国際ジェンダー学会 2018年大会 公開シンポジウム「男性学/男性性研究のゆくえ」感想まとめ

聴きに行けなかったのでまとめました。速報的なまとめなので、後日ツイートを追加するかもしれません。
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@kerai14

9/2(日)「国際ジェンダー学会2018年大会シンポジウム2 男性学/男性性研究のゆくえ」を聴講してきた。以下に感想をツイートする。発表者名、著者名の敬称は省略する。

2018-09-05 17:31:50
@kerai14

事前に関連書籍と論文を読んでいたこともあり、自分にとって一番の関心は、澁谷知美の発表にあった。

2018-09-05 17:35:06
@kerai14

澁谷の発表は、平山亮『介護する息子たち』を援用しながら「日本の男性学の「信用できない点」を示し、「信用に足る男性学」を構想する」というものであった。

2018-09-05 17:36:08
@kerai14

その「信用できない点」とは、「男性の特権にまつわるコストを「生きづらさ」と呼び、男性の「被害者性」を強調しながら、特権を放棄するための考察を怠っている点」であるという。

2018-09-05 17:37:24
@kerai14

まず前提として、メディアや授業において「男の生きづらさ」を紹介すると、非常にウケがいいという指摘があった。女性差別を軽視する風潮を、澁谷は危惧する

2018-09-05 17:38:44
@kerai14

先日のツイートでも澁谷の論文への賛同(と批判)を述べたが、私はこうした「男の生きづらさ」言説が、なんとなくウケがよく、男女の非対称性を覆いかくす役割を担ってしまっていることに対する澁谷の違和感に、共感を覚える。

2018-09-05 17:39:56
@kerai14

だが、そこから導かれる澁谷・平山両者の結論には、同意できない。澁谷は「「男の生きづらさ」なるものは「特権にまつわるコスト」、「自縄自縛」でしかない」と述べる。私はこの「自縄自縛」という言葉に違和感を覚える。

2018-09-05 17:46:42
@kerai14

「特権」とは、男性が稼得能力を得やすいことと、女性を「支配」することを指している。澁谷は発表のなかで、男性が女性を養うことは、たとえ善意のものであっても「支配」であると述べていた。

2018-09-05 17:48:44
@kerai14

この部分には同意する。たとえばパートナーを経済的に養っている者が、働くことを辞めたり、もしくパートナーとの関係を一方的に解消することがあれば、ただちにパートナーは収入を断たれることになる。

2018-09-05 17:51:31
@kerai14

そればかりか、それらを仄めかす言動でさえ、当人の意思に関わらず、パートナーに対する「脅迫」として作用する。これが「支配」という言葉の意味であると私は考える。

2018-09-05 17:52:47
@kerai14

それは善意であろうがなかろうが、当人の意思には関係なく生じる権力の差である。それならば、当人の意思とは関係のない「支配」や、それを維持するための労働(=「特権」)を「自縄自縛」と呼ぶのは不適当ではないか。

2018-09-05 17:54:28
@kerai14

私が「自縄自縛」という言葉に抱いた違和感は、以上のようなものであった。その疑問を、会場で直接質問し、回答をいただいた。

2018-09-05 17:55:29
@kerai14

澁谷からの回答は、澁谷は「自縄自縛」という言葉を、自分の意志で「男らしさ」を志向している男性のみを対象として使用している、というものであった。

2018-09-05 17:56:34
@kerai14

「自縄自縛」という言葉を、自分の意志で「男らしさ」を志向している男性のみを対象として使うのであれば、それは確かに「自縄自縛」である。質問に対する回答としては納得のいくものであったため、私はそこで質問を終えた。

2018-09-05 17:57:34
@kerai14

上記の回答には、「男性学が扱うのは「男らしさ」を主体的に志向する男性ばかりではない」という反論が考えられる。しかし澁谷ははじめから、男性の「被害者性」“ばかり”を強調する男性学を批判しているのである。

2018-09-05 18:01:52
@kerai14

つまり、男性学が「男らしさ」を主体的に志向しない(それゆえに「生きづらさ」を抱えている、被害者としての)男性にのみ注目し、「男らしさ」を主体的に志向する(加害者としての)男性を扱ってこなかった点をこそ批判しているのだ。澁谷の主張は確かに一貫している。

2018-09-05 18:03:18
@kerai14

ただし、論文にもレジュメにも「自縄自縛」という言葉を「「男らしさ」を主体的に志向する男性」に限定して使用するという記述はない。旧来の男性学に足りない点を補う意図があるにしても、きちんと対象を限定していることを明記すべきであろう。

2018-09-05 18:04:40
@kerai14

澁谷・平山両者は、男性学が「生きづらさ」という言葉を使用することそのものを批判しているが、男性学が扱う対象に「「男らしさ」を主体的に志向しない男性」が含まれている以上、それは「生きづらさ」という言葉の使用そのものを批判する根拠にはなりえないだろう。

2018-09-05 18:05:34
@kerai14

澁谷・平山の、女性と男性のかかえる問題を「同じ言葉で語るな」という主張には深く同意する。しかし「「生きづらさ」という言葉を使うな」という主張には、とても同意できない。そもそも当事者が自身の困難を語るための言葉を、他者に制限されていいはずかない。

2018-09-05 18:06:35
@kerai14

私は質問をする前に、まず前提として「男性の生きづらさを語る言説が、男女の非対称性を覆いかくす方向に作用する」という澁谷の主張に共感する旨を述べた。質問のみを端的に述べるべきところを、あえて前置きしたのは、私は何としても、自分がアンチフェミニストだと思われたくなかったからだ。

2018-09-05 18:10:03
@kerai14

私は、自分の生きづらさを語れるようになるためにこそ、フェミニズムが必要だと思う。なぜなら、男の生きづらさを語ることが、結果的にアンチフェミニストを助長してしまうような言説空間のなかで、私は決して自分の生きづらさを語りたいとは思えないからだ。

2018-09-05 18:11:00
@kerai14

私はむしろ男性の生きづらさを語るためにこそ、それが男女の非対称性を覆いかくす方向に作用しない言説が必要であると考える。

2018-09-05 18:12:02
@kerai14

澁谷は、「特権」の解体とセットではない限り、男性の生きづらさの主張は認めないと述べているが、これは間違っている。

2018-09-05 18:15:09
@kerai14

男性に「特権」(=偏って与えられること)があることは問題だが、その内容(たとえば管理職になり配偶者を養うこと)は必ずしも問題ではない(女性が管理職になり配偶者を養っても何ら問題はない)。

2018-09-05 18:23:48
@kerai14

その内容が生きづらさの原因となっているのだから、それを問題視することと、「特権」を批判することは別の問題である。

2018-09-05 18:25:16