「日本海軍の対潜水艦戦」抄読

同志雪の人さんによる、吉田昭彦「日本海軍の対潜水艦戦」の紹介です。
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同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

こうなった原因には、船体からの雑音レベルの高さがあげられている。 アクティブソーナーで目標を探知しようとすれば、目標に音響エネルギーを照射し、雑音の中から反射波を見つけ出す必要がある。

2017-06-18 00:07:09
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

その為には可能な限り大勢力の音響エネルギーを発射し、雑音に埋もれないより大きな反射波を得ると同時に、最大の雑音源である自艦の雑音レベルを低減する必要がある。 これは車の両輪のようなもので、どちらを欠いても目的を成すのに差し障る。

2017-06-18 00:09:40
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

しかし日本海軍には、この二つの努力を同時にこなす着意がなかった。 どころか技術士官のあまりの保守性により、軽んじられることさえあった。例えばソーナーをキール線上に整流覆いと共に配置すれば、雑音レベルは大きく改善する見込みがあったが、船体縦強度が落ちるとして、頑として認めなかった。

2017-06-18 00:17:38
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

まあ船体強度に対する異常なこだわりは、事情を察しないでもない。第4艦隊事件とか。 とは言え結果としてそれは、ソーナーシステムの根幹要素の片輪を奪い、ひいては日本海軍全体から対潜捜索能力を奪うこととなった。余りにも本末転倒ではないか。

2017-06-18 00:28:03
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

因みに日本海軍の水中捜索手段は、水中探信儀と水中聴音器の二本柱。これには最後までこだわった。アクティブソーナーですら運用に差し障る雑音下で、比較して極めて静かな潜水艦の探知に、パッシブソーナーがどれほどの効果をもたらすかは不明だが、こだわった。

2017-06-18 00:38:28
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

筆者には「これによる探知は絶対にありえない」「重大な誤認識」となかなか酷評されてるが…まあ確かに、潜水艦側からならともかく、水上艦からじゃ使える状況がかなり限定されるけども、そこまで言わんでも……。

2017-06-18 00:46:02
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ソナーシステムの次にひどかったのがレーダーシステムで、性能の低さもさることながら、載せるものがないのが全くないというのがもうどうしようもない。 45年に配備された対潜哨戒機ですら、機上レーダーが対空しかないから対空レーダーを積んでると言った有様で、電子技術レベルの低さを痛感する。

2017-06-18 01:20:41
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

この対空レーダー、3式空6号電探は今日使われる上等な代物とは全く比較にならないもので、波長が長く浮上潜水艦の探知も困難な、航空目標しか捜索出来ない様な代物だった。ゆえに対空レーダー。 航法には使えるかもしれないが、対潜哨戒なんて思いもよらない。

2017-06-18 01:28:55
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

筆者はこれを搭載したことを基本的認識の誤りとしたけども、そりゃああんまりじゃないか。 他にないじゃん、というより、他で対空警戒や航法の為に使ってたから辛うじてあったような代物じゃんか。望まれていた新型電探の開発間に合わず搭載したというし、着意自体はあったと見るべきではなかろうか。

2017-06-18 01:34:50
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

でも対潜装備枠で搭載してる雰囲気あるし、区別ついていなかったという説も否定しきれない。

2017-06-18 01:36:43
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

筆者は2号2型電探を機上レーダーとすればよかったろうとおっしゃるが、出来たらやっていたのだろうなと言った具合。小型化か電源まわりの問題が解決できなかったんだろなって。 2号2型電探の能力に5000mで潜望鏡を発見できるとあるから、これを対潜警戒に使う着意もあっただろう。多分。

2017-06-18 01:42:24
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

対潜作戦において機上対潜レーダーが存在しないことは致命的で、米潜水艦の跳梁を防ぐことを不可能とした。 艦上型があるからそれでいいと言うわけではない。航空機が高速で広範囲をカバーし、水上艦の居ない場所での活動を制圧するからこそ意味がある。

