[R-18]魔女シリーズ終~転生したら全知全能の神仙ショタだったので魔女を家畜にハーレムでやりたい放題する話・前編

災いの子ムンリトと玄徹真君ヨーハン、暗行夜叉セーそのほかの物語。 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
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帽子男 @alkali_acid

「襲ってきたら俺達がやっつけてやる!」 「そうだよ!」 透き通った青い肌を持つ海霊の男児と、真紅の鱗を持つ火妖の男児が相次いで息巻く。すると背後から、とがった耳と長い鼻面を持つ戎牙すなわち獣人の女がたしなめた。 「サルウ、シュトイ、神仙を侮るな。戦うのはおとなに任せるんだ」

2018-08-25 17:00:17
帽子男 @alkali_acid

「ふん…神仙の家畜だったものたちが思い上がるな」 純白の肌に氷の結晶を花のように咲かせた少年が口をはさむと、ちらりと毛むくじゃらの雌に視線を投げる。 「だがカズサ。そなたは余が守ってやる。冬鬼の族長ハヴァフの名にかけて」 「ハヴァフ!なまいきだぞ!」 「かっこつけんな!」

2018-08-25 17:02:20
帽子男 @alkali_acid

子供達が喚き合いをはじめるのに、やれやれと首を振った翁はふと、輪から外れて話に耳を傾けているもう一人を見やって、尋ねた。 「ムンリトといったな。あんたの考えはどうだ」 「気をつけていきます」 蔦の髪に緑がかった肌の年長の子はあっさり答えた。

2018-08-25 17:04:44
帽子男 @alkali_acid

だしぬけに翼ある娘ウィリンカがくすくす笑った。 涼しい風が吹き抜けて、言い争いがやむ。 あたりは雪の野のただなかにぽつんと、みずみずしい牧草が生えそろう原っぱで、多種多様な種族の大人と子供が昼餉の豆餅をかじりながら話し合っているところだった。

2018-08-25 17:08:49
帽子男 @alkali_acid

老爺は長い鼻息をすると、あぐらを解いて、ムンリトのそばへ歩み寄り、声を落として尋ねた。 「ムンリト。あんたは、この神仙の牧場で食用人種として飼われていた子供達のまとめ役だ。あんたが行くと言えば、みんな行く」 「そうでもないと思います」 「ふうむ」

2018-08-25 17:10:57
帽子男 @alkali_acid

「だが分からんのは、これまで何度、大人が子供達を連れ戻しに訪れても動こうとしなかったな。だが今度はどうして、うんと答えた」 「なんとなく」 「なんとなく、か」 翁は目を細めた。 「お前さんは、わしの知ってる誰かに似とる。だが思い出せん…年かの」 「気にすることありません」

2018-08-25 17:13:33
帽子男 @alkali_acid

少年は口元をほころばせた。 「僕も、思い出せないことが色々あります」 「思い出せないこと?」 「きっと思い出さない方がいいことです。でも今は、なんとなく、皆さんと一緒に行った方がよい気がします」 「そうかね。なあムンリト。あんたにどうしても会ってもらいたい人がいるんだがね」 「はい」

2018-08-25 17:15:23
帽子男 @alkali_acid

年寄りは泰然とした童児に気おされつつ、また言葉をつむぐ。 「わしらの女王に」 「女王様ですか」 「そうだ。森の后ヴィヴィの孫、森の姫ヴェヴェの娘、わしらの最後の望みの子、森の女王リリに」 「かわいらしいお名前ですね」 「きっとあんたも気に入る」

2018-08-25 17:18:53
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 雪の野のはずれまでは、氷と寒さをしもべとする冬鬼の族長、ハヴァフが作り出した氷柱(つらら)の大百足(むかで)を乗物にして進んだ。 糧食は樹精のムンリトが作った赤、青、黄、緑といったいろとりどりの豆餅で、それぞれ香りや味が異なり、ひとかけで満腹する。

2018-08-25 17:20:56
帽子男 @alkali_acid

護衛の風魔、忍軍(しのびいくさ)ともいう精鋭の戦士達は、常に周囲を飛んで警戒をおこたらなかったが、魔女の森からの使いという常人の年寄りだけは子供達と一緒にいて、絶えず皆が退屈しないよう物語をつむいだ。 「その時、赤烈火の炎がごうと吹いてな。神仙の鋼の兵どもは溶け崩れたのよ」

2018-08-25 17:22:32
帽子男 @alkali_acid

「すごいや!やっぱり赤烈火のグラウは一番強いや!」 火妖の子サルウは鼻から火の息をもらしながらはしゃぐ。横で海霊の子シュトイがむすっとして相棒の尻を掴む。 「ひゃぅっ」 「サルウうるさいったら」 「いいだろ…んっ」 青の少年が赤の少年を引き戻して後ろから抱き着き、おとなしくさせる。

2018-08-25 17:24:38
帽子男 @alkali_acid

風魔の子ウィリンカは幼馴染二人を見比べて、ちょっと鼻をつんと上げると、守役である戎牙の女カズサの膝にのぼり、四つある乳房に頭をうずめた。 「ねえおじいさん。次は黒旋風ハインの話をして。ハインが森中の白羽草をの花を風に踊らせて、王様の誕生日を祝ったお話」 「ほほ、よく覚えとる」

