加藤直之氏によるメカ・デザイン論
仕事場から自宅に(歩いて5分)のところを自転車に乗って帰ってくるだけで汗がビッチョリであります。 さて、ヤマトの話をもうちょっと続けます。『オービタル・クリスマス』の(急ぎの)仕事で、宇宙ステーションの中身を考えなければならないのね。中身は外形から類推することで詰めていきます。
2018-07-21 01:12:04ヤマトの時は、全長が(まあ、横幅も)決まってましたから(松本さんの指示で艦首部分を前に長く伸ばしましたが)、脚本にあわせると、どうしても必要な部分が中に入りません。スタッフの皆さんは船の中って(現代の戦艦とかから受ける印象で)けっこう広い感じで考えているみたいですが、
2018-07-21 01:14:43戦艦大和の環境はびっくりするほど狭いです。でもアニメのヤマトの艦橋では古代や森雪や艦長やアナライザーが芝居するわけでするから、松本さんもさすがにだだっ広い第一艦橋のスケッチを描いてきました。ぼくがそれを清書したんだけど、床に人間の対比させる形で1メートル四方の線を描き込みました
2018-07-21 01:17:55そしてその数字と、ヤマトの外形からくる数値がちょうど2対1くらいなので、どうせならと、宮武が、ヤマトは外と中のサイズは2対1で出来ているという『倍寸効果」を考え出して、それ以降は、ほぼそれを踏襲しましたが、それをある程度厳密に守っていたのは宮武とぼくくらいで
2018-07-21 01:20:06松崎はそれを無視した絵を描いてしまいました。たとえば、ヤマトの船側には『展望台』があります。その展望台を倍寸効果など無視して、だだっ広くしちゃったのね。それは脚本からくる希望に合わせたものでしたが、そういった反省から、2199では最初からきちんとやることにしたらしいです。
2018-07-21 01:22:26ぼくが担当した『銀英伝』ではそんな心配はありませんでした。ぼくが外形と中の両方やったからだけではなく、プロデューサーや監督の意向で、全長がとんでもないものになっていたのです。だってブリュンヒルトが全長1キロですよ。ぼくは船内の移動とか考えていなかったし。
2018-07-21 01:24:48最初の)ヤマトと同じ石黒さんが監督だったし(最初の)ヤマトの第一艦橋の中をぼくが仕上げていた時、石黒さんはぼくの数メートル後ろにある机で、一所懸命、アステロイドベルトの原画を描いていたのですよ。ツーと言えばカー。だから、ブリュンヒルトの艦橋の広さは、直接石黒さんから指示があった
2018-07-21 01:27:06石黒監督は、いっぱい登場人物が出てくる物語の演出がうまい。銀英伝でも、艦橋には、ラインハルトを中心に、参謀とかと会話していく芝居をさせたいから、これだけの広さが欲しい、とぼくに直接、指示を出してきた。だから、互いに顔を向けあったりして芝居できるように参謀の椅子も配置しました
2018-07-21 01:30:49これが、戦艦大和だと、狭い艦橋に横一列に艦橋のスタッフが並び、横に顔を向けて会話するしかない(と思う)。 だからブリュンヒルトの艦橋には、真ん中に一段高いひな壇があり(ヤマトの艦長席みたいなものですね)360度、スクリーンで囲まれている。
2018-07-21 01:33:26ヒューベリオンも、最初にぼくが出したアイデアはボツになって、「ヤンがテーブルに足を乗っけてその横には紅茶が」ができる艦橋を作って欲しいという指示が。 もともとぼくの考えでは、艦橋はいざという時に逃げられる小型の宇宙船、というのが、ここで全部使えなくなったのである・・・
2018-07-21 01:37:48逆に、帝国は、艦長が自分だけでも助かるように「盾艦」というアイデアを冗談で出したりしたが(ボツになると思ってたのに)あとで採用されていたのを知って、びっくりしたこともあった。
2018-07-21 01:40:50そもそも、銀英伝の仕事を引き受けた時、ぼくが出すデザインは全体にボツにしないでね。それが可能なら引き受けます・・・ということで始まったはずだったのが、いろいろ約束が反故にされた仕事でもあった・・・
