燭へし同棲botログ：キスの日

燭へし同棲bot @dousei_skhs

【キスの日】 「長谷部くん」 「……んー？」 「その映画面白かった？」 「……あんまり」 「えー」 「初めはよかったんだが、途中の展開が突飛すぎて置いてけぼりを食らった。悪いが俺にはハズレだったな」 「言うほど突飛だったかなあ……」 「なんだ、お前も観てたのか」

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「長谷部くんが僕をほったらかしてDVD観始めちゃって、しかも集中してるみたいだったからね。仕方なく後ろから一緒に観てました」 「わ、悪い」 「しかもそれがハズレって……」 「あの、お前も一緒にどうかと思ったんだが、なにか作業してたから」

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「ふふ、うそうそ、いいんだよ。キッチンの整理してたんだ」 「……すまない」 「いいよ。途中からだけど、僕も一緒に観てたって言っただろ」 「……うん」 「ところで、どの辺が突飛だと思ったの」 「え？　ああ……あの、ヒロインがキスされるところ」 「あー、え？　あそこのどこが」

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「本筋にはあまり関係なかったんだが、一度引っ掛かるとどうにも気になって」 「よくあるキスシーンだろう」 「そうなんだが……キスひとつでああも気持ちが揺らぐものかと思って」 「……ふーん」 「それがどうも俺には、……なんだ」 「え？　なに？」 「にやけてる。怖い」

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「いや、にやけもするでしょ。可愛いこと言うんだから」 「は？」 「長谷部くんは弱いのにねえ、キス」 「……な、」 「揺らぐどころか、深いのしたらとろんとなるのにねえ」 「光忠っ」 「本当のことだろ？」 「…………」

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「さっき構ってくれなかったお返し、……なんて」 「光忠」 「あっはい」 「ちょっと来い」 「はい」 「屈め」 「はい」 「んっ」 「！　ん、……」 「…………」 「…………」 「……こっちもお返しだ」

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「──ちょっと長谷部くん」 「なんだ？」 「なんだじゃないよ、なにこれ、すっごい苦いんだけど」 「ふふん、だろうな」 「わかっててやったのか！　……あっ、この味なに！？　今までなに食べてたの！？」 「当ててみろ」 「もー、味するならせめて甘いのがよかった……」 「甘いのはいつもだろ」

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「えっ」 「あっ」 「……聞こえなかった、もう一回言って」 「なんのことだ」 「もう一回言って」 「なんのことだ」 「お願い」 「いやだ」 「なんで！」 「いやだ！」 【了】