日向倶楽部世界旅行編第51話「予選一回戦 VSわかば組」

三隈グループ @Mikuma_company

「東コーナー！鈴谷、あきつ丸！チームアイアンクロス！」 ワァァァッと歓声が上がる 「西コーナー！パジェロ、リリアン！わかば組！」 同じくらいワァァァッと歓声が上がる。そして、少しの溜めがあった後、一際大きなアナウンスが鳴る！ 「レディ…」 会場に緊張が走り、静まる…

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「…ゴォォォッ！」 遂に試合が始まった！試合時間は20分、両チームはカタパルトから射出され、猛然と海を駆け始めた！ 「あきつ丸ちゃん！あたしがまずカウントを取る、援護出来る？」 「任せて下さい！」 あきつ丸の即答に鈴谷はニッと笑い、爆速で護衛ボールの元へ向かう！

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「パジェロ！向こうが来る！」 「大丈夫だリリアン、スピードには自信がある！」 対するわかば組のカンムス、パジェロは、負けじと護衛ボールへダッシュ！スピードに自信があるというだけあり、その速度は確かに速い！ 「向こうが来るか…っしゃ！行けッ、瑞雲！」 対する鈴谷は瑞雲を射出！

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射出された瑞雲は、向かって来るパジェロの元へと突撃！パジェロは瑞雲の攻撃により進路を阻まれ、護衛ボールへの最短ルートを逸れる！ 「リリアン、ちょっとキツイ！」 「私があいつ抑える！パジェロは走って！」 そこへ来るはリリアンの対空射撃、下手くそだが、瑞雲の動きは僅かに鈍った！

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しかし！そうこうしてるうちに鈴谷は護衛ボールの元へ到達、100、99、98…と、チームのカウントがスタートした！ 「よォし、あとは耐えるだけよ！あきつ丸ちゃんカァモン！」 鈴谷がそう言って少しすると、あきつ丸が半径120メートル付近に到達！支援態勢に入る！

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だがそれと同時、わかば組の二人も半径150メートル付近に到達！ 「カウントが！止めるよパジェロ！」 「任せろリリアン！」 二人はカウントを止めるべく、護衛ボールへの接近を試みる！ 「させない！」 それを阻まんとするあきつ丸の支援射撃！二人は回避の為にルートを逸らす！

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そこへ鈴谷の瑞雲が追撃！パジェロとリリアンは半径250メートルまでの後退を余儀なくされる！ 一気に遠ざかった二人は、態勢を立て直しつつ、判断！ 「二手に分かれようパジェロ！」 「それが良いリリアン！」 二手に分かれ、どちらかがカウントをストップさせる、これは悪くない判断である！

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これに対し、あきつ丸達も解を出す！ 「あきつ丸ちゃん！チェンジだ！」 「はいッ！」 解！鈴谷がカウント半径を離脱、それと同時にあきつ丸がカウント半径に突入したのだ！ 「交代した！？」 パジェロとリリアンは、経験の浅いカンムスである。故にこの行動の意味を、素早くは理解できなかった！

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だが、すぐに理解出来る事となる！ 「オラオラオラァッ！止まれ止まれェ！」 カウント半径の縛りを解かれた鈴谷が、パジェロの元へ突撃したのだ！ そうだ！戦闘力に優れた鈴谷がカウンターを辞めれば、彼女は完全フリーで動くことができるのだ！鈴谷は主砲をぶっ放し、パジェロを威嚇する！

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彼女の射撃は有効射程を大きく外れたもの、当たるはずがない。 「クソッ！弾が来る！」 しかし、未熟なパジェロをビビらせるにはこれで十分だった！パジェロは減速し、鈴谷の思う方向へと進路を変える、鈴谷の戦闘行動は完全に成功した！

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その一方であきつ丸も、リリアンを足止めすべく奮戦している！ 「くっ、この艦娘、強いよ！」 あきつ丸の射撃と、攻撃ユニット「ダイハツ」の射撃、リリアンはこの双方を必死になって避ける。その動きはぎこちなかったが、未熟なカンムスにしてはよくやっていると言える。

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「中々当たらない…」 あきつ丸もあきつ丸で、攻撃が当たらない事に思うところはあった。もう少し踏み込むことも考えた。 「…いや、今はこれで！」 しかし勝利条件を思い出し、ちゃんと足止めに徹する。膠着状態とは、自分との戦いでもある！

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するとそこへ、鈴谷の弾丸が飛んできた！ 「あっ、何！？」 リリアンは動揺し、鈴谷の方に目と主砲を向ける。だがそれは射程外からのもの！つまりは 「あきつ丸ちゃん、やれ！」 鈴谷の 「…！ええ！」 ハッタリであった！隙を見せたリリアンに、あきつ丸は主砲を頑張って狙ってぶちかます！

