人間の考え方や感受性の変遷に関する苫野一徳さんのツイートまとめ

苫野一徳さんのお話に共感したので後から読み返せるようにまとめました。
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苫野一徳 @ittokutomano

「不寛容を権利とするのは不条理であり、野蛮である。それは猛獣、虎の権利である。いや、もっと恐ろしい。なぜなら、虎が獲物の体を引き裂くのは、それを食べて生きるためだが、われわれ人間はほんのわずかの文章のために、たがいに相手を抹殺してきたのである。」(ヴォルテール『寛容論』)

2018-07-11 22:23:22
苫野一徳 @ittokutomano

ピンカーの『暴力の人類史』などにも詳しいけれど、人類の歴史においては、「不寛容」や「残虐であること」が長い間当たり前だった。それがわずか250年前、ヴォルテールやロックやルソーらの思想を大きな震源として、精神の革命がもたらされた。

2018-07-11 22:28:43
苫野一徳 @ittokutomano

多くの近代哲学者たちは、文字どおり、命がけで、人間精神の革命を起こして来たんだよなぁと、改めて、しみじみ、考えている。

2018-07-11 22:36:09
苫野一徳 @ittokutomano

さっきも紹介したスティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』などに詳しいけれど、人びとは常に暴力と隣り合わせ、と言うよりも、暴力の中を生きていた。そしてそれは、何千年もの間、人びとにとって当たり前のことだった。amazon.co.jp/dp/4791768469/…

2018-07-11 23:15:57
苫野一徳 @ittokutomano

ところがそれが、この2世紀ほどで急激に変化した。今やほとんどの人は、隣町の人びとを皆殺しにしようとは思わないし、残虐な死刑を見世物として楽しむことはないし、拷問は非人道的だと考えているし、復讐を美徳とすることはないし、奴隷制なんて論外だと考えている。

2018-07-11 23:17:04
苫野一徳 @ittokutomano

それまで当然だった、子どもへの暴力も、人種差別も、同性愛者への差別も、この数十年でむしろ嫌悪の対象になった。……なぜ、そんな人間精神の革命が、突如として起こったのか。

2018-07-11 23:17:40
苫野一徳 @ittokutomano

その最大の理由の1つに、ピンカーは、近代の哲学者らが作り上げた新しい哲学を挙げる。ロック、ヴォルテール、ルソー、カント……。寛容や民主主義という、それまでの人類が考えもつかなかった思想の威力は、ジワリジワリと、全世界に広がっていった。

2018-07-11 23:18:08
苫野一徳 @ittokutomano

時折、「自由の相互承認」の原理なんて、完全な実現は不可能なんだから無意味な原理である、なんていう批判を聞く。「哲学原理」というものに対する典型的な誤解だけれど、それは置いておいたとしても、「実現は不可能」という言い方自体が、すでに現実を正確に捉えていない。

2018-07-11 23:18:37
苫野一徳 @ittokutomano

なぜ、今の僕たちは、人種や生まれや育ちが違っても、同じ対等な人間同士だと思えているのか。そんな考えや感受性は、300年前の一般庶民は誰も持っていなかった。「自由の相互承認」の原理は、それがルソーやヘーゲルらによって提示されて以来、ゆっくりと、しかし確実に実現してきたのだ。

2018-07-11 23:19:13
苫野一徳 @ittokutomano

ここに、「哲学原理」というものの本質と意義がある。われわれはどのような社会を目指すべきなのか。そのことが明確にされ、広範な了解が得られたことで、人類はようやく、そこへ向けて歩みを進めていくことができるようになったのだ。

2018-07-11 23:19:46