[R-18]魔女シリーズ終~転生したら全知全能の神仙ショタだったので魔女を家畜にハーレムでやりたい放題する話・前編

災いの子ムンリトと玄徹真君ヨーハン、暗行夜叉セーそのほかの物語。 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
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帽子男 @alkali_acid

「すくすくと成長して、かわいらしい女の子になった。常人でいえば一歳ぐらいの年でもう立って歩くことができ、言葉を知り、森の奥にある文庫…ふるい考えをとどめた場所にあるさまざまなくさぐさを読み解いた」

2018-08-25 18:00:17
帽子男 @alkali_acid

「母や祖母や祖父が残した術や、わしら喫菜の学、父の武芸やからくりに関する操法まで、育ち盛りの苗木がぐんぐんと養分を吸うように覚えていき、常人で言えば三つになるころには、すべてを修めていた」 「すごいや」 「きれいなひとだったの?」 シュトイとウィリンカがそれぞれ反応する。

2018-08-25 18:02:14
帽子男 @alkali_acid

「美しかった。三つですでに常人の子供を産める年頃の女と変わらぬ容姿をしていて、男も…女も、恋をする年頃なら惹きつけられずにはいなかった。森の后ヴィヴィや、森の姫ヴェヴェも麗しい方々だったが、女王リリのそれはこの世のものとも思われず…まさに…魔女そのものだった」

2018-08-25 18:03:58
帽子男 @alkali_acid

「女王リリは、なお地上への欲を捨てきれぬ神仙を阻み、森そのものを歩哨として侵略を防いだ。だが慢心はせず文庫にも足しげく通い、さらなる研鑽に励んだ…そしてある日…」 少年少女が首を伸ばして聞き入る。翁はやや言葉に詰まった。 「何かが起きた」 「何が?」 「分からん…」

2018-08-25 18:06:55
帽子男 @alkali_acid

喫菜の老爺は首を振った。 「文庫から三日も戻らなかったので、邪魔をしてはよくないと思いつつも、わしがようすを見に行くと、女王リリは大きな琥珀(こはく)に包まれていた」 「神仙にやられたの!?」 「そうではないだろう。琥珀の色は暗く、中ははっきりと見えなかったが…」

2018-08-25 18:08:55
帽子男 @alkali_acid

「女王は眠りについているようだった。死んではおらん。石と土の巨人は相変わらず動きまわり、忍び山猫や疾風鷲や、蛇魚は見張りを続けた。だが…どうやってもリリは目覚めんのだ」 「ふうん…」 「ふしぎな話」 「ちょっと怖い」

2018-08-25 18:10:33
帽子男 @alkali_acid

翁は笑った。 「そこでな。古い物語の則(のり)にしたがって、女王の眠りを覚ましてくれる王子があらわれぬかと、わしは願っておるのよ」 「俺!俺がやる!」 火妖のサルウがわめくと、海霊のシュトイがまた尻をつねる。 「んひ!?」 「ばか」 「なんだよもぉ」

2018-08-25 18:11:49
帽子男 @alkali_acid

風魔のウィリンカが尋ねる。 「王子様じゃなきゃだめ?私みたいな女の子は?」 「おお、お姫様も歓迎だとも」 「冬鬼はどうだ」 冬鬼ハヴァフも訊く。 「けっこうけっこう。皆で女王の眠りを覚ますよう助けてくれんか」

2018-08-25 18:12:54
帽子男 @alkali_acid

老爺はふと、樹精のムンリトへも水を向ける。 「あんたはどうかな」 少年はにこやかに返事をする。 「そうですね。僕もやってみます…でも」

2018-08-25 18:14:42
帽子男 @alkali_acid

「その人は目覚めたがっているんでしょうか?」

2018-08-25 18:15:05
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 暗行夜叉が襲ってきたのは、魔女の森のなわばりまであと十里というところだった。 大地が揺れ、野営した森の木々が突然ばたばたと倒れてゆき、螺旋の錐(きり)とも衝角(しょうかく)ともつかない神鋼の巨頭が足元からあらわれたのだ。 地中をゆく船、とでもいうべきか。

2018-08-25 18:17:55
帽子男 @alkali_acid

円錐つきの乗物の側面が開くと、無数の翼ある影が飛び出した。蝙蝠の翼を持つものもいれば、四枚の鳥の翼を持つ風魔そっくりのものもいたが、みな灰色の肌をしていた。といって恐ろしい速さで滑空し、宵闇にまぎれて、はっきりととらえられはしない。

