フリージング・フジサン #5
「アイエエエ!」「アイエエエエ?」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」コトブキは手近のアカウントをKICK!蹴られたアカウントは消滅!それと同時に、物理世界では棺じみた穴に寝ていた一人が跳ね起きる!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」さらにKICK!さらに一人!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」覚醒!22
2018-10-28 23:13:36コトブキは覚醒可能な者を全てKICKし終えた。だが半数近くのアカウントはこの空間に石めいて融合したまま。その者達が目覚める事はない。コトブキは彼らのニューロンに紐ついた【仇オマーク仇】のアカウントを見た。巨大で冒涜的な、手出しのできない獣。出来る事はした。彼女は自らに言い聞かせた。23
2018-10-28 23:20:52その者はごく自然にシンウインターの目の前に現れた。いや、居た。ザルニーツァのニンジャ第六感が、そのような大胆極まる接近を感知しない筈などなかった。しかし、その者はもっと前からそこに居たかのように、ごく寛いだ様子で、テレビモニタに肘を乗せていた……。「時間通りだ!」彼は言った。 25
2018-10-28 23:31:11ザルニーツァは反射的にシンウインターを守ろうと動いた。しかし彼女は頭を押さえ、よろめいた。ゴーン……ゴーン。また、あの鐘じみた音だ。そしてニューロンに去来するのは黒いトリイのヴィジョンだった。カラテを構えようと己を強いる彼女の視界に、痙攣しながら膝をつくミギとヒダリが見えた。 26
2018-10-28 23:35:34シンウインターはソファに座ったまま、その者をじっと見ていた。「来たか」「言った通りだろう?時は満ちたり!BWAHAHAHA!言わなかった?」その者はワインを呷り、尋常でない光を秘めた目を歪めて笑った。「日蝕だよ、あれがサインなんだ。凄いぞ。おや、どうした?」その者はゾーイを見た。 27
2018-10-28 23:39:11ゾーイはミギやヒダリのように悶絶する事は無かった。だが心拍数は過剰に上昇し、昏倒する寸前のようだった。棒立ちになり、見開いた目で、彼を見ている。「そうだ。流石だ。わかるんだろう?何だっけ?名前?」「……ゾーイ」かすれ声で彼女は答えた。「MWAHAHA!ゾーイ=サンか!素敵だね」 28
2018-10-28 23:42:55「それは俺のものだ、わかるな」シンウインターは確認するように言った。「だが、それをお前にやろう。これは貸しだ」「BWAHAHA!素晴らしい」その者は身体を仰け反らせて笑った。「俺にビビらないニンジャ。本当にスゴイ。いや、そんな話はいいな。わかってる、わかってる。そういう約束だもの」 29
2018-10-28 23:46:48ゴーン……。また鐘めいた音が鳴った。ザルニーツァの視界には、この闇の広間に荒地と黒いトリイの光景が重なって見えた。異邦人の手に、脈打つハッポースリケンがあった。それはランダムな方向に刃を突き出した不快なスリケンであり、異常な金属でできており、生き物めいて脈打っている。 30
2018-10-28 23:50:21「これは特別製だぞ。ほら」その者はシンウインターにそのスリケンを放った。シンウインターは座ったままそれを掴み取った。「……フン」「他の望みもかなえてやろうか?」異邦人は言った。「その……そうだな、シトカで楽しんでもいいのなら」「シトカは俺の街だ」シンウインターは答えた。 31
2018-10-28 23:52:56ザルニーツァは息を殺し、シンウインターの続く言葉を待った。やがて彼は言った。「……貸しになるぞ」「BWAHAHAHAHAHA!話のわかるニンジャだな!只者ではない!」異邦人は手を叩いて笑った。嬉しくてならないようだった。それから不意にその者はゾーイに向き直り、顔を近づけ、アイサツした。 32
2018-10-28 23:54:47「ドーモ。サツガイです。嬉しいが奇妙な気分でもある!キミは今どんな気分だね……?同じかね?」 33
2018-10-29 00:00:07