2018-08-25 17:27:15
帽子男 @alkali_acid

「黒旋風は口こそ悪いが気のいいやつでな。緑深森のムンザ王によくなついておった。ボケオヤジなんぞと呼んでおったが。もちろん赤烈火とも親友というのかな。そのくせバカガキと…おっとあんた達に聞かせる言葉じゃないな」

2018-08-25 17:29:16
帽子男 @alkali_acid

「いい!いいからお話して」 「ハインは、仕えるムンザ王よりも強い王になるなどと野心を抱いておったが、その理由というのが、おかしくてな。ボケオヤジは王には向いてない。おひとよしが過ぎる、俺が王になればさっさと退位させるだのと…ふふ」 「海霊は!」 シュトイががまんできず嘴を入れる。

2018-08-25 17:32:17
帽子男 @alkali_acid

「海霊にもすごい英雄がいたんでしょ!」 氷を溶かし、水のしぶきを作りながら訴える。翁はうなずいた。 「おおいたとも…英雄というか…ちと恐ろしい方が、青海嘯のヘドローバ…かつてはウムナーハとおっしゃったが…」 「どんなひと?」 「わしもじゅうぶん詳しくはないが」

2018-08-25 17:34:51
帽子男 @alkali_acid

「海はひろい。陸の何倍も広い、その一部だけでも陸の何倍もの種族がひしめいておる。五十七州に分かれた浅海(あさみ)と深海(ふかみ)では争いが絶えなかったが、青海嘯という女帝は武威と智謀をもってことごとくを征服し、和をもたらした」

2018-08-25 17:36:23
帽子男 @alkali_acid

「海霊のどんな男よりも丈高く、蒼玉のごとくきらめく肌に、深淵の双眸、恋する男や女は種族を問わず数知れなかったが、怒りに触れれば命はないとあって、うかつに慕わしい言葉もかけられぬ。とはいえ、かの女(ひと)の覇気のおかげで天に住む神仙さえ海霊の領域にはながらく近づけなかったが」

2018-08-25 17:39:39
帽子男 @alkali_acid

「どうせ冬鬼の物語はない。中原のものどもは余らを軽んじているからな」 冬鬼のハヴァフはむっつりしている。翁は頭をかいた。 「すまんな。では、ぜひ聞かせてくれんか。わしら喫菜(きっさい)は物語を好む。北の果ての白き地を駆ける民のいさおしも伝えよう」 「…よ、よかろう。余等冬鬼は…」

2018-08-25 17:42:18
帽子男 @alkali_acid

まとめ役である樹精の仔ムンリトはといえば、氷柱の大百足の尻尾に、器用に座ったまま、聞こえてくるおしゃべりに耳を傾けつつも一言も発さず、ただにこにこしていた。 カズサはウィリンカを抱いたままそちらを一瞥する。

2018-08-25 17:45:51
帽子男 @alkali_acid

「カズサ…ムンリトが気になる?」 胸にしがみついた鳥人の娘が尋ねると、獣人の女は応じた。 「全員に眼を配るのが牧童のつとめだ」 「うん…」 「ウィリンカ。まだムンリトが怖いか?」 「うん…でも前とは別の怖さ…」 「どんな怖さだ」 「今は、ムンリトがどこかへ行っちゃいそうで…怖い…」

2018-08-25 17:47:15
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 雪の野が終わると、一行は飛翔と疾走に切り替えて行程を進めた。 喫菜という翁は風魔が運び、ほかはそれぞれ常人離れした速さで駆けられたので、一日に何十里も進む。休息はそこかしこにある森でとった。 「暗行夜叉は襲ってこぬな」 「奴等は森を恐れる。森の巨人には奴等の力が通じぬ故」

2018-08-25 17:50:10
帽子男 @alkali_acid

木々のあいだには土と石でできた人型がさまよっており、野営する一行を遠巻きに守るようなそぶりをする。 「…じいちゃん!今日は新しい物語してよ」 子供等ははしゃぐ。翁は破顔した。 「そうか…では森の女王リリの話をしよう」

2018-08-25 17:51:44
帽子男 @alkali_acid

あぐらをかいた老爺は森の薬葉茶を竹筒から飲むと、幼い聴衆に話しだした。 「森の女王リリは、森の姫ヴェヴェとその夫である紫電改のロックのあいだに生まれた」 すぐ茶々が入る。 「知ってる!雷を落とすでっかい髭の!」 「ござる!ござる!ぬん!ぬん!」 「きゃはは」

2018-08-25 17:54:28
帽子男 @alkali_acid

「さようさよう魔女の森の三番目の将軍。ちょっとぬけたところはあったが、きのいいやつだった。なにより姫君にぞっこんでな。ま、今日はその二人の話ではなく、娘のことだ。森の女王リリは、はじめ種のすがたで生まれてきた」

2018-08-25 17:56:23
帽子男 @alkali_acid

「種ぇ?」 サルウが緋の尻尾をふりながらふしぎそうな声をあげる。喫菜の年寄りはうなずいた。 「樹精の…先祖返りの血が強い子にはときどきある。はじめは死んで生まれたかと思われるほどしずかだった。だが森の戦場跡に埋もれた甲冑の、鋼鉄でできた籠手を鉢がわりに…いや揺り籠がわりに芽吹き」

2018-08-25 17:58:51
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