「フラグメンツ・オブ・エピック:ディープ・オーダー」「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#2

深海騎士団叙事詩断片第2章 死神VS虐げられしものたちの王 そして世界観設定の話
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「どうやら、お互い『不幸な行き違い』があったみてぇだな…まずは状況を整理させて欲しい。実はお互い、戦う必要が無いんじゃないか」「………」ライオンハートは苦虫を噛み潰したような顔でリカルドを見た。青い目同士の睨み合いが暫く続いた。やがて、ライオンハートは剣を納めた。 25

2018-08-24 23:47:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、剣呑な空気を吐き出しながら言った。「彼女を離せ。話はそれからだ」「無論だ」リカルドはあっさりと手を離し、後ろに下がった。ナバルはウサギめいて駆け、ライオンハートの背後に隠れた。リカルドは吹雪に歩み寄り、その頭を叩いた。「痛ッ」「この野郎、話をややこしくしやがって」 26

2018-08-24 23:50:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やがて4人の海の戦士たちは睨み合い、油断なく近付きながら円陣を組んで座り込んだ。リカルドはポーチからウィスキー瓶を取り出して言って。「で、誰から話す?」「じゃあ、私から」そう言っておずおずと手を挙げたのはナバルだ。 27

2018-08-24 23:59:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

残る3人の視線がナバルへと向けられた。「そ、そうやって見つめられるのは…なんか照れるな…」ナバルは人差し指を突き合わせて顔を赤らめた。「………乙女だ」「ア?何だって?」「………いや、何でもない」「は、話していい?」「いつでもいいぞ」 28

2018-08-25 00:04:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ええと…」ナバルは呼吸を整え、そして語りだした。「私は、何て言えばいいんだろう。気が付いたら此処にいたんだ」「気が付いたら…?」「成程」ライオンハートが頷いた。「自我を得てから日が浅いという事か」「そうなるのかな…?お日様が昇るのは30回くらいは見てるけど」 29

2018-08-25 00:07:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「で、暫くは何も分からなくてただぼんやりとしながら暮らしてたんだけど…」ナバルは懐かしむように、慈しむように思い出しながら言った。「ある日、海の底であの子に出会ったの」「あの子…」「さっきから言ってましたね」「あの子とは、一体?」「さぁ、私にはわからないわ」「「「えっ」」」 30

2018-08-25 00:13:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だってあの子は怖がってて、誰にも語り掛けてくれないんですもの」「語り掛ける…?そいつは喋るのか?」「んー…私、喋らない子たちの言葉が分かるの」ナバルは頭を捻りながら答えた。「お魚さんとか、鳥さんとか、そう言う言葉を喋らない子たちの言いたいことが、私には分かるの」 31

2018-08-25 00:19:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「精神感応のジツでしょうか…?」「さぁな…で、その子は白くて大きいのか?」「ええ。青い光を帯びていて綺麗で…何より力強いの」ナバルは興奮気味に語り出す。「私は、あの子に憧れたわ。こんな朧げな私と比べて、何てハッキリとしていて力強いのかしらって」 32

2018-08-25 00:22:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それで、少しでもあの子みたいになりたいなぁって思って、まず姿形から真似っこしてみたの」「ふぅん…」「相当綺麗なんでしょうね…」「……だけど」ナバルは顔を曇らせ、俯いて言った。「最近、あの子を付け狙う奴らがいるの」「悪い奴ら…?」「そいつの親玉はネクロマンサーって名乗ったわ」 33

2018-08-25 00:26:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あいつらはあの子に魚雷を撃ち込んだり…私も抵抗したんだけど、気が付いたらあの子と離れ離れに…今頃あの子が酷い目に遭っていないか…本当に心配で……」ナバルは顔を覆い、泣き出した。ライオンハートが無言でその背を叩いた。吹雪は沈痛な面持ちで黙り込んだ。 34

2018-08-25 00:32:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「私は、彼女になんてことを…」吹雪がやっと捻り出した言葉を聞きながら、ライオンハートを見た。「あんたは、どこまで知ってここまで来た?」「…助けてくれ、ただそれだけのSOS信号を聞いてここまで来た」「…それだけでか?」「私が動くにはそれだけで十分だ」ライオンハートは決然と宣言した。35

2018-08-25 00:35:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そうかい」リカルドはそう言って。ナバルを見た。「まぁ、白い奴の正体が分かったところで、俺たちがどう動くかだが…その前にライオンハート=サン、情報交換良いか?」「いいだろう」ライオンハートが頷くのを見、リカルドが語り出す。「俺が聞きたいのは、深海棲艦の事だ」 36

