[R-18]魔女シリーズ終~転生したら全知全能の神仙ショタだったので魔女を家畜にハーレムでやりたい放題する話・前編

災いの子ムンリトと玄徹真君ヨーハン、暗行夜叉セーそのほかの物語。 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
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帽子男 @alkali_acid

とある理想郷の話をしよう。 はるか地上を離れた高み、大気と真空のあいだに浮かぶ、不思議の島だ。整然とした庭園や水路、手入れのゆきとどいた牧場や花畑、菜畑、果畑がどこまでも広がり、そこかしこに瀟洒な塔や円蓋、小邸が点々と散っている。

2018-08-25 15:51:09
帽子男 @alkali_acid

島全体を虹色にきらめく泡の幕がおおっていて、降り注ぐ厳しい陽射しなどから守っている。 ここは仙境。世界の統べ手にして真理の探り手である神仙の住まう場所だ。

2018-08-25 15:53:06
帽子男 @alkali_acid

神仙とは万能の丹薬を飲み続けて、不老長生になり、森羅万象を意のままにするがごとき功力を得た人々だ。 もともとは地上に城や砦を築き、栄華をきわめていた王侯や貴族だったが、東方と交易のため開いた“絹の道”から伝わった学問を修めるうち、雲上の暮らしを目指すようになったのだ。

2018-08-25 15:57:12
帽子男 @alkali_acid

神仙は永遠とも言える命をものにしてから、さまざまな雑念や煩悩をふりはらい、ひたすら方術をもって乾坤(けんこん)に隠れた秘密を解き明かす高邁なくわだてに奉仕してきた。 天文、地象、博物、計数、薬理、冶金、さまざまな分野で偉大な事績を残した。

2018-08-25 16:00:41
帽子男 @alkali_acid

方術を通わせて自在に操れる不壊の金属、“神鋼(かみはがね)” 天翔ける乗物“虹の浮橋(うきはし)” 星々のかなたまで旅する“空舟(うつほぶね)” 深夜を真昼の明るさで染めることもできる“太陽のかけら”

2018-08-25 16:07:34
帽子男 @alkali_acid

そのほかさまざまなすばらしい発明を、神仙は作り出し、磨き上げていった。 不可能はないかのようで、宙(そら)さえも征服できるかに思えた。 だがひとつだけ、ごくささいな、しかし悩ましい問題があった。

2018-08-25 16:10:02
帽子男 @alkali_acid

不老長生をもたらす丹薬の材料は人間だった。

2018-08-25 16:10:19
帽子男 @alkali_acid

といっても常人ではない。尖った耳や尾、毛皮を持つ獣人でもない。 樹精、海霊、火妖、風魔という強大な異種族で、それぞれが神仙の支配に激しく抗った。ゆえに戦乱が起き、あまたの血が流れた。

2018-08-25 16:12:33
帽子男 @alkali_acid

いつはてるともない干戈(かんか)のきらめきと鯨波(とき)のこだまのはてに、やっとまつろわぬ民を平定し、それぞれを役割別に食用人種、労役人種、戦闘人種として分け、牧場で飼いならせるようになったころには、さしもの神仙も倦(う)み疲れ、全盛の時代は過ぎようとしていた。

2018-08-25 16:17:31
帽子男 @alkali_acid

しかし、なお大気と真空のはざまに浮かぶ仙境の庭園は整然と手入れがゆきとどき、水路には清らかな流れがめぐり、住むものは心静かに、学芸の深遠に思いをはせる余地があった。 かくして、地上では神仙の暮らしにあこがれ、神仙になりたいと願うものは数え切れなかった。

2018-08-25 16:20:21
帽子男 @alkali_acid

むろん威勢が衰えつあり、食用人種の牧場が一つまた一つと失われ、丹薬が不足しがちな今となっては、神仙も新たな同胞を増やすのに、あまり熱心ではなかったが、ともかく、ここにも一人、登仙(とうせん)の道を求めて仙境を訪れた俊秀がいた。見た目はずいぶん幼げだが、とても利発な目をしていた。

2018-08-25 16:23:27
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 壁も天井も見えない、だだ広い円形の部屋に、きらめく影が三つ並んで座り、ひとりの少年と向き合っている。静かで、穏やかなたたずまいだった。 影のひとつが話しかける。 “それでは、神仙を志望する動機を述べるがよい” 「はい」 あどけないおもざしが、淡くほほえんで答える。

