- karutelina
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マキ「おじさん、今日出張なんだっけ」 結月弟「うん、だから今日は僕以外は家に居ない」 マキ「…」 結月弟「…」 マキ「私のお家泊まる?」 結月弟「なんでさ。子供じゃないんだし」 マキ「だよね~」 結月弟「…」 マキ「心配だねゆかりん」 結月弟「…うん」
2018-09-06 11:30:00夕方を過ぎたのでマキを帰らせ自室に籠もり宿題なり漫画なりで時間を過ごした。 翌日、姉さんは父に抱っこされて帰ってきた。彼女の左手は包帯が巻かれていた。母は泣いていた 結月弟「…母さん、姉さんは大丈夫なの」 母「…」
2018-09-06 12:44:33母「…ゆかりね、食べたものをすぐに戻しちゃって。おかゆ作ったんだけどそれもあまり受け付けなくて。病気かなと思って、病院に連れて行こうとゆかりの部屋に入ったら、あの子カッターナイフを左手に突き刺してて…」 結月弟「…」
2018-09-06 13:13:20母「検査してもらったんだけど、異常はなくて…精神的なものだって先生が言ってた。今のところは自宅療養のほうがいいっておっしゃってたから連れて帰ったわ」 結月弟「…」 父「まぁ、若いときには誰だってこういうことはあるさ。母さん、風呂入ってくるぜよ」 湯船に豪快に浸かる父の歓声が聞こえた
2018-09-06 13:17:21父「ああ^~ 生き返るんじゃぁ^~ 風呂は最高なんじぁ^」 母「もうパパったら…ゆかりも、すぐに元気になると思うわ」 結月弟「…そうだね」 母「あんたは何も心配しなくていいし」 結月弟「うん」 母「…何もしなくていいのよ…」 結月弟「…」 このときは皆、楽観的に考えようとしていた
2018-09-06 13:26:25姉さんは今日も不登校だった。母も父も別にそれを咎めたりしなかった。むしろ、 母「ゆかりを心配してる暇があったらとっとと学校行けぇ!母さんたちにまかせい!」 僕に心配させないと必死なようだった 結月弟「痛い!お尻蹴るのやめて」 毎度出るときに蹴り出すのはやめてほしいが
2018-09-06 13:33:00母「…おかえり」 帰宅すると、母さんに迎えられる。今日は少し疲れているようにも思えた 結月弟「ただいま…姉さん、どう?」 母「…」 母さんは口を閉ざす 母「…ご飯はあんまり食べてないわ」 結月弟「…そっか。姉さん、見てきていい?」母「だめ」 母さんの顔がこわばる。こんなことは初めてだ
2018-09-06 13:39:51結月弟「…」 母「…」 結月弟「…」 母「…あんたは、心配しなくていいの」 結月弟「…わかった」 母「…」 母さんの忠告どおり、姉さんとは会わずに自室で漫画を読む。 結月弟「…」 漫画を読むが、頭に入らない。姉さんのことがとにかく不安だった
2018-09-06 13:50:39就寝中、甲高い声が聞こえ目が覚める。姉さんの部屋からときたま奇声が聞こえる 「…すき…が、すき……」 「……ごめ………ごめんなさい…」 「……会いたい……今すぐ会いたい……」 「おとくんに、会いたい」 結月弟「…」 全身から立つ鳥肌を押さえ、布団に入り込み耳に蓋をする
2018-09-06 13:53:46寝付けが悪い体を起こし、洗面所で顔を洗う。目に隈ができていた。そのままリビングへ向かう 結月弟「…おはよう」 母「…」 父「…はろー」 母さんも父さんも、目に隈ができていた。昨日の姉さんの奇声が、きっと聞こえていたのだろう 結月弟「…」 姉さんは今日も起きてこなかった
2018-09-06 13:59:21姉さんが不登校になってから二週間が経っていた。日が進む度奇声が強くなり、母はやつれていった。時折、精神科医の先生がやってきて姉さんを診たり父と母とで相談したりしたが、なぜか僕は部屋に追いやられる。 父「…相談がある」 その日、父は珍しく僕に話を振る
2018-09-06 14:04:20結月弟「…なんの話さ?父さん」 父「…ゆかりについて、家族会議だ」 父「…」 母「…」 結月弟「…」 父「ゆかりが、お前のことが好きなのは知ってるか」 結月弟「…うん」 父「…弟としてではなく、異性として好きだということも知ってるか」 結月弟「……うん」 父「……」
2018-09-06 14:07:51父「…ゆかりが、お前に告白したって言ってたが、確かお前は振ったんだよな」 結月弟「…当たり前じゃん…身内に、欲情するなんて、気持ち悪い」 父「……そうだ、当たり前だ」 母「…」
2018-09-06 14:12:57父「…近親が気持ち悪いと思うのは、普通だ」 結月弟「…じゃぁ」 父「問題は、ゆかりにとってはそうじゃなかったということだ」 母「…」 結月弟「…」 父「ゆかりはお前に告白して、振られて、壊れた。飯も受け付けず、毎日のように奇声を上げて、精神的に壊れた」
2018-09-06 14:16:30父「母さんも、精神的に限界がきているし、俺もいつまで持つかわからん。そして、お前も」 結月弟「…」 母さんを見る。目を見ると、僕から顔をそらした。僕に合わせる顔がないような、そんな感じで
2018-09-06 14:20:25父「先生と相談したんだが、お前がこの話を受けてくれなかったら、ゆかりを精神病院に入れようと思っている」 母「…」 結月弟「…そんな」 父「父さんと母さんじゃ、どうすることもできないんだ」 結月弟「…」 父「…お前は、ゆかりのことをどう思ってる」 結月弟「…姉として家族として、好きだ」
2018-09-06 14:24:20父「…ゆかりと、付き合ってくれないか」 父さんは罰の悪そうな顔でそう言った。母さんは顔をそらしたまま泣いていた。ああ、この人達は姉さんを僕に押し付ける気なんだ、子供ながらに僕は理解した 結月弟「…それ、僕に拒否権は」 父「…」 結月弟「…」 父「…そんなもの、あるわけないだろう」
2018-09-06 14:28:34