2018-08-25 00:41:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは一度言葉を区切り、懐から取り出したウィスキーを呷り、口火を切った。「俺たちの艦隊は嘗て、ソーサラーと言う狂った深海棲艦に出会ったことがある。そいつは言った。『深海棲艦とは現象に過ぎない』『堆積した憎悪は海に溶け、海中の物質を無秩序に深海棲艦にする現象になった』てな」 37

2018-08-25 00:45:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ソーサラー…聞いたことが無いな…」「まぁ、山師見てぇな奴だったからな。知らんのも無理はないだろう…だが、その力は絶大だった。戯言と切って捨てれるはずの言葉を信じれるほどにな」「ソーサラー、恐るべき敵でした」吹雪がリカルドの言葉を肯定する。 38

2018-08-25 00:47:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それから俺は、深海棲艦のルーツについて調べるようになった。そこで分かったのは俺たち人類が把握している限りでは3度、『海の上を歩く人型』達のイクサが起こっている。3度目は今。2度目は艦娘技術が生まれ、光刃の英雄が終わらせた。問題は一度目だ」 39

2018-08-25 00:53:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「……リムパック参加全艦隊の反応途絶と、数日後のハワイ陥落に端を発する深海棲艦の発生。艦娘はおらず、深海棲艦の残骸で海を歩く海上歩兵もいない時代に、確かに人の姿をした者たち…深海棲艦同士が海の上で殺し合いをしていた」40

2018-08-25 00:54:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「便宜上、これを「第一次深海大戦」と呼ぶ奴は多いが…真実を知る者は誰もいない。多くの軍艦や、海の戦士達が、一方的に蹂躙され、悉くが帰って来なかった…てな」サングラスの下、晴れた空の如き青の目がギラリと光った。「俺はここに、真実があると睨んでいる」 41

2018-08-25 00:58:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「こここそがポイント・オブ・ノーリターン星を食らう鬼…深海棲鬼の何らかの真実がここにあると」「知ってどうする?」「無論殺す」リカルドは静かに言った。それは、誓いめいていた。 42

2018-08-25 01:02:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「奴さんが星を食うのなら、この星に生きるモノの敵だ。俺の愛する者の敵だ。つまり、俺の敵だ。だから殺す。理屈はこれで充分だ」「成程…成程…」ライオンハートは重く頷いた。そしてナバルを一瞥し、言った。「どうやら君は敵を同じくし、そして信用のおけるヒトのようだ…」 42

2018-08-25 01:04:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「さて、私の知っている話か…何から話そうか…」ライオンハートは腕を組み唸り、やがて語りだした。「星を食らう鬼。嘗て私が神と見定め、拝神派の奴らが神と呼称するアレは…己を拡げる必要があったという」「拡げる?何故そんな」「詳しい理由までは私も知らん…」 43

2018-08-25 01:07:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だが結果としてこの星の環境は書き換えられた。深海棲艦が海から現れ、沈んだものが深海棲艦となるこの状況に。それが星を喰うという事なのか、それともそのための前準備なのかまでは、私もクリティカルな情報を持ち得ていない」ライオンハートは空を見上げた。 44

2018-08-25 01:11:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして、己の知りうることをコトダマとして紡ぎ出す。「「拡げるその過程において、まず鬼は人間に目を付けた。この世界のほぼすべてに生息する人間を模倣し、人間が拡がる様に己を拡げる為に…私の集めた古い伝承に曰く、まず人間にまつわる7つの感情が生まれたという」「感情…?」 45

2018-08-25 01:13:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「曰く、人間が手に入れうる7つの力…人が辿り着き、人が己を拡げる力。試作された7隻、オールドワンと呼ばれる七使徒はその全てが鬼の制御を離れ暴走したと聞く」46

2018-08-25 01:16:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だが、結果は十二分だった。この試作を以て、艦を模した生体兵器の開発が始まった。これが最初に深海棲艦と呼ばれた艦、エルダーシングと言われている」「ずいぶんとまぁ、詳しいな」リカルドは訝しむようにライオンハートを見た。ライオンハートは肩をすくめた。「私は旧い深海棲艦だからな」47

2018-08-25 01:18:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だからこのような伝承も他の者達よりは実感として感じ取れる」「旧い…?じゃあお前さん」リカルドは察した。ライオンハートは頷いた。「ああ、お察しの通り」ライオンハートはリカルドをに視線を合わせて言った。「私はエルダーシング…数少ない、伝承の生き残りさ」 48

2018-08-25 01:23:11