[R-18]魔女シリーズ4~たたら場で使い潰されそうな少年を拾った女剣鬼がおもちゃにする話
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"魔女ヴィヴァリーチェと樹精のあいだに何かがあったことも説明がつく…我々神仙はまだ魔女からすべてを学びつくせていない…" 鏡のむこうの景色では、神鋼の甲冑でできた象があらわれる。上には櫓が立ち、神仙が乗って、雨あられと金属の矢を火蜥蜴に打ち込む。だが火蜥蜴は臆せず襲い掛かる。
2018-07-22 20:34:34金属の巨獣を引き裂き、防御の術ごと神仙を焼き尽したあと、火蜥蜴はさらに同胞の先に立って、進み、牙だらけのあぎとを開いて渦巻く灼熱の弾を発した。 "火妖にこのような力はななかったはずだ…先祖にはあったかもしれないが…だがこやつは突出していた" 弾が泡の幕をやぶり、砦をあらわにする。
2018-07-22 20:36:45砦からさらに多くの矢と投石がそそぎ、火蜥蜴は弾を吐き続けながら歩み続ける。 城壁はこの世のものならざる炎によって焼け砕け、崩れて、神仙を乗せた甲冑の巨鳥が舞い上がって、迎え撃つが、これも燃え落ちる。
2018-07-22 20:43:01血を流し続ける炎の化身がとうとう最後の守りを踏み越えたところで、砦からまばゆい閃光が発し、爆煙が茸のように立ち上り、あとには暗い穴だけが残った。 "あそこで百の神仙が死んだ。かつてない犠牲だった"
2018-07-22 20:44:51"こやつは、我々が護送していた魔女も奪い、さまざまな研究を妨げた…葬り去るために支払った対価も高くついた…我々は失った分を取り戻さねばならぬ" 神仙はまったく感情の抑揚を示さずに話し続ける。 "教えてくれ。ジャジィランテ。お前はあの火妖が特別だと分かって情をかけたのか。それとも"
2018-07-22 20:48:30低いうめきに気付いて神仙は管を引き抜かせる。 丹薬を吐き戻しながら、剣士だったものはうなだれた。 "気づいたのか…特別な火妖だと…だから" 「…だらないねえ…」 "そうなのか" 「くだらないねえ…あいつは…どのみち…死んでない」 "ヴィヴァリーチェと同じ譫妄状態か"
2018-07-22 20:51:21「あいつはグラウは…死んでない…あんたらは…残らず…あたしが…斬る」 "ヴィヴァリーチェも同じようにムンザという樹精の名を呼んだ…やはり同じだ。教えてくれ" 「斬る…覚えときな…」 "回答は難しいようだな。ではしばらくは命なき卵を産む役割を果たせ…半火妖として" もう一度頭をなでる。
2018-07-22 20:53:44覚え込ん習性で恍惚と涙を浮かべながら、またもぐりこんでくる管を噛みちぎろうとして果たせず、剛刃羅刹だった女はただうめいた。 神仙は静かに、魔女の檻をあとにすると、新たに浮かんだあまたの問いを反芻しながら、廊下を歩き去って行った。恐らくは永遠に答えを見出すこともかなわないまま。
2018-07-22 20:56:41