魔理沙とコーヒー(マリアリ)

コーヒーの砂糖と塩を入れ間違えるというマンガみたいな失敗をしたので、 #いいねの数だけ魔理沙のコーヒーに砂糖が入る というタグをやったら、意外と集まってしまって、記念に。
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ハチ🐾 @hachisu716

アリス「……はい。焼き上がり。コーヒー風味のケーキ」 魔理沙「ありがとう。うまそう」 アリ「急に中がどろどろのマグを持ってきてこれでケーキを作れなんていうから、何かと思ったわ」 魔理「ちょっとのっぴきならない事情が出来て、抜き差しならない事態に陥ったんだ。お前の助けが欲しかった」

2018-06-10 21:47:27
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「毒なんか入ってないでしょうね」 魔理「むしろこの砂糖の分量が毒なんだよ。毒って怖いな。人間の体なんて、結局なんでも毒になるんだからな」 アリ「そうね、なんでも過ぎれば身体に毒よ。……なに、飲み干そうと思ったの? あのコーヒー」 魔理「のっぴきならない事情から」

2018-06-10 21:49:29
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「……一応筋を通すために、ちょっとは嘗めてみた。ティースプーン一杯くらいはな」 アリ「それで? お味は」 魔理「ティースプーン一杯の砂糖だった」 アリ「そうでしょうね。飽和するとそれ以上溶けないからね」 魔理「今頃大ブーイングだろうな。だけど仕方がない。私の命に関わる」

2018-06-10 21:52:01
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「死なないとは思うけれど身体には悪いでしょうねえ」 魔理「前に一日中、金平糖を次々嘗めてたことがあるんだが、すっごく体がだるくなった。眠気覚ましに舌を動かしたくて」 アリ「……莫迦ねえ。まあ、今の状況もあまりお利口さんではないけれど」

2018-06-10 22:01:41
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「それで? そのケーキはどうするの? みんなに分けるのなら6等分くらいにカットして箱に入れておきましょうか?」 魔理「ケーキ屋さんが板につきすぎだな。それじゃ本当にただお前にケーキを作らせただけじゃないか」

2018-06-10 22:08:09
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「ああ、そういえば。うーん。ケーキ屋というより魔理沙の我儘への許容水準が下がったのね。困ったことに」 魔理「私の言いなりだな」 アリ「ケーキ屋にされたわ。もちろん材料代は頂くけれど」 魔理「そりゃあまあ。それくらいは。……で、このケーキだけど」

2018-06-10 22:10:20
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「何等分?」 魔理「おい、ケーキ屋……。とりあえず、2切れ。私とお前の分」 アリ「ん? ここで食べるの?」 魔理「むしろそれが普通の考え方だと思うんだよな……本当に身も心もケーキ屋かお前は」 アリ「ケーキ屋にされたと云ったじゃない。私はケーキ屋」

2018-06-10 22:14:57
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「分かったよ、悪かった、ケーキ屋にして。……一緒に食べようと思って頼んだんだ。焼いてもらったケーキを一緒に食べるのは、ケーキ屋じゃないだろ?」 アリ「そうねえ。じゃあ今の私は何かしら」 魔理「……。このケーキ、ちょっとは日保ちするだろ?」

2018-06-10 22:18:11
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「本日中には召し上がってほしいんだけれど。……まあ冷やしておけば明日はまだ食べられるとは思うわ。小さめだし」 魔理「ん。じゃあ、明日も食べよう。手伝ってくれ」 アリ「……私だけがご指名? もっと分配すれば?」

2018-06-10 22:21:38
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「さっきのコーヒーって、本当は私だけが片付けなきゃならない決まりなんだ」 アリ「一体どういうゲームなの……」 魔理「……ちょっとした願掛けと……おまじない。作ったまじないに妖精を集めた数だけ、力を得て、あいつらに後押しされる……みたいな」

2018-06-10 22:26:55
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「そういう誓約をかけたのね。妖精の数だけ角砂糖を入れるってところ? それで?」 魔理「使ったのはティースプーン。うーん……それで、意外と集まってしまって」 アリ「まあ、魔理沙は妖精に好かれるところあるものね。悪戯好き同士で波長が合うんでしょう」 魔理「ほっとけ」

2018-06-10 22:33:19
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「まあ、そんなわけだから。……私が食べなきゃいけないんだ、ほんとは」 アリ「それを私が手伝うのはいいの?」 魔理「あー、んー、うーん……それでだな……そこからが後押しの力を得るというか」 アリ「……あ。ねえ、話を遮るけど。ならクッキーにすれば良かったんじゃない?」

