将棋界の「ジェンダーの壁」:現実とフィクション
- ryu_halfspin
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作者は男性だが、将棋界における女性のさらなる活躍を大いに期待している節がある。体力面で不利な女性が三段リーグを突破する具体的な方策を、主人公が銀子にアドバイスするという形で提言していることがその一例だ。
2018-08-17 00:41:48一方でこの作品は、女流棋士が直面する理不尽な現状を容赦なく描き出す。実力より容姿が注目されがちで、その実力もプロ棋士やアマチュア強豪に劣るために心無い人々から見下され侮られるということが語られる。
2018-08-17 00:41:59さらに作中では、女流棋士の中でも奨励会を経験した者としなかった者で意識の格差があったり、女流棋士ではない女性奨励会員が女流棋士を見下したりするという状況が生じている。こうした問題点は、一貫して女性キャラクターのセリフや回想で描写される。
2018-08-17 00:42:08つまりこの作品の女性たちはみな、自分たちの直面する問題を客観的に認識しつつ懸命に戦い続ける存在なのだ。その女性の一人のセリフに次のようなものがある。
2018-08-17 00:42:18「女流棋士は弱い。棋力ではプロ棋士に到底及ばぬ。だが・・・いや、だからこそ、心だけは強く在らねばならぬのだ。プロ棋士よりも、アマチュア強豪よりも」
2018-08-17 00:42:28「晒し者にされ、嬲られ・・・それでも強く在りたいと、強くなりたいと思い続け、不断の努力を行う者。たとえ才能がなくとも足掻くことをやめない者。女流棋士とはそんな存在であるべきだと思う。」
2018-08-17 00:42:40さらにこの後、銀子がプロ棋士になることを期待する言葉が続く。そうなれば銀子の後を追ってプロ棋士を目指す女性は飛躍的に増えるだろう。その結果女流棋士制度が消滅しても構わない、というのだ。
2018-08-17 00:42:53いつか史上初の女性プロ棋士が誕生した時、女性がプロ棋士になるのが当たり前になった時、女流棋士の歴史的な役割も終わるのかもしれない。それは現実とフィクションのどちらが先になるだろうか。
2018-08-17 00:43:05ここまで、「3月のライオン」「将棋めし」「りゅうおうのおしごと!」の3作品について、「将棋界における女性」がどのように描かれているかを見てきた。将棋界を舞台とした作品は他にも数多く存在し、それらにおいてはまた別の描き方がされているだろう。
2018-08-17 00:43:15恐らく今後の将棋作品は、何らかの形で「ジェンダーの壁」を描かないわけにはいかないのではないか。そうした作品により、男女平等が当然とされる現代社会に厳然と存在するこの問題が一層周知されることを期待したい。
2018-08-17 00:43:30また、男性優位な将棋界において今このときも奮闘している女性たちの存在も、もっと知られてほしい。女流棋士や女性奨励会員のことが、一般の女性の間で知名度が上がり、彼女たちから応援されるようになってほしい。
2018-08-17 00:43:41彼女たちの闘いは、いつか女性プロ棋士が誕生するまで、いや誕生してからも続いていくのだ。女流棋士、女性奨励会員の皆様の更なる活躍を心から祈念する。
2018-08-17 00:43:54