私と貴方とあの人と

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あれから信ちゃんは気を使って別々に登下校することになった。その代わりに章大が毎朝迎えに来てくれて。私が飽きないように色んな話をしてくれる。章大の優しさになんだか申し訳なくなると同時にほんの少しずつでも惹かれてる自分に安心した #エイトで妄想

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章大のデートしよ！って一言で2人で出かける日曜日。いつだって章大はいきなりだったけど行先はいくつか候補を上げて私に選ばせてくれたり私が気を使うと思って時々章大は自分が行きたいとこを提案したり、とにかく出来る彼氏だった #エイトで妄想

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そんなとき来たショッピングモール「俺が〇〇に似合うの選んだるわ！」って連れてこられたアクセサリーショップ。章大と手を繋ぎながらあれ可愛い、これ似合いそう、なんてポツリポツリ会話を交わしてると「お、〇〇とヤスやん」なんとこんなところに信ちゃん #エイトで妄想

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「信ちゃんやん！なんでこんなとこ一人でおるん？」いやほんとにそれ、なんでこんなお洒落な店に信ちゃんが1人で居るの？！「いやあ、まあ」信ちゃんの手にはもう既にお買い上げのアクセサリーが「……先生、もうちょいで誕生日やねん」少し照れたように俯く信ちゃん #エイトで妄想

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あーやっぱダメだ、まだ全然忘れられてないな、わたし「信ちゃんが1人で選んだん？」「まあな、先生がいっつも付けとるのリサーチして似たようなん選んだ」買ったものを嬉しそうに眺める信ちゃんは私に向けたことのないような顔をしていた。私が俯くと繋がれた章大の手に少し力が入った #エイトで妄想

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「そうなんや、喜んで貰えるとええな。じゃあ俺らは大事なデート中やからそろそろ行くわ〜！」章大に強引に腕を引かれ私も信ちゃんに小さく手を振って章大についていく。きっと私の異変に気づいて連れ出してくれたんだ。#エイトで妄想

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信ちゃんのことは忘れよう。あれから家庭科室を見るのもキッパリ辞めたし信ちゃんを見かけても近づかないようにした。正直関わりは登校時か自分から話しかけに行く時だけだったからだいぶ信ちゃんの姿を見ることは減った。そして章大をちゃんと好きでいようとした。きっともう大丈夫 #エイトで妄想

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春休みも章大が色んなところに連れ出してくれて信ちゃんと会うこともなかったしちゃんと章大のこと好きな自分がいて心底安心した。優しすぎる章大を傷つけることはもうしたくない。だから章大が好きだとは何度も伝えた。けど適当に笑って流すからきっと伝わってないんだろうな #エイトで妄想

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春休み明けの離任式。誰が離任するか教えてくれないから生徒はソワソワドキドキしながら体育館へ向かう。あの先生はどっか行けばいいし、好きなあの先生残ってくれればいいなあ、なんてこの時は軽く考えていた。#エイトで妄想

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生徒が揃ったところで校長の長い話が始まる。ちょうど視界にいる章大は首をゆらゆら左右に揺らしている。きっと眠気と戦ってるんだろうな、そう思ってつい笑ってしまう。離任する先生を紹介します、やっとか。なんて思いながら前を向くと4人の先生。そこには家庭科の先生も立っていた #エイトで妄想

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うそ、ちょうどギリギリ視界に入る信ちゃんの目はジッとその先生に向けられていて、爪が食い込むんじゃないかくらい拳をギュッと握りしめていた。その大きな綺麗な瞳は今までに見たことの無いくらい悲しみに満ち溢れていた #エイトで妄想

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そりゃあ、可能性が無いわけではなかったけど、でもそんな。何故か私が焦っちゃって振り向いた章大に落ち着け、と口パクで言われた。そんな、急すぎない？信ちゃんの気持ちは？なんて考えてると家庭科の先生はマイクを持って話し始めた。その先生の視線の先にはジッと先生を睨みつけてる信ちゃんがいた

