将棋界の「ジェンダーの壁」:現実とフィクション

男女差別が話題になる昨今、この現状はどれほど知られているのかと気になります。
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MarineGuards @ryu_halfspin

将棋界で生きようとする女性にとって、「ジェンダーの壁」は避けて通れない問題ではないだろうか。 プロ棋士となる条件に男女で違いはないにも関わらず、現代にいたるまで「女性プロ棋士」は一人も出ていないという現状があるからである。

2018-08-17 00:32:54
MarineGuards @ryu_halfspin

この「ジェンダーの壁」の原因、つまり女性がプロ棋士になることを妨げる何らかの要因はあるのか、ということがしばしば議論される。 男女の脳の構造や得意分野に差異があるため、「女性に将棋は向かない」と結論する意見も根強い。

2018-08-17 00:33:06
MarineGuards @ryu_halfspin

一方こうした先天的な要因を否定する立場からは、将棋における男女の競技人口の差や、いわゆるジェンダーロールによる暗黙の制約のために女性が力を発揮できないことに原因を求める。

2018-08-17 00:33:18
MarineGuards @ryu_halfspin

この意見には合理性があると思う。ただし、これが正しいのだとしたら、結局「ジェンダーの壁」を克服するには女性への将棋普及を進め、女性が将棋を指すのが当たり前の環境を形成するしか方法はないだろう。

2018-08-17 00:33:28
MarineGuards @ryu_halfspin

個人的には、生来の要因で女性は男性より棋力が劣るとか、将棋には向かないという意見は承服しがたい。現にプロ棋士の一歩手前の、奨励会三段リーグにたどり着いた女性が複数いるからだ。里見香奈西山朋佳だ。

2018-08-17 00:33:44
MarineGuards @ryu_halfspin

断定はできないが、日本に数百万人はいるであろう将棋を指す男性のうち、99.9%以上は彼女たちに勝てないのではないか。やはり将棋でも、女性が男性と渡り合うことは十分に可能なはずだ。

2018-08-17 00:33:56
MarineGuards @ryu_halfspin

もっとも、仮に棋力で劣っていなくても、プロの世界で成功するにはそれ以外の要因が関係してくる可能性はある。 よく言われるのは体力だ。プロ棋士にとって最も重要な順位戦の持ち時間は6時間であり、これほどの長い将棋を経験した女性はまだ存在しないかもしれない。

2018-08-17 00:34:08
MarineGuards @ryu_halfspin

男女の体力差がプロの勝負に影響する可能性は否定できない。しかしこれは「やってみなければ分からない」のであり、外野がどうこう言っても仕方ないだろう。将棋界の「ジェンダーの壁」を克服する意義を損なうことにはなりえないのだ。

2018-08-17 00:34:21
MarineGuards @ryu_halfspin

将棋界に属していなくても、フェミニズムの立場から女性への将棋普及に取り組んでいる個人や団体はあるのだろうか。あらゆる分野で「ジェンダーの壁」が克服されることを望むのであれば、この問題に対し少なくとも日本将棋連盟と同等の熱意をもって取り組んでも良さそうな気がする。

2018-08-17 00:34:34
MarineGuards @ryu_halfspin

しかし現状では、この「ジェンダーの壁」を打ち破る努力はプロ棋士を目指す個々の女性によってなされており、他の分野と比べてフェミニズム的視点からは注目されていないように思える。

2018-08-17 00:34:43
MarineGuards @ryu_halfspin

これはなぜなのだろうか。考えられる一つの理由は単に知られていない、ということだが、かつてないほど将棋が話題となる昨今、この世界の実情がジェンダー問題の関係者に全然知られていないということは考えづらい。

2018-08-17 00:34:51
MarineGuards @ryu_halfspin

もう一つの可能性は、将棋界の「ジェンダーの壁」は別にあっても構わない、あるいは女性の政治家や会社役員を増やすことに比べれば重要性が低いと思われていることだ。ただ、ジェンダー問題の関係者で本当にそう思っている人はあまりいないような気がする。