2018-06-10 22:35:58
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「そうすれば数日は日保ちするから、時間はかかるけれど一人で消化していけるんじゃないの? ルールは破らないでしょう?」 魔理「んー……ごほん、ごほん。あー、そうだな。そうなんだけど……そうじゃなく」 アリ「?」

2018-06-10 22:38:38
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「お前との差し込み合いの議論はいつもは楽しいんだが、今回はちょっとターン制で……先手で一手、しゃべらせてくれ」 アリ「分かった」 魔理「ごほ、ごほ……えーと、私が消化するってのが前提で……なおかつ、誰かの助けを借りるなら。そいつもつまり、私でなければならない」

2018-06-10 22:41:25
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「……まあ、そういう理屈ね」 魔理「うん…………それで。…………お前が私になるってことは、…………お前が、…………私になるってことだからさ」 アリ「……」 魔理「ごほ、ごほ、……ごほん……。んー、ん、ん……んん」

2018-06-10 22:44:31
ハチ🐾 @hachisu716

アリ「感冒」 魔理「…………アリス・マーガトロイドが、霧雨魔理沙の一部になるってことは…………」 アリ「……ことは?」 席を立ち、アリスの傍まで来る魔理沙。 切り分けるためにアリスが持ってきた卓上のナイフを手にとって、アリスの手をとって。 ナイフを持った自分の手の上から重ねさせる。

2018-06-10 22:50:35
ハチ🐾 @hachisu716

二人でナイフを持つ形になる。 その手の中のナイフを、ケーキにあてる。 アリスが何度かまばたきして、魔理沙を見る。 真っ赤に熟れたケーキの上の苺のような魔理沙の横顔が見える。 魔理沙「………………ケーキ入刀」

2018-06-10 22:53:30
ハチ🐾 @hachisu716

それだけぼそりと言ったまま、押し黙っている魔理沙。 相変わらず苺のままの魔理沙と、自分の手の中の魔理沙の手と、ナイフと、押し当てたケーキを見直すアリス。 おっとりと何かを考えるように菫色の眸で何度かまばたきをする。 アリス「…………」

2018-06-10 22:56:35
ハチ🐾 @hachisu716

アリス「少し、差し込んでもいいかしら」 魔理沙「…………うん」 アリス「私、あまり物の捉え方が一般的ではないようだから。違ったら訂正してほしいのだけれど」 魔理沙「…………うん」 アリス「……もしかして。私。プロポーズされている?」

2018-06-10 22:58:53
ハチ🐾 @hachisu716

魔理沙「………………」 アリス「…………間違っている? ……なら、訂正して」 魔理沙「…………そ、う…………だよ…………です」 アリス「……」 魔理沙「……お前が……その、私の……連れ合いに、なれば…………共同体、ってわけで……お前は私の、一部なわけだから……」

2018-06-10 23:04:20
ハチ🐾 @hachisu716

魔理沙「…………お前も霧雨魔理沙だし、私もアリス・マーガトロイドだし……同一存在って、……理屈」 ぽそぽそと苺のまま喋り続ける魔理沙。 アリス「…………つまり。同一ということは。例えば私が傷つけば、魔理沙も傷ついたり?」 魔理沙「……お前に何かあったら、そりゃ、私の危機だから」

2018-06-10 23:07:56
ハチ🐾 @hachisu716

アリス「健やかなるときも、病めるときも同じ?」 魔理沙「……まあどっちかが病気でどっちかが元気なときは、あるかもしれない。だけど右手と左手は別々のことするだろ。元気なほうが病んでるほうを看病するのは、アリだと思う。…………私の理屈」

2018-06-10 23:11:26
ハチ🐾 @hachisu716

アリス「なるほど。……ああ、いえ。……少し、差し込みすぎたわね。ごめんね」 魔理沙「…………いや、いい。ターン制だって言ったろ。私はもう、手は尽くした。後はお前のターン」 アリス「…………そうね。私は……」

2018-06-10 23:16:30
ハチ🐾 @hachisu716

すとん、とケーキにナイフを入れ込みそのまま最後まで落とすアリス。 アリス「……ふたりでケーキを食べようと思うわ」 ふっと穏やかに眼を細めて、そう告げるアリス。 自分の手元のナイフと切られたケーキを仔猫のようなまんまるの眼で見つめて、押し黙っている魔理沙。

2018-06-10 23:20:18
ハチ🐾 @hachisu716

やがて口許をむずむずと曲げて、眼まで苺のようにしながら、アリスに振り返る魔理沙。 アリス「ケーキ入刀の前に、眼を見て云ってよ」 旦那さま? いつもとあまり変わらないアリスのニヒルな呟きと、ささやかな微笑みと。変わらず穏やかな視線に、ぐっと息が詰まる魔理沙。

2018-06-10 23:23:11