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"実は最近、妊娠したんです"先生の一言にきっと信ちゃんはドン底に突き落とされたんだろう。周りの生徒達からはおめでとー！って声が上がるけど信ちゃんはそれから俯いて微動だにしない。信ちゃん、顔上げちゃダメだよ。だって今、先生めちゃくちゃに幸せな顔してるから #エイトで妄想

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それからの離任式、終始俯いて目を瞑っていた信ちゃんとそれを見つめることしか出来なかった私。章大には「なんで〇〇がそんな泣きそうな顔してるんよ〜」って言われた。「だって信ちゃんあんなに一途に……」「〇〇ホンマお人好しすぎ」#エイトで妄想

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章大は部活の副顧問が離任するということで別々に帰ることになった。私は特にお世話になった先生がいなかったから誰もいない教室で帰る準備を進める。「お、〇〇やん」「……っあ、信ちゃん」いつもより強ばらせた笑顔を顔に貼り付けた信ちゃんが教室に入ってきた #エイトで妄想

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信ちゃんが無理して笑ってるのは丸分かり。まあ、付き合いが長いからってのもあるかもしれないけど「……信ちゃん、」「ん？」「…先生は、いいの？」「……おん、もうええ」またいつも通り笑おうとする信ちゃん。このままだと何だか、信ちゃんが壊れてしまうような気がした「信ちゃん、泣いていいよ」

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「見なかったことにしてあげるから」そう微笑みかけると信ちゃんの大きな瞳が少し潤んだ気がした「……いや、そんなわダサすぎやろ」「思ってることは吐き出した方がいいって」「相変わらずやな、〇〇はほんま優しい」「……じゃあさ、抱き締めてええかな、今だけ」#エイトで妄想

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私が反応する前に信ちゃんの長い腕に抱き締められた。それはもう苦しいくらいに。そして少し、震えていた。「……なんでやねん」ここまで弱々しく呟く信ちゃんは初めて見た。私は気づけば信ちゃんの背中に腕を添えていた #エイトで妄想

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「……なんで、一言も教えてくれへんねん、急すぎるやろ」途端に信ちゃん野声がいつもより少し、優しくなった気がした。……きっと、私を先生だと錯覚してるのだろう「あと1年くらい、一緒におってくれても良かったやんか、先生……」「しかも妊娠て、聞いてへんし」#エイトで妄想

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「……ホンマに、俺に勝ち目なくなってもうたやん」それから私に縋るように信ちゃんは先生、と何度も呟いて私をぎゅっと抱き締めた。信ちゃんが先生、と愛おしそうに呼ぶ度に胸が締め付けられる。……信ちゃんにここまで想ってもらえる先生になりたいだなんて、久しぶりに思った #エイトで妄想

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「……何してんの、信ちゃん」しばらくその状態でいたら後ろからいつもより低めの声「……ヤス、ごめん俺、「分かっとる。やけど〇〇を先生がわりにせんといて」章大は私の腕を強く引き自分の腕の中に抱き寄せた「ごめんな信ちゃん、あとは他の人に慰めてもらって？」#エイトで妄想

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いつもより歩くスピードが速い章大「……章大、ごめん、私…「んーん、ごめんな？俺、信ちゃんにキツくしてもうた」あの状況、章大が怒る権利は十分あるはずなのに反省してる。どこまで優しいんだろう「俺、不安になってもうて……」 #エイトで妄想

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「無理矢理やったけど、〇〇を彼女にして、ほんで最近俺の事ちゃんと好きでいてくれてるって分かっててん。けどやっぱ、信ちゃんに抱き締められてる〇〇見たら不安になって……」そこまで弱々しく言う章大の背中に思い切り抱きついた #エイトで妄想

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「私、ちゃんと章大が好きだから」もう、こんな繊細で優しい人を「だから安心して？信ちゃんじゃなくて章大がすき」私のせいで、傷つけたくなかった。「やっぱ〇〇には敵わんなあ」ふにゃりと笑うその顔がやっぱり章大には1番必要だと思った #エイトで妄想

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高３になって、信ちゃんとは真反対のクラスになって余計に関わりがなくなった。章大ともクラスは離れたものの登下校は一緒にだし一緒に勉強したり息抜きに遊びに行ったり、仲悪くなるわけでもなく良好な関係だった #エイトで妄想