2018-08-25 16:26:16
帽子男 @alkali_acid

「僕は、神仙の皆さんの牧場のひとつで育ったのですが、そのころから神仙の暮らしには興味がありました」 “牧童だったということか” 「いえ、家畜でした」 沈黙が訪れる。

2018-08-25 16:27:35
帽子男 @alkali_acid

“確かにお前は家畜つまり食用人種の一種、樹精に見える” 「そうですね」 少年はあっさり同意した。蔦の髪と緑がかった肌、かすかにただよう花の香は、間違いなく、神仙が不老長生の薬の材料として珍重する人参樹(にんじんじゅ)、樹人あるいは樹精の特徴を備えている。 “家畜が牧場主になりたいと”

2018-08-25 16:29:47
帽子男 @alkali_acid

「はい」 “食用人種にとっては、何よりも聖餐(せいさん)の生贄となるのが名誉ではないか” 「たしかにそういう考えもあると思います」 やりとりのあと、神仙と樹精の仔は無言で見つめ合った。

2018-08-25 16:33:21
帽子男 @alkali_acid

あまりにもおっとりした男児の面持ちに、きらめく影の方が耐えられなくなったかのごとくまた口を開いた。 “願書によれば…お前はいちど家畜として出荷が済み、すでに聖餐の生贄となったとある” 「はい」 “しかしその場で牧場主である神仙を殺害したとも” 「はい」 “それだけではなく…”

2018-08-25 16:34:43
帽子男 @alkali_acid

世界の統べ手はかすかに動揺を示すように左右にゆらめいた。 “神仙のむくろを食べたと” 「厳密には、神仙の方のなきがらから育てた果実を食べました。仙桃と呼んでいます」 “…それによって神仙の力を得たと” 「その可能性はあると思います」 “なぜそんなことを” 「興味があったので」

2018-08-25 16:36:37
帽子男 @alkali_acid

“興味とは” 「神仙の方のなきがらから育てた果実はどんな味や滋養があるか知りたいと思いました」 “…お前が殺害したのは、理覚真人。我等の第一世代にあたる古株で、神仙の未来のため、秘密の牧場を経営する危険なつとめに志願してあたっていた。そう聞いて何か感じないか” 「とてもお気の毒です」

2018-08-25 16:39:22
帽子男 @alkali_acid

間があった。 “なるほど。お前は神仙にふわさしい冷静さを備えてはいる。だがこれまで食用人種が神仙になったためしはない” 「一番乗りということですね。とても楽しみです」 “…我等が同胞を殺害したお前を許し、仲間に加えると思うか” 「はい」 またしばらく会話が途切れる。

2018-08-25 16:42:18
帽子男 @alkali_acid

“なぜそう思うのだ” 「なんとなく」 “なんとなく…” 「なんとなく」 きらめく影の群ははげしくぶれ、明滅していた。心に波風が立ちにくい種族にしては珍しかった。 「皆さん。ほかに何かあれば、どうぞおたずねください」 少年は丁寧に申し出る。

2018-08-25 16:45:03
帽子男 @alkali_acid

すると男児からむかって右のきらめく影が、遠い昔から伝わる問いかけを思い出したかのように発した。 “今日はどうやってここへ来ましたか” すると神仙志望は待っていたというようににっこりした。 「きっかけは神仙の皆さんのお仲間である暗行夜叉(あんぎょうやしゃ)にお会いしたことでした…」

2018-08-25 16:48:00
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 「暗行夜叉、神仙どもの奇襲隊のうち最もてごわい精鋭だ。得体の知れぬ技と力を操り、実は神仙ではないといううわささえある」 金色(こんじき)をした四枚の翼を持つ種族、風魔の男が、子供達を前に教えていた。 「魔女の森への旅は常に、こやつらを警戒せねばならない」

2018-08-25 16:50:48
帽子男 @alkali_acid

「奇襲隊ってなに?」 同じく小さな山吹の翼を持つ風魔の少女が尋ねる。 「神仙の根城である仙境を離れて、風魔や火妖、海霊や樹精のなわばりに潜りこみ、拉致や暗殺を試みる一団だ」

2018-08-25 16:55:01
帽子男 @alkali_acid

「かつてはわしらの側が奇襲隊を組織して、神仙の牧場を襲い、家畜にされた火妖、風魔、海霊や樹精を解き放っていたがな。時代は変わり、立場は逆になったというわけよ」 白髪の翁が後を引き取る。こちらは翼も鱗も牙もない常人だ。 「だが案ずるな。暗行夜叉は日があるうちは襲ってこん」

2018-08-25 16:56:49
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