- Uroak_Miku
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図書館に行って、某県の公立高校入試問題を地元紙で閲覧してきました。英語と国語の問題を複写して帰宅。うーん、都立に比べるとずっとやさしい。都立が突出しているというべきかな。
2018-10-25 21:34:37英語の入試問題はこんな感じ。授業で英語スピーチするんですよ。「ぼくは昆虫が好きで、とりわけアリに興味があります」 そんな授業ありえねー!とツッコむのは野暮。高校入試とは試験を解いているあいだ、幻の中学校の生徒になる儀式なのだから。 pic.twitter.com/ozZ6CvBM2R
2018-10-25 21:42:28いきなり「Do you like insects?」(あなたは昆虫が好きなの?)で始まる。きっと「皆さんは昆虫は好きですか」のつもりなのです。英語ではこういう切り出し方は稀。相手にケンカを売っているように聞こえかねないから。「I love insects.」(私は昆虫が好きです)と切り出すと〇
2018-10-25 21:45:44「I kept many different kinds of insects when I was an elementary school student.」 うーん、これは「I kept many kinds of insects and bugs to feed when I was a little child.」(小さかったときいろんな虫を飼っていた)とすべき。 もとの英文では昆虫を金庫にしまっていたかの様。
2018-10-25 21:52:59アリンコの話を聞き終えたALTの先生がこう話を続ける。 I understand how much Kenta likes ants. 出題者はおそらく「健太がどんなにアリが好きかよく理解できます」のつもりでこの英文を作ったのでしょうが ケンタがどんなにアリが好きなのかは十分わかるよ、だけどね とネイティヴには
2018-10-25 22:00:24取られてしまう。こういうときは Thank you for your talk, Kenta. Now I understand what brings him to studying ants. (お話ありがとうケンタ。アリへの研究意欲がよく伝わってくるわ) とすべきです。
2018-10-25 22:05:02それから「We should learn from ants.」も英語ネイティヴにはおそらく理解不能。 この「learn from ~」は「経験から学ぶ」とか「師匠から教わる」とかのニュアンスで使うので、「learn from ants」ですと「偉大なアリンコ様を我が師匠とする」などというシュールな絵が浮かんでしまうのです。
2018-10-25 22:10:28「Perhaps we have a lot of things to learn from the way ants live.」 (アリの生態から学ぶべきことがたくさんある気がするね) これなら通じる。「アリンコから学ぶ」のではなく「アリンコの生態から学ぶ」といじるのです。
2018-10-25 22:13:10前から感じているのですが、学校で教えるべきは「英語」ではなく「英語はどんな風に日本語とは異なっているか」ではないでしょうか。
2018-10-25 22:16:19「ピーター・ラビットは知っている」のつもりで「I know Peter Rabbit.」などと口走ると「ピーター・ラビットとは会ったことがある」と英語ネイティヴには理解されてしまう。 「知っている」と「know」はイコールではないのです。「know」は「直接に知っている」なのだから。
2018-10-25 22:18:22こういう違いを一つ一つ教えていくべきです。 これがある程度体の中に溜まっていけば、やがて「おじいちゃんとは死に別れた」という日本語を、さっと「I knew granpa.」と言い換えできるようになるわけです。
2018-10-25 22:19:49そして「国語」と「日本語」はどう違うのかを教えていく。 日本語を習っている途中の方には「フクツウデスカ?」ではなく「オナカガイタイデスカ?」と話しかけてあげるのが、本当のOMOTENASHIの心なんですよ、とかね。
2018-10-25 22:22:51こういう話題、いちおう国語の授業でも出てくるんですよ。光村図書の中二国語教科書には、日本在住の外国人にも伝わるやさしい日本語でのアナウンスがどんなに大切かがテーマのエッセイが載っています。震災のとき、日本語の放送しか流れてこなくて理解できず外国人には本当に恐怖だったというし。 pic.twitter.com/ep9CvxJkby
2018-10-25 22:28:19よかれと思って相手にしてあげたことが、相手からは不快に思われてしまうことって、日常でよくありませんか。日本語⇔英語の関係はまさにこれ。日本語の感覚で「皆さんは昆虫は好きですか」と英語でスピーチすると「お前の知ったことか」「いきなりなんだよ」と客席を引かせてしまう。
2018-10-25 22:32:07「話をふっただけなのに、どうして退くんだ???」と思ってしまう私たち。 しかし英語脳では「You」(あなたたち)の背後に「I」(私)が立っているのです。だから「皆さんは~」と切り出すと「私はというとですね」のニュアンスが伴ってしまって、聴衆にすれば「いきなりなんだよ」となる。
2018-10-25 22:35:03映画『ブレードランナー』で、ハリソン・フォード扮する刑事が、ある大企業の会長に会いに行く。神殿めいたその部屋には、人造のフクロウがいて、刑事がそれを眺める。と、秘書さんが現れて「Do you like owls?」(フクロウはお好きかしら)と切り出す。 pic.twitter.com/qEfTld0PBB
2018-10-25 22:40:55このやり取り、「you」(あなた)と「I」(私)つまり刑事と秘書のタイマンが始まっているわけです。 実際の会話は違う方向に進むのですが、この質問に刑事は「No, not so much.」(いや、それほどは)と答えて、次に「And you?」(あなたは?)と切り返す展開でも自然なわけです。 pic.twitter.com/a8pF9LKyFq
2018-10-25 22:46:44秘書は秘書で「I don't care much for them.」(そんなに興味はないわ)と返す。 キャッチボールの始まりです。そしてこの後「I'm Rachel.」(私はレイチェル)と自己紹介に入り、刑事が「I'm Deckard.」(デッカードだ)と答える。
2018-10-25 22:48:56英語はこんな風に「主語」と「主語」が常にタイマンしてるわけです。 なので「皆さんは~をご存じですか」を英語スピーチで口走ったすると「なんだ藪から棒に」と客席を退かせてしまうわけです。
2018-10-25 22:50:28もし講演者が、先にステージ上のスクリーンにアリンコの映像を出して、それから「Err, do you like ants?」と切り出すのであれば、多少は藪から棒な感じは薄らいでくれます。これでも講演にはちょっと唐突なのですが、何もなしでいきなり切り出すよりはマシです。
2018-10-25 22:51:57