ベリアル・アンダーカバー #2

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエ……アイエエ……」この異常な夜、立木の陰のベンチで頭を抱えているのは浮浪者の類ではなく、蛍光色のスポーツウェアとタオル記事のバンダナを身に着け、ガウンを羽織った中年男性だった。スポーツシューズは真新しく、腕輪もプラチナだ。俺は近づく。「どうしたんだね、アンタ。危ないぞ」1

2018-07-25 22:25:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アブナイ……実際危ないんだよ」中年男性は虚ろな目を俺に向けた。俺は話を合わせた。「そりゃそうだ。この辺はカネモチの区画だな?だからって、こんな夜中に」「そうなんだよ」中年男性は厳かに言った。「見たんだ。わたしは」「何を」「大変なものを!」「だから何を」「恐ろしい!」 2

2018-07-25 22:28:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なあアンタ」俺は中年の肩に手を置き、軽度のNRSでぼんやりさせた。「何が恐ろしかった。その恰好。アンタ、この先のフィットネス・ジムの利用者だね」「アイエエ……実際そうです」「逃げて来たのか」「ハイ」「何故」「すごい騒ぎがあって……逃げたんです……そうしたら……ニンジャが!」 3

2018-07-25 22:30:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャを見たのか。それは大変だ」「お、恐ろしい……ニンジャがバイクに乗っていたんです。そして……アイエエエ!何かよくないものを私は見たんだ!カ、カ、カラテを……!」過冬のイクサか。だが、ソウカイ・シンジケートの連中はこの地域を抗争舞台に選んではいない筈。気に入らなかった。 4

2018-07-25 22:33:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはいつの事だね?つい今か?」「わからない。とにかく、ここから動けなくて。腰が抜けてしまって」「それは大変だったな。もう居なくなったのだろう?」「わからない……あれはまるで色つきの風だった!」「何色だ?」「赤黒……アイエエエエ!」中年男は白目を剥き、泡を吹いた。 5

2018-07-25 22:35:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

非ニンジャの精神力ではこれが限界だろう。だが、その証言は……気に入らなかった。赤黒の風?嫌な色だ。十中八九、奴の装束色だろう。俺の辿る道の先々に奴のイクサの痕跡ありか。IRCで上と通信したいが、現状、ネットワークは断絶状態だ。忌々しい。「オヤスミ」俺は中年男を放置し、ジムに向かう。6

2018-07-25 22:39:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……成る程、ジムは騒然としていた。マッポめいた連中が「外して保持」のテープを張っているが、首から覗くいかついタトゥー等を見れば、過冬の手のものだと容易にわかる。この地に入ってから収集した情報で既に明らかだが、この物件は過冬の所有で、中にハッカー・ドージョーが隠されている。 7

2018-07-25 22:42:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺は物陰から物陰へ身を移し、建物内に侵入。問題のハッカー・ドージョーはすぐに発見できた。当然のようにイクサの痕があった。焼け焦げたタタミ、UNIXデッキ。ハッカーらしき者たちの死体。爆発四散痕。……二体分。ビヨンボの陰に目当ての上位UNIXデッキを発見。用意したフロッピーを挿し込む。8

2018-07-25 22:45:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドット・グラフィックのウサギと亀が、段ボール箱を受け渡す。自動GREPプログラムが走り出した。俺はその場でアグラし、携帯スシを咀嚼しながら、進捗バーの100%を待った。悩ましい防衛システムも、こうして直で触ればどうという事もない。やがて、キャバアーン!ディスクが吐き出される。 9

2018-07-25 22:49:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これでハッカー・ドージョーは用済みだ。この市民情報を解析に回さねばならないが、さすがにここのシステムを使うのは躊躇われた。……まあ、どこでもよかろう。再びオーロラの下、風を受け、耳を澄ます。銃撃音を遠くに感じる。……やっているようだ。俺は再び移動を開始する。 10

2018-07-25 22:54:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATA!BRATATATA!BRATATATATA!建物の陰に身を潜めたインシネレイトを、マズル光の反射が照らした。BRATATATA!BRATATATA!BRATATATA!インシネレイトはズレた眼鏡を指で直す。その表情の苛立ちの割合が秒単位で膨れ上がる!「面倒くせェな……面倒くせェ!」 12