2017-06-18 01:56:52
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

船団を直衛で固めれば、遠方の潜水艦の活動などどうでも良いと思われるかもしれないが、そうでもない。 航空制圧がなければ潜水艦は思う存分充電し、新鮮な空気をたっぷり吸って、好きな位置、タイミングで襲撃できてしまう。 これではいくら守りを固めても、相応に被害が出る。

2017-06-18 02:08:25
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

番犬は襲撃を断念させれば勝利だが、番犬だけでは襲撃を断念させることは叶わない。 故にこそ米英は大西洋の空を哨戒機で埋めつくし、Uボートから息つく暇すら奪い去った。 しかし米英の生産力をもってすら、レーダーなくしては大西洋の空を埋めつくすなんて不可能だ。ましてや日本では……。

2017-06-18 02:18:17
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

だからと言って、航空制圧に注力して直衛を疎かにして良いと言う訳でもない。 これもまた、両輪なのだ。どちらがかけても、対潜作戦は成り立たない。 しかしこの両輪は、どちらも欠けていた。

2017-06-18 02:21:46
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

この両輪の欠落は雪だるま式に問題を生起させる。 航空制圧が出来ないから、艦艇を繰り出すしかない。どこから? 直衛から。おかげで船団直衛艦は(効果の程は別として)目的外用途で走り回る羽目になった。

2017-06-18 03:18:48
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

公刊戦史において船団護衛部隊関係者の回想では海防艦の速力の不足を訴えていることが多いが、最大速力17~19ノットは米英のフリーゲートと比較しても別だん劣るものではない。

2017-06-18 03:18:55
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

機上レーダーの欠落からの航空制圧の不能は海防艦の目的外使用を強いた。ではソーナーシステムの劣弱は? 少なくとも対潜戦における、護衛船団方式の効果をほぼ完全に奪い去った。効果を奪ったというか、効果を得る機会を奪った。

2017-06-18 03:39:40
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

魚雷が魔法のステッキでない以上、その運用には制限が生まれる。信管によっては撃ちこむ角度次第で機能しないこともあるし、目標の進路と直行するように撃ちこまないと命中率が期待できないこともある。もちろん射程の問題も。 360°好きな方向から好きなように撃ちこめるわけではない。

2017-06-18 03:48:27
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ドイツの魚雷はほぼその制限から解き放たれて、自在に針路を曲げるわジグザグ走行するわ外れても帰ってくるわあげく音響誘導までしてくるが、相手はアメリカである。音響誘導どころかパターン航走すら実戦には出てこない。 直進しかないので、当然攻撃時に占位しなければならない位置は限られてくる。

2017-06-18 03:55:45
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

その限られた範囲の上に護衛艦を置いておけば、潜水艦は攻撃を企図しようにも途上で護衛艦に捕捉されてしまう。 そしてその範囲は、1隻の独航船でも数十隻の船団でもあまり変わらない。故に船団にまとめれば効率よく、多数の船舶を護ることができるというわけ。

2017-06-18 04:05:02
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

しかしこれは水中捜索能力の存在が前提になっている。分厚い海水のヴェールを見通せない日本海軍は、何のために船団を組むのか、どのような結果を期待して直衛艦を配置するのか迷うことになる。 これでは船団に護衛を付けても、付き添い以上の効果がない。

2017-06-18 04:23:02
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

日本海軍の唯一取りえた戦法は、最適魚雷発射点と思われる場所に直衛艦を配置しておき、潜望鏡か魚雷発射時の気泡を見つけるかという、非体系的、非組織的な手法のみであり、いかなる戦術場面においても始終これに頼るほかなかった。

2017-06-18 04:30:46
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

米英海軍のように魚雷発射可能圏を意味する「雷撃危険帯」と、持続潜航近接可能範囲を意味する「接近限度線」の二概念を持ってソーナー阻止線を形成するなど、数理に基づいた戦法など思いつきもしなかった。

2017-06-18 04:35:20
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「米英の船団護衛部隊は羊を守る番犬」 「日本は?」 「園児に付き添う保母さん」 酷い言われようだけども、実際付き添う以上に出来ることなんてなかった日本海軍船団護衛部隊。その根底的理由は、水中捜索武器の劣弱にあったと言える。

2017-06-21 18:46:46