宿題を廃止しよう

shinshinohara @ShinShinohara

私は宿題がキライだ。この世からなくなってしまえばいいと思っている。もちろん、今は大人だから、学校の宿題はもうしなくても構わない。けれど、これからの子どもたちのことを考えると、宿題なんか全廃してしまえばよいのに、と真剣に思っている。勉強嫌いにするだけだからだ。

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宿題があるせいで、お母さんから「あんた、宿題やったの？」「せっかくやろうと思っていたところだったのに、言われたからやる気なくした！」「ウソおっしゃい！言わなきゃちっともやろうとしないくせに！」というありふれたやりとりが全国各地で発生し、子どもを勉強嫌いに追い込んでいる。

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もし私が教師なら、宿題は一切出さない。その代わり、年度初めに問題集を一冊渡す。「これ、やらなくていいよ。でももしやってきたら、マルつけくらいするよ。」とだけ言っておく。あとは黙っておく。たまたま一人、やってきた子がいたら、「ええっ、ほんとにやってきたの？！」と驚いてみせる。

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マルつけしたあと、「ああビックリした、言われもしないのに問題集やってくるなんて。この問題なんか、解くのにコツがいるのに、よく分かったね。どうやって解いたの？」と、工夫を尋ねる。「よくそれに気がついたね！」とまた驚く。その子は、問題集を解くのが楽しくなるだろう。

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なかなかやろうとしない子も多いだろう。しかしたまたま、教科書の一問でも解いて来たら驚いてやるとよい。「分からなくても諦めずに、よく取り組んだね。エライ！」わずかな機会をとらえて、その子の工夫、努力、苦労に驚き、面白がる。するとその子は、立ち向かうことを楽しむようになるだろう。

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私は、「意欲」を最重視している。意欲を削ぐような指導法は、いくら分かりやすく教えるものであっても、ちょっと待った方がよいと思っている。本人に意欲がなければ、どんな教え方をしても興味は湧かない。身に付かない。学ぶ意欲があれば、学習法がどれだけ稚拙でも飛躍的に伸びる。

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意欲を育むには、「楽しむ」ことが一番だ。そして、人間の最大の楽しみの一つに、「驚かす」というものがある。「まさかお前がそんなことをするなんて！」と、意表をつくことができたら、飛び上がりたくなるほど嬉しくなる。また驚かせたい、意外なことをやってみせたい、と願うようになる。

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問題集を渡しておきながら、「でも、お家の手伝いもあって大変だろうから、やらなくていいよ」と言っておけば、教師の側は「驚く準備」が整ったことになる。やらなくてよいと言ったのに、やってきたの？！と、ビックリすることができる。すると、先生を驚かすことができた、と嬉しくなる。

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人を驚かすことは、テレビゲームに匹敵する、場合によってはそれを凌駕する楽しみだ。だから大人は、できるだけ「驚く」ことができるように、あえて勧めない、やれと言わない仕掛けをたくさん用意するとよい。子どもは「やった！驚かすことができた！大成功！」と喜ぶだろう。

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宿題を出すことは、教師の側が「驚けなくなる」という、最も厄介な副作用がある。むしろ、宿題をやらなかった場合、落胆するという、実に子どもにとって面白くない結末を迎える。さりとて、宿題をやってきたからといって驚いてくれる訳でもなく、当然視される。ちっとも面白くない。

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わざわざ勉強嫌いにしているようなものだ、というのは、このためだ。やらなくてよいと言っているのにやってきたら、子どもは教師を驚かせることができるという楽しみがある。しかし宿題を出したら、驚くどころか落胆するか当然視するという、マイナス方向の反応しかない。実につまらない。

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教育は、もっと人間心理にうまく寄り添ったものにすべきだと思う。宿題は、イヤイヤやることが多く、それだとちっとも身に付かない。しかも勉強嫌いにすることが多い。百害あって一利なしだと思う。

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宿題を廃止しよう。その代わり、「もしやってきたら、マルつけくらいするよ」とだけ言って、問題集を一冊渡そう。そして、一問でも解いたらビックリしてやろう。挑戦したことに大いに感激しよう。すると子どもは、もっと驚かせたくなる。学ぶことが楽しくなる。