日向倶楽部世界旅行編第54話「上っ面バディー」

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「日向」 やがて、扶桑が口を開いた。彼女は日向の背中に向かって告げる。 「最上さんは、そんなヤワな娘ではないと思いますよ」 「……そうかな」 最上を高く評価する彼女に、日向は背を向けたまま答える。すると扶桑は、穏やかに微笑んで言う。

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「だって、貴女が育てたのでしょう？艦娘として、逞しく」 その言葉に日向は沈黙を返す、どう答えるべきか、自分でもよく分からなかった。 しかし少しの間をおいて、彼女はゆっくりと起き上がり、背を向けたまま言った。 「…扶桑、最上に会ったら、伝えてくれないか？」

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「良いですよ、何ですか？」 扶桑が快諾すると、日向はそのまま言った。 「"明日の試合…全力で来い、私もそうする"…そう伝えてくれ。」 彼女の声は変わらず暗かった、しかしそこには、先程まで失せていた覇気があった。

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その様子を見て、扶桑はにっこり微笑み、深く頷いた。 「ええ、分かりました。伝えておきましょう。」 「…すまないな、依頼者のキミに…」 「ふふっ、旅立ちの日に言ったでしょう？一つ屋根の下、共に旅行く仲間であると。それは無用な気遣いですよ、全く。」

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申し訳なさそうな日向に対し、扶桑は何処か楽しげに笑うと、ゆっくり立ち上がり、部屋を後にする。 「明日も応援していますよ、頑張って下さい」 「ああ、ありがとう」 日向の返事を聞くと、扶桑はおやすみなさいと言いながら、足音なく部屋を出て行った。

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一人残された日向は、またベッドに横たわる。 「…昔の私なら、こんな事考えもしなかったんだろうか…」 少しごつごつとした自分の手を眺めながら、日向はぼそりと呟く。やがて彼女は縮こまるように丸くなり、いつしか眠りについた。 〜〜

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〜〜 翌日、午前9時過ぎ。 試合を控え、日向は控え室で精神を落ち着けていた。目を閉じ、静かに呼吸をする、吸う、吐く、吸う、吐く、自分にしか聞こえぬほど小さく、風林火山の林と山に身を委ねる。 心中には不安が残る、しかしそれを、今だけは鎮める、静かに、心の奥深くまで。

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その時、控え室のドアが静かに開いた。誰が入ってきたかは分かっていた。 「にひひ…今日も早いねぇ、感心感心」 ニヤついた顔が容易に想像出来るその声の主へ、日向はゆっくり顔を向ける。 「おお怖、そんな顔しないでよね」 声の主伊勢は、自身を睨む日向の顔を見て、戯けるように笑う。

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その態度は日向の神経を逆撫でするのに十分なものであったが、日向はジッと堪え、伊勢から目を逸らす。 「…妙な真似をしてみろ、お前が何を知ってようと消えてもらうぞ」 日向が静かにそう言うと、伊勢は不敵に笑う、そんな事しないし、出来るはずがないと知っていたからだ。

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公衆の面前で身内を殺人鬼の身内にする度胸はないだろうし、万全の態勢でない時に自分は倒されない。伊勢には打算と自信があった、この笑みはその表れだった。 「ふふっ、まあご自由に…。でもさぁ日向、私と組むにしても私を倒すにしても、もう少し仲良くしておいた方が良いんじゃない？」

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伊勢は日向の肩を掴み、まるで友人のようにゆさゆさと揺さぶる。だが、日向は嫌悪感をむき出しにした。 「…お前のような奴には方便でも近付くつもりはない、思い上がるなよ外道め」 日向は本心からの怒りを露わにする、しかし伊勢は全く動じる様子もなく、ニタニタと笑う。

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「ひっどいなぁ…私はこんなに仲良くしようとしてるのにぃ…」 文言と何一つ合致しない顔つき、感情の一致などおよそ無いようなその姿は、人間性の欠如した不気味さがあった。 しかし今は、これが日向のパートナーなのだ、今だけは、手を組まなくてはならない。

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やがて、試合の時間が迫って来た。 「そろそろ時間だね、行こっか」 伊勢は三本の刀を手に取り、控え室の出口へ向かう。日向も同じく一本の刀を取り、立ち上がった。 「その刀、どう？気に入った？」 今大会で日向が使っている刀は、伊勢が彼女に渡したものである。

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「…ああ、今までで一番良い得物だ」 不本意だったが、日向の言うようにこの刀は優れものであった、瑞雲の鼓動と衝撃に耐える、優れた耐久性があった。 そして、伊勢はそれを複数所持しているのだった。 「にひひ…それは良かった。まあ、今回も上手くやろうね、日向…」

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伊勢は飄々とした態度でニタニタと笑い、控え室を後にした。 一人控え室に残された日向は、神妙な顔つきで呟く 「最上、向かって来いよ…」 彼女はそう言うと、刀を握り締め、控え室を出て行った。 Cリーグの4回戦が始まる… 第54話 「上っ面バディー」 おしまい

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【美少年艦隊VSチームアイアンクロス】 Gリーグ三回戦第三試合。アイアンクロスが先制するも、美少年艦隊の策が決まりあきつ丸が撃沈。その後美少年艦隊はカウントを奪取、石楠花を失いつつも躑躅がカウントを守りきりカウント勝ち。カウントは美少年艦隊65、アイアンクロス73の接戦であった。

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【現在の各リーグの上位チーム】 Aリーグ 一位:チーム名なし 一位:ハイドロチーム 三位:香港ビクトリアス Bリーグ 一位:ピンクショッカーズ 二位:ソロモン第四戦隊 二位:リンガ警備隊 Cリーグ 一位:なかよし伊勢型 一位:Wヴィースト 三位:UNIKLO

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【現在の各リーグの上位チームその2】 Dリーグ 一位:デスメタルピース 二位:たかた製作所 二位:日の丸会 Eリーグ 一位:横須賀利根姉妹 二位:ミテラ第一戦隊 三位:パラオ警備隊 Fリーグ 一位:ナイツオブフラワー 二位:駿河工業大学艦娘科 二位:アクアレイヴンズ

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【現在の各リーグの上位チームその3】 Gリーグ 一位:パーフェクトBs 一位:美少年艦隊 一位:天獄花鏡 Hリーグ 一位:海上保安艦隊 二位:岩川大淀組 三位:正義旅団

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【日向】 守るものがある人って弱いんだよねぇ、だって守るものっていうのは、いつだって自分より弱いものなんだもん。 だからそんなものさ、早く捨てちゃいなよ、邪魔なんだから。 (伊勢) pic.twitter.com/qIzsufRGfZ

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