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何発か撃った弾丸のうち、一発がリリアンの艤装の、一番大事な部分を直撃！ 「えっ！？ぎゃああああああ」 リリアンは態勢を大きく崩し、海の中に突っ込んだ、撃沈だ！ 「リリアンッ！」 「ごめん、パジェロ！」 リリアンは謝罪しつつ、こういう時の為の浮き袋でぷかぷか浮かぶ。

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「おーっとここでリリアンが撃沈判定！わかば組一名脱落！」 実況がそう言うと、試合の動きに観客達も盛り上がる。 「さあ残りカウントは30を切りました！あと90秒です！」 戦況はあきつ丸達が圧倒的優位。 「くっ、でもやるしかない！」 しかしパジェロも諦めず、カウントのストップを狙う！

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「さて逆境のパジェロ、ここで護衛ボールへと猛突進します！」 追随してくる瑞雲の攻撃など気にもとめず、パジェロは猛烈な勢いで護衛ボールへ向かう。思い切りの良い行動だが、悪く言えば考えなし、破れかぶれ！ 「迎え撃つよ！」 「分かりました！」 これをあきつ丸達は、腰を据えて迎撃の構え！

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二人は向かって来るパジェロに対し、三角形を描くように位置取った！ こうする事で、互いの弾が不足なく相手に届く、完全な相互支援が成立するのだ！ 「くっ、上手く近づけない…！」 だからパジェロは思うように前へ進めない、突っ込めば確実にやられてしまう、だから立往生をする！

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しかし時はパジェロを待たない！カウントは刻一刻と減って行く！ 「カウントは残り15を切った！このままアイアンクロスが勝利者となるか！？」 実況と観客、決着を間近にし皆のボルテージが上がる！そしてそれに、パジェロも焦る！ 「くっ…諦めないぞ！うおおおおおっ！！！」

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パジェロは自身を鼓舞するように吠えると、手に持ったシールドを構え、闇雲に撃ちながら突進した！ 「こ、こいつ！」 「慌てるな！破れかぶれなんだ、冷静に対処すりゃあいい！」 窮鼠猫を噛む状況に慌てるあきつ丸へ、鈴谷は諭すように声をかける。その間も、パジェロは突撃を敢行！敢行！敢行！

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「く、来る！」 カウント内に留まったあきつ丸は、向かって来るパジェロを前に息を呑む。 「あきつ丸ちゃん思い出しな！こういう時は、避けるんだ！」 そんな彼女に鈴谷はこう言い放つ。あきつ丸には不安があったが、今は、その通りにした！撃たずに回避に専念する！避けてれば当たらないと！

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パジェロが迫る、あきつ丸は避ける、パジェロが迫る、あきつ丸は避ける、そのルーチンの中でも、パジェロはカウント停止範囲にどんどんと近づく！ 「さあパジェロ、ここでギリギリカウントを止めるか！？残り5カウント！」 パジェロを進ませてはいけない、あきつ丸は立ち塞がる！

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「退いて、貰うぜ！」 そんな彼女を退けるべく、パジェロはあきつ丸に狙いを定める！ カウントは残り4、3、2！ 「避ける…避ける…！」 残りカウント、1！ 「うおおおお当たれぇぇぇぇっ！」 ギリギリの中、パジェロは叫ぶ！そしてその瞬間！弾丸が放たれ、艤装に命中！爆発が起きた！

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だが、その爆発が起きたのは…パジェロの艤装！ 「ぐっ、やられたのか…！」 艤装をやられたパジェロは海の上で転倒、水飛沫を上げる！ それと同時！ 「カウント0、そこまで！」 あきつ丸達のカウントが減りきり、彼らの勝利が確定した！大きなブザー音が鳴り、会場からは歓声が上がる！

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「か、勝った…！？」 その音にあきつ丸は足を止め、キョロキョロと辺りを見回す。そこへ、鈴谷がへらへら笑いながら近付いて来た。 「よーく我慢した、偉いぞ〜」 鈴谷は撃ったばかりの主砲を艤装に引っ掛け、あきつ丸の頭をぽんぽんと叩く。言うまでもないが、パジェロを止めたのは彼女であった。

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そんな彼女に、あきつ丸はぽんぽんと撫でられながら問う 「か、勝った？」 「ああ、初戦は勝ちだぜ」 未だ現実味を感じていない彼女に、鈴谷は歓声の上がる観客席を指して笑う。 「Gリーグ第一試合、勝者…チームアイアンクロス！」 同時にアナウンスも鳴り、あきつ丸へ念入りに勝利を伝える。