描くと言ったな。あれは嘘だ

桜雨楼雪 @quickfix_sys

…薄暗い部屋に、しゅるり、と衣擦れの音が反響する。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「…寒くない?」「ん、大丈夫…」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

視界をふさがれたままのぎこちない手つきで、それでもするすると着衣をほどいていく。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「…手伝おうか」「自分でっ…出来るから…」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

かすかに震える声で、それでも気丈に返してくる。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

僕はどこか穏やかな気持ちで、着衣をほどいていく彼女を眺めている。きっと「クリームをなめた猫のように」満ち足りた表情をしているのだろう。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

自然と口角が上がるのを意識した。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

飾り気のない白いショーツからまず右足が、続いて左足が、もどかしげに引き抜かれる。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「脱いだ、わよ…」「袖、袖」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

袖を外し忘れていたことを直截に指摘する。霊夢は一瞬きょとんとした顔をして…袖を取り忘れていたことに気づくと、起こったようにいささか乱暴な手つきで袖を外すと、それでもそっと床に置いた。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「…あんたのことだからまたそういう変なのが好きなのかと思ったのよ」「霊夢ちゃんはサービス精神旺盛だなあ」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

今度こそ一糸まとわぬ姿になった霊夢は、かすかに身を震わせた。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

寒くはない室温だが、素肌に直に触れる空気が、否応なしに何もつけていないという感覚を鋭敏にする。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

不安と期待にさざめく肩をぎゅっと抱きしめたい衝動を抑えながら、僕はそっと彼女の傍らに跪いた。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「触るよ」「んっ…」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「えっと…んっ…どうすればいいの」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「脚は楽にして、普通に座ってて良いよ」「…こ、こう?」もぞもぞと床に敷いた布団の上で足がうごめき、膝を閉じて左右に足を開いた所謂ぺたん座りの形を取る。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

長時間だと辛いかも知れないが、少しの間なら良いだろう。そう判断して、指示を続行する。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「まずバンザイしてみようか」「…こう？」「そのまま首の後ろで手を合わせて」「これでいいの…?」首の後ろで逆さ合掌になった手首をまず、指一本ぐらいの隙間を空けて縛り上げる。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「きつくないね?」「…うん」「うん？」彼女の返答に覚えた違和感を言外に強調しつつ、もう一度、質問を繰り返す。「きつく、ないね？」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「…はい。きつく…ない、です」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「そうか、よし」彼女の返答に満足したことを示すべく、さわさわと髪を撫でる。「もしかして物足りない?」「そんなわけ、ないでしょ…」「もっとこった縛り方とか出来ればいいんだけどねー」「ばか…」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「うん、今日も綺麗な腋だ」腕を上げたまま後ろ手に拘束された姿勢では、否応なしにすべすべとした腋が晒されることになる。ここで一度、かすかに浮いたあばら、形良く張り出したほどよい量感の乳房、なまめかしくさらけ出された腋のくぼみを順繰りに眺めてゆく。

桜雨楼雪 @quickfix_sys

「関節の内側ってやらしいよねー」ついついうっかり思考が口を突いて出る。「薄い皮膚の向こうに骨や腱や血管が透けて見えるようでさー」

桜雨楼雪 @quickfix_sys

…目隠し越しにでも、突き刺さるような視線を感じた。もし目隠しをしていなかったら、その視線は僕を更にいきり立たせていただろう。ふぅ。