2018-08-25 18:20:05
帽子男 @alkali_acid

「暗行夜叉だ!子供等を守れ!」 風魔忍軍が、気流の渦を刃と変えて応戦する。森の巨人も石の拳を振り回した。 「…まずい…この数は…いかん!噛まれるな!!」 翁が叫ぶ。

2018-08-25 18:21:31
帽子男 @alkali_acid

ひとりの風魔が絶叫をあげる。敵が組みつき、喉に牙を立てたらしい。しばらく宙でもがいたあと、戦士は無惨に地に落ちた。 「おじさん!」 ウィリンカが手当に駆け寄ろうとするのを、カズサが掴んでとめる。 「何かおかしい…」

2018-08-25 18:22:49
帽子男 @alkali_acid

美しい黄金の羽毛がみるみる灰色に変わり、肌も血の気を失うと、死せる風魔は起き上がり、常人には聞こえぬ甲高い声を発して、少年少女に飛び掛かった。 「な…」 あっけにとられる子供等に、風魔だったものはまったくためらいもなく牙を剥いた。

2018-08-25 18:25:11
帽子男 @alkali_acid

あと一歩というところで、戦士のなれのはてを氷柱が貫き釘付けにする。 「愚かものども!」 冬鬼のハヴァフが吠え、皆が我に返って構えをとった。 「どうするムンリト」 カズサが神鋼のつけ爪を出しつつ問う。

2018-08-25 18:27:28
帽子男 @alkali_acid

「逃げましょう。あちらへ」 蔦の髪を持つ少年が指さすかたに、森の巨人が集まりつつある。 「たぶん、あの大きい方々は噛まれてもへいきそうです」 「分かった。いくぞ皆こっちだ!」 獣人が駆けだすと、子供等は一斉についていく。サルウとシュトイは老爺を挟んで飛ぶ。

2018-08-25 18:29:22
帽子男 @alkali_acid

「ムンリト!なにをしている!」 氷柱の槍を次々に放ち、しんがりを守りながらハヴァフが叫ぶ。 ひとり立ち止まったムンリトはにっこりして手を振った。 「あ、僕は神仙にくだるので気にしないでください」 「何を言ってる!?」 「裏切るということです」 「貴様!」

2018-08-25 18:31:12
帽子男 @alkali_acid

樹精の少年が裸足で地面を踏み踏みすると、根が飛び出して、冬鬼の仔の腰に巻き付き、勢いよく放り投げた。 「おのれえええ!!!!」 遠ざかっていく叫びをあとに、戦場を見渡すと、同様に隙をついて風魔の戦士を枝や蔦を伸ばしてとらえ、ぽいぽいと擲(なげう)つ。

2018-08-25 18:32:55
帽子男 @alkali_acid

「樹精の仔!なにを!」 「よせ!」 「すいません。迷っているうちに無駄な犠牲を出してしまって。もっと早くこうしていればよかったですね」 謝りながら、残らず石と土の巨人の群に風魔を叩き込むと、少年はすたすたと神仙の乗物に近づいていく。

2018-08-25 18:34:33
帽子男 @alkali_acid

「こんにちわ。僕はムンリトと言います。降参します」

2018-08-25 18:35:26
帽子男 @alkali_acid

円錐つきの地中船から、指揮役とおぼしき影があらわれる。長い髭を生やした整った縹緻(きりょう)の男だった。やはり灰色の肌をしているが、どこかほかと違う。 「ほう。面白いことを言うね。食用人種のわりには素直ではないか」 「はい」 「わがはいが、応じるとでも」 「はい」 「なぜそう思う」

2018-08-25 18:37:22
帽子男 @alkali_acid

「なんとなく」 「なんとなく、ね」 血を吸う牙をのぞかせながら、神仙の尖兵、かつての尚武(しょうぶ)の民たる暗行夜叉セーは笑った。 「後悔することにならないといいがね」

2018-08-25 18:38:55
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 帰途につく地中船の中で、暗行夜叉は爪の手入れをしながら主たる神仙と交信していた。 “家畜を取り逃がしたな” 「捕えたとも。一匹。諸君の欲しがりそうなものを」 “すべて捕えよと命じたはずだ” 「魔女の森の深部に突撃してかね。相変わらずわがはいを始末したくてたまらないようだね」

2018-08-25 18:41:19
帽子男 @alkali_acid

“無用な憶測だ” 「そうかね…だがこいつは…上物だ…良質な血の匂いがする…そう、魔女の香りが混じっているな。ところで次はいつ吸わせてもらえるかね。そう。やはりヴィヴィのがよい」 “狄蝙(てきへん)の吸血衝動に侵されたお前の願望は考慮に値しない”

2018-08-25 18:43:39
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