2018-07-25 22:58:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATA!「いやわかってるぜそりゃ」インシネレイトはブツブツと呟いた。「これがアレだろ?クローンヤクザに撃たせて誘わせて、本命はニンジャのインターラプトだろ。バカにしやがってよ。それくらい俺にもわかるッてんだよ……だけど面倒くせェんだよ!」銃撃の中に、飛び出す!「イヤーッ!」13

2018-07-25 23:02:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」バリケードめいて横倒しになった蛍光ネオン看板越しに、ロシアンクローンヤクザが全開の銃撃!BRATATATATA!インシネレイトは構わず突っ込む!その身に届いた銃弾が赤く溶け、飛沫と化して、後ろに散ってゆく!「イヤーッ!」ネオン看板を、蹴り上げた! 14

2018-07-25 23:05:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ミンチョ・カタカナで「ミーチカ」と書かれた看板が溶け爆ぜ、火花を散らしながら真上に吹き飛ぶと、巻き添えになったクローンヤクザが上半身を松明めいて燃やしながら宙を飛ぶ!「「アバババーッ!」」その瞬間、斜め後方、地面スレスレを滑って来た影が攻撃を仕掛けた!「イヤーッ!」ニンジャだ!15

2018-07-25 23:07:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘビめいて全身をしならせながら、波打つ毒蛇ナイフで攻撃を仕掛けた過冬のニンジャ!刃がインシネレイトの脇腹を捉える!ニンジャは達成感に蛇目を細め……「うるッせェェー!」「グワーッ!?」炎が傷口を伝い、毒を蒸発させ、フィードバックさせた!炎熱に怯んだアンブッシュ者はバックステップ!16

2018-07-25 23:10:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ!インシネレイトです」振り向きざまに先手のアイサツを繰り出し、燃える手で手招きする!蛇目のニンジャはアイサツを返す。「ドーモ。インシネレイト=サン。ガデューカです」「卑怯な真似しやがって、スッゾオラー!俺はわかってンだよ、そういうヤリクチをよォ!勘でよォ!」 17

2018-07-25 23:14:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガデューカは用心深くカラテを構え、じりじりと移動する。インシネレイトは脇腹を示す。「俺ァ致命傷を受けたぞテメェ……ジツ無かったらテメェ……アイサツ前に俺はテメェもしかしたら……絶対に許さねえ」「それがニンジャの非情のイクサよ」ガデューカは囁いた。「ソウカイヤはアマチュアか」 18

2018-07-25 23:18:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……?」インシネレイトは物騒に顔をしかめた。「俺の頭はバカにされても構わねえよ……テメェごときには理解が難しいからよ。だがクロスカタナをナメるのは許さねえ。伊達に俺はシックスゲイツ張ってねェぞ」「イヤーッ!」ガデューカが毒ナイフ投擲!「イヤーッ!」インシネレイトは炎を払う!19

2018-07-25 23:21:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガデューカはカトン・ファイアウェイブを予期していた。その危険の程度も、用心深いニンジャ第六感によって、ニューロン速度で察知・分析している。飛び道具を防ぐのがせいぜいの威力!ガデューカの本命は二つ目の投擲ダガーである!「イヤーッ!」ナムサン!ダガーは空を切った! 20

2018-07-25 23:24:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

炎の奥にインシネレイトの姿はない!「イヤーッ!」ガデューカは瞬時に察知し、然るべき方向へ防御姿勢を取る。予期した通り、インシネレイトの跳躍打撃が襲ってきた!建物の壁を蹴って後ろへ回り込み、トライアングル・リープからの奇襲攻撃だ!「イヤーッ!」ガデューカはクロス腕でガードする! 21

2018-07-25 23:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KABOOOM!「グワーッ!?」ガード腕が爆ぜた!両手を組んで振り下ろしたインシネレイトは、衝突の瞬間に全身のカトンを溢れさせたのである。予想を超える火力にガデューカは怯んだ。インシネレイトは恐るべき勢いで踏み込み、頭突きを繰り出した!「イヤーッ!」「グワーッ!」 22

2018-07-25 23:30:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

頭突きを受けたガデューカは後退し、ガード姿勢を取りなおそうとした。その時すでにインシネレイトは両手を反らすようにひろげ、さらなるカトンを再生成している。驚くべきジツの充填速度である。ガデューカは知る。シックスゲイツのニンジャの恐ろしさを。そしてそれは遅すぎた……!「イヤーッ!」23

2018-07-25 23:32:58