2018-07-21 01:42:21銀英伝のアニメの仕事をしたて時は、僕はイラストの仕事も大量にこなしていた頃で、それはいっぱいSF小説を読んでいたということ。海外の科学者が書いたSFもたくさんあって、そんな描写の中には、自分の身近には絶対に存在しない斬新なアイデア、普通だったら絵にしづらいものがてんこ盛りで、
2018-07-21 02:20:21でも一番大事なものはボツになった(というよりも提案する機会がやってこなかった)。それは、銀河の戦いでは互いに見えない距離で戦うということ。 相手が見えた瞬間、それは相手が放ったビームが自分の艦を直撃したということ。そういう描写をいちど見てみたかった。 僕が小説から学んだもの。
2018-07-21 02:29:44ヤマトのとき、松本零士さんから膨大なスケッチが届きましたが、それを清書するのは宮武とぼくの役目でした。(松本さんは)自分で清書する時間がもったいなかったのです。松本さんの絵にはときどき形やパースに矛盾があったりしましたが、それを修正するのは、そんなには難しくはない。
2018-07-21 16:27:23メカニックデザインを伴うイラスト作成では、デジタルがすごくありがたい。気に入らなかったら過去に戻れるからですが、過去の途中段階のものを全部、画面に並べて、どれが良かったか、どこでだめになっていったかを、比べながら検討できるのね。何度でもやり直せる。 pic.twitter.com/AlBbyG3ERo
2020-11-08 19:07:40そして過去の絵の気に入った部分だけをコピーして、最新の絵に貼り付けちゃいます。そこで新たな未来形、可能性を探る pic.twitter.com/BBDvSHxTR9
2020-11-08 19:17:57『アニメ大国の神様たち』 eastpress.co.jp/goods/detail/9… 読み終えました。松崎健一も登場します(p.243~)。 ぬえの前身の有限会社は2つの仕事をきっかけに作られました。ひとつが野田昌宏さんからの「ひらけ!ポンキッキ」
2021-06-10 14:16:00もう一つが「ゼロテスター」。 ポンキッキとゼロテスター、2つの仕事が確実に入ってきそうだったのでそれが会社設立の推進剤になりました。 ゼロテスター(メカデザイン)の仕事は、当時ぼくが通っていたデザイン学校のアニメーター志望のクラスメートがアニメ会社に(学校卒業前に)就職して
2021-06-10 14:22:13そのクラスメートが、そのアニメ会社で企画が進んでいた「ゼロテスター」のメカニックデザインの仕事にどうかとぼくのことを上司に紹介してくれたのだそうです。 その上司というのが沼本清海さん。 yatate.net/kiji-kikaku/at…
2021-06-10 14:31:35ぼくが時々ツイートする「メカデザインはシルエットが大事というのは沼本さんから教わりました。しかしぼくはメカデザインなんてやったこと無いから、沼本さんの教えは逆に悪い方に流れ(トゲトゲだらけのメカになった)、宮武が、ゼロテスターの主役メカのほとんどをデザインすることになりました。
2021-06-10 14:41:47沼本さんに褒められたのは、球体のメカロボットがたくさん集まって「群れ」で行動するようになるというアイデア。 その後、大学などの研究で、ロボットが互いに連絡を取り合って群れで行動する(というプログラム)なんてのがテレビで紹介されて、ぼくが好きなのはこの方向なんだなと思いました
2021-06-10 14:49:23だから銀英伝のアニメで、イゼルローン要塞の鏡面流体装甲を思いついたとき、「副砲」は、普段はその装甲の海面下に沈んでいてテキトーに移動し、必要になったら顔を出すとか、中の建物には鏡面の川や噴水がある、とか、装甲が干上がりかけたガイエスブルグ要塞をデザインしてるときが最高に楽しかった
2021-06-10 15:17:11がイエスブルグ要塞の設定画 このあと、硬X線砲塔の位置がコロコロ変わります。 pic.twitter.com/OCWnmAsqor
2021-06-10 16:27:06