「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃２

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」シリーズより 「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃２

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ドーモ、艦娘・吹雪です」吹雪はライオンハートへとアイサツを返した。その左目の虹彩は窄まり、緑の炎光が灯る。ライオンハートはその変貌に微かに眉を動かした。「そこをどけ。ライオンハート＝サン」吹雪の視線はナバルへと向けられている。「聞かねばならない事があります」「断る」 1

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ライオンハートは巨剣を片手で持ち上げ、その切っ先を吹雪へと向けた。何たる深海棲艦の超常的な筋力か。大型タンカーの錨めいた鉄の塊を持ってなお小動一つせず。「彼女は自我を得た我が同胞…即ち友達だ。友達をみすみす殺す真似は、私のエゴが許さん」「では殺す」吹雪は決断的に言った。 2

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「私は、私のエゴを以て、彼女の持ちうる情報を殺してでも手に入れる」「成程、ではこれ以上の言葉は不要」「えぇ後は…」吹雪はカラテを構えた。タタミ4枚の距離。静寂。吹雪は砂を踏み、一気に踏み込んだ。ハヤイ！チョップを繰り出す腕に、ライオンハートは柄をぶつけて軌道をそらす。 3

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更にライオンハートは手首のスナップを効かせ、最小労力で巨剣を振るう！狙うは首筋！吹雪は迫る鉄塊を左手で掴む。そして90度回転、更に右手で掴む！ライオンハートは構わず、圧倒的膂力を込めて巨剣を振りぬいた。SWIIIIING！ 4

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((手応えは…無い))ライオンハートは振り切った剣へと視線を向けた。そこに吹雪はいない。血の霧と化したわけでも、肉の塊へと果てたわけでもない。吹雪は運動エネルギーのみを受け取ると、すぐ様ブリッジ回避。そして流れるような8連続バク転で後退していた。 5

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「イヤーッ！」そのまま吹雪は設営したばかりのテントへ突入！「何をする気か知らんが…！」ライオンハートの背から、ウドンめいた6本の触手砲塔が飛び出す。内3本が吹雪へと狙いをつけた！「イヤーッ！」BLAM！BLAM！BLAM！砲撃がテントへと迫る。アブナイ！ 6

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「イヤーッ！」CRASH！CRASH！CRAAAASH！カラテシャウトが轟き、砲弾が砕ける！テントの中身から現れるのは、黒鉄の籠手に覆われた右腕。フナクダキ。吹雪の籠手。((何をするのかと思えば、籠手一つだと？))ライオンハートは訝しむ。だが、その右腕にカラテの高まりを感じ取る。油断ならぬ。 7

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((ワン・インチ距離での戦闘は避けるべきか))状況判断を一瞬で終え、ライオンハートは巨剣を正眼に構え、そして手首を捻った。SWOOOSH！右！SWOOOSH！左！SWOOOSH！再び右！SWOOOSH！さらに左！巨剣の軌跡がいびつな8の字を描き、空を割き、砂を砕く。 8

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((何たる構えだ…))吹雪はじりじりと動き、ライオンハートの剣の動きを観察した。回転は止まることを知らず、凄まじい運動エネルギーを溜め込んでいく。ウカツにも飛び込めば、研ぎ澄まされた一撃が視認不能の速さで叩き込まれるのは自明だ。 9

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だが、ライオンハートはそれ以上の思案を許さない。「イヤーッ！」BLAM！BLAM！回転の隙間から砲撃が差し込まれる！「イヤーッ！」CRASH！CRASH！「イヤーッ！」BLAM！BLAM！「イヤーッ！」CRASH！CRASH！ 「イヤーッ！」BLAM！BLAM！「イヤーッ！」CRASH！CRASH！ 10

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「イヤーッ！」BLAM！BLAM！「イヤーッ！」CRASH！CRASH！((これは、埒が明かない…！))砲撃をカラテで切り払い、吹雪は焦燥に駆られる己を自覚する。踏み込めば回転運動エネルギーを解き放った巨剣の一撃が襲い、踏み込まねばこのまま砲撃によってジリー・プアー(徐々に不利)！ 11

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何たるライオンハートの防御的構え。回転するギロチンと威圧的バリスタが備わった城塞を思わせる威容を前に、吹雪は攻めあぐねる。一方、リカルドは！「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」ナバルと重々しいカラテ乱打戦を繰り広げる！ 12