2018-08-17 00:35:01
MarineGuards @ryu_halfspin

さらに別の可能性だが、実力主義の将棋界におけるあまりに露骨な「ジェンダーの壁」を、正面から指摘することに気後れが伴うのかもしれない。つまり、将棋界の「ジェンダーの壁」の克服が困難であることを自覚してしまうと、解決すべき問題として積極的に取り組む意欲を抱きづらくなるのかもしれない。

2018-08-17 00:35:12
MarineGuards @ryu_halfspin

また、残念ながら将棋界で活躍する女性たちを積極的に評価しない男性がある程度存在することも事実である。 この問題に取り組むということは、こうした男性たちの心ない言動により不快な思いをすることを覚悟しなくてはならないということでもある。

2018-08-17 00:35:23
MarineGuards @ryu_halfspin

要するに、この問題は直視するだけでもかなりの勇気を必要とするのだ。男女の平等、機会の均等が社会的正義とされればされるほど、それが実現していない分野は一種のタブーとなる恐れすらある。この事情は、フィクションの話であっても変わらないかもしれない。

2018-08-17 00:35:33
MarineGuards @ryu_halfspin

フィクションであっても将棋界の「ジェンダーの壁」を取り上げることは、現実社会の不都合な真実に抵触することになりかねない。 しかし現実世界の問題に目を向けさせる手段として、フィクションが重要な役割を果たしえることも事実だと思う。

2018-08-17 00:35:44
MarineGuards @ryu_halfspin

そこで、将棋を題材にしたフィクションの作品をいくつか取り上げ、そこで将棋界の「ジェンダーの壁」がどのように扱われているかを見てみたい。現実のジェンダーの壁を打ち破るためのヒントが、そこにあるかもしれない。

2018-08-17 00:35:52

3月のライオン

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MarineGuards @ryu_halfspin

3月のライオンはいわゆる中学生棋士を主人公にしていることで現実世界と比較されることも多い作品だ。この作品に女性棋士は登場しない。したがって作中世界でジェンダーの壁は克服されていないと思われる。

2018-08-17 00:36:27
MarineGuards @ryu_halfspin

それどころか、3月のライオンには女流棋士すらはっきりとは登場しない。NHK杯で聞き手をしていた女性は女流棋士かもしれないが、女流棋士の存在を明示する描写が一切ないことからすると、この作品が描いているのは女流棋士が制度として存在しない世界なのかと思わされる。

2018-08-17 00:36:36
MarineGuards @ryu_halfspin

プロ棋士への道が女性に閉ざされているというわけではない。それは、奨励会に所属していた幸田香子というキャラクターの存在から明らかだ。ただし、彼女は棋士を目指すことを主人公より才能が劣るという理不尽な理由で、父親に止めさせられるのだ。

2018-08-17 00:36:45
MarineGuards @ryu_halfspin

主人公より才能が劣るのが事実だとしても、当時の彼女はまだ年齢的にもプロを諦めるような段階にはなかったと思う。そうであれば、やはり彼女の父親が、女性がプロを目指すことを好まなかった、という可能性がどうしても思い浮かぶ。

2018-08-17 00:36:55
MarineGuards @ryu_halfspin

奨励会を止めた後、彼女が女流棋士になるという選択肢を考慮した形跡はない。やはり女流棋士はこの世界に存在しないのかもしれない。いずれにしろ、彼女なら、あるいは他の女性ならジェンダーの壁を乗り越えることはできたのか?という疑問の答えは扱われずにいる。

2018-08-17 00:37:08
MarineGuards @ryu_halfspin

女流棋士が出ないことがこの作品の欠点にはならないだろう。しかし、自身も女性である作者が、現実世界以上に女性を排除しているように見える将棋界を描いた理由には興味がある。

2018-08-17 00:37:18