それじゃ、どうするってのさ?フジミの連中で過冬もソウカイヤも全員やっつけるってのかい?無茶言うんじゃないよ!」「そんな事ァしねえよ!」スーサイドは否定した。そして、名を挙げた。「オールドストーンだ。このあと俺は奴のところに行く」「オールドストーン……!」スージーはハッとした。25

2018-06-07 00:16:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「誰スか?」シキベが尋ねた。「海の男」スージーは端的に答えた。スーサイドが説明を引き継いだ。「このシトカは大昔はそもそも過冬が作った街じゃねえんだ。港を守り、漁に出てカネを稼いでいた」「エメツが全部変えたのさ」と、スージー。「エメツが……そしてシンウインターが街を変えた」 26

2018-06-07 00:20:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかしスージーは釈然としないようだった。「隠居状態の爺さんが何の役に立つんだい?結局、ヤクザに街を盗られた腑抜けの木偶の坊じゃないか」「ああ、まあな」スーサイドは言った。「今は見る影もねえ。……少し前の俺と同じだ。だから一発ブン殴って、腹割って、話をする」 27

2018-06-07 00:25:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウーン……」スージーは難しい顔で腕を組んだ。スーサイドは椅子に寄りかかった。「結局、街は街の連中で奪い返すしかねえんだよ。それなら、あのオールドストーンが戻ってこなきゃ仕方ねえんだ。奴が戻ってくりゃ、漁師の連中も動く。今でも街の連中はオールドストーンを忘れちゃいねえ」 28

2018-06-07 00:32:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは既にスシを食べ終え、奥ゆかしく、じっとその会話に耳を傾けていた。スーサイドは彼を見た。「で、アンタだ。頭数に数えていいのか?もっとも、外へ出て過冬やらソウカイヤのところへ行くってンなら、フン縛って地下室に転がすだけだが」「ゲーッ」窓際のカラスが鳴いた。 29

2018-06-07 00:37:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「是非もなしッスよ」シキベが言った。「状況を解決しないと、街から出られないンで……とにかく、その為の努力は」「当地の事は当地に任せる」フジキドは言った。「だが、ヤクザに力を貸すつもりはない」「消極的なこったな」 30

2018-06-07 00:43:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてフジキドはゾーイを見る。「過冬の目的を確認しておきたい。何故彼女を血眼になって追っている?」「そうッスよ」と、シキベ。「街を閉じ込めているオーロラも、その為なんスよね?」「そう」ゾーイは頷いた。「アイツが……アタシ達を逃がさない為に」 31

2018-06-07 00:47:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三本足のカラスはゾーイをじっと見る。彼女の特異なアトモスフィアを探ろうとするかのように。ゾーイはカラスを見、マスラダを見、そして、目を閉じて、呟いた。「話していい?」 32

2018-06-07 00:51:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「構わない」銀の浜辺で、シルバーキーはゾーイが投げかけた問いに答えた。彼はゾーイがコトダマ空間に無雑作なまでに容易に接続してきたことにあらためて驚嘆していた。「そこにいるのは、俺の……そうだな……まあ、昔から知ってる相手だ。話していいぜ」(わかった)ゾーイの声が響いた。 33

2018-06-07 00:54:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一体何だ?あの娘は」ガンドーがシルバーキーに尋ねた。「普通じゃねえだろ、あの魂の形は」「さすが鋭い旦那だな」シルバーキーはサケを再び満たし、言葉を探した。「全部話せば長くなるんだが、まあ、まずは見てやってくれ」 34

2018-06-07 00:57:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうかい」ガンドーは現世の視界に立ち戻り、ゾーイを見た。ゾーイは立ち上がり、掌を上にした。そこに、拳大のエメツの塊が現れた。いとも容易に。カラスは驚きに黒い目をまるまると見開いた。 35

2018-06-07 01:00:24