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「イヤーッ！」ナバルの右ストレート！「イヤーッ！」リカルドは右腕で受ける！「イヤーッ！」反撃の左アッパー！「イヤーッ！」スウェー回避！「イヤーッ！」ナバルは頭突きを繰り出す！狙うはアッパーが空を切った左腕だ！「イヤーッ！」リカルドは素早くバンザイめいて両腕を上げる！ 13

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リカルドはそのまま両腕のチョップを大角へと叩きつける！「イヤーッ！」「ンアーッ！」ナバルは脳が揺れる感覚に苦しむ。しかし闘志を奮い立たせ、その両腕へと掴みかかる！「イヤーッ！」「イヤーッ！」リカルドも反応し、その手を掴む！奇しくも伝統的力比べ行為「フォーハンド」が始まった！ 14

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「「イヤーッ！」」双方の握力がミシミシと音を立てる！両腕に縄めいた筋肉が浮かび上がる！「負ける…もんか！」ナバルは力を込めた。何らかの思いと共に。リカルドはその白銀色の眼を見た。そこに滲むのは、幼さと、焦燥、そして、此処には居ない誰かへの愛情であった。 15

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「負けるもんか…負けるもんか！」「グワーッ！」ナバルの膂力が増し、リカルドを押し込んだ。仰け反りながらも、リカルドは歯を食いしばって耐える！「守るんだ、私が、あの子を！」おお、見よ！ナバルの口の中から大量の水が迸る！リカルドのハンター第六感が危機を告げる！ 16

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((こいつは…))「吹き飛…」「イヤーッ！」「ンアーッ！」リカルドは一瞬の状況判断。敢えて力を抜き、ナバルの力に身を任せ地へと落ちた。ナバルは思わずつんのめった。「えっ」リカルドの眼がギラリと光る。ほんの一瞬の好機。だが歴戦のハンターにとっては十二分な好機！ 17

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「イヤーッ！」「ンアーッ！」リカルドは崩れた姿勢からサマーソルト・キックを繰り出す！容赦なく顎下に命中！「ヌゥ…！？」ライオンハートの動きが一瞬鈍った。彼は己の信念によって状況判断を強いられた。巨剣の動きが止まりかける。((好機！))吹雪は矢のようにライオンハートへと飛び込んだ！ 18

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「ウカツ…！」ライオンハートは悪態を吐き、咄嗟に吹雪へと巨剣を振るった。だが決断的でない攻撃で、この死神は殺せはしないのだ！「イヤーッ！」フナクダキが、巨剣を受け流す！火花が飛び散る！巨剣が地に突き刺さる。吹雪は渾身のカラテストレートを繰り出した！「イヤーッ！」「グワーッ！」 19

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ライオンハートはワイヤーアクションめいて吹き飛んだ。吹雪は追撃に動こうとする。BLAM！BLAM！ライオンハートは苦し紛れの砲撃を放つ。「イヤーッ！」CRASH！CRASH！吹雪は砲撃を砕く。一瞬の隙に、ライオンハートはウケミを取って着地した。 20

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死神と虐げられしものたちの王は、再びタタミ4枚の距離で睨み合った。双方、互いを真に油断ならぬ敵と認識した。カラテが戦慄き、剣が動き、同時に踏み込まんとした。その時だ。「よぉしテメェらちょっと待ったぁ！イヤーッ！」「ンアーッ！」 21

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イクサの空気を壊し割って入ったのは、ナバルの腕を捩じり拘束したリカルドであった。「ちょ、痛い！離してって！」「話が終わったら解放してやるから、大人しくしてろ！」「貴様！」ライオンハートは激昂！「彼女を放せ！」「ああ、離してやるよ。ただし、俺の提案を聞いてくれたらだがな」 22

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「提案…だと？」ライオンハートは憤怒の形相のまま、リカルドを睨んだ。「ああ、そうだ。提案だ」リカルドは怒りを見据えたまま言った。「そもそも、俺たちにコイツを殺すつもりはねぇよ」「何…？」ライオンハートは訝しむ。「だが、そこの死神が…」「俺はあいつの上官で、師匠だ。つまり上だ」 23

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吹雪が収まりの悪そうに身じろぎするのを横目に、リカルドは続けた。「俺たちは目的があってここに来た。その目的は、お前さんにとっても興味のある話だ」「何の話だ」「ハワイに出てきたデカい化け物だ」「何……？」ライオンハートのアトモスフィアが変わった。リカルドはここが勝機と見た。 24