ギガベース日誌　ACT07「CREATED VICTIMS」01

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「そんなもの？」 「その身体だよ。人の身体なんか無くたってお前は僕らと会話できし、よりによって艦娘の肉体に意識を移すなんて。女装してるみたいでキモいぞ」 吹雪は足元のガラクタを数m先まで蹴り飛ばし、わざとらしく両手を広げ溜め息をついた。 #ギガベース日誌_Re

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「キャロルならわかると思うけど、以外と不便なんだよ、肉体が無いって。ファンタズマビーイングの連中は、戦ってりゃそれだけでいいから何も言わないけど、人付き合いが必要な僕やキャロルはそうもいかない」 瓦礫の下に倒れていたリ級を素手で解体しながら吹雪は続ける。 #ギガベース日誌_Re

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「それにね、艦娘や深海棲艦に作業を任せっきりなのも、気に入らないんだよ。僕は彼等が死ぬほど嫌いだから」 「それじゃあ尚更だ。大嫌いな艦娘の身体を使う必要があるのか？適当なMTやノーマルでもいいのに」 #ギガベース日誌_Re

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「……まぁいいや。1つ教えておこう。いいよね、キャロル？」 「構いませんよ」 吹雪は瓦礫の山から上半身だけの艦娘の残骸を引きずり出し、デューンの前へ放った。 「少し抽象的な話になるが、艦娘の身体は"魂の器"としてこれ以上無いほど完成されている」 #ギガベース日誌_Re

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「ほう」 「君も提督なら覚えがあるだろう。外部からのストレスや経験で僅かな個体差が生じることもあるが、同型の艦娘の性格、記憶、振る舞いはどれも限り無く等しい。あれは艦娘の肉体が持つ特性の賜物だ」 吹雪は更にもう一体、同型艦の残骸を放る。 #ギガベース日誌_Re

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「そして、その特性は俗に言う”艦の魂”以外にも適用される」 「つまり、お前やキャロルみたいな奴にもか」 「そういう事。そして、機械化された記憶達、ファンタズマビーイングにも」 二隻の残骸に重なるスクラップ。デューンはその装置に見覚えがあった。 #ギガベース日誌_Re

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「フォーミュラブレイン……まさか」 「流石、察しがいいね」 吹雪は自身の頭を指差し、言った。 「自律兵器、UNAC、そしてファンタズマビーイング。これらの全ての技術のルーツは、艦娘だ。少なくともUNACについては、作った僕が言うんだから間違いない」 #ギガベース日誌_Re

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デューンは両腕で艦娘とフォーミュラブレインを持ち上げ、両方に目を行き来させる。 「君なら次にこう思うだろう。『UNACが艦娘をルーツとするなら、UNAC艦娘なんぞ作る必要があったのか』って。あれは、単に艦娘から自我を奪い、完全な自律兵器として運用しやすくしただけさ」 #ギガベース日誌_Re

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「UNACの行動プログラム自体、腕利きの傭兵達の作戦ログやファンタズマビーイング共を切り貼りした後の残りカスだからね。それを使用者の意図に合わせて自由に組み換える為のフォーミュラブレインであり、艦娘起源の技術であるが故に適正が高いのは当然って事」 #ギガベース日誌_Re

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「……前から思ってたが、随分、都合が良くできてるよな。艦娘って」 「そうだね」 デューンは、財団が何故自分に目をつけ、世界に秘匿された多くの事実を自分に開示し、艦娘と深海棲艦を使役する力を持ち、こんな施設を占拠できているのか、一切知らずにここにいる。 #ギガベース日誌_Re

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これから数多くの疑問が、今のような形で解決されるのだろうと、デューンは何となく予想した。 「話が長くなった。着いたよ」 瓦礫の路の最深。吹雪が右手をかざすと、轟音と共に隔壁が開く。 #ギガベース日誌_Re

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扉の奥の空間には、プラントから噴き上がり透明な管の中で躍り狂うコジマ粒子の光と、その周囲のユニットに自らの艤装を接続させている四隻の深海棲艦が鎮座していた。 四隻はほぼ同時にキャロルとデューンを睨み付けた後、その殺意にまみれた視線を吹雪に集中させる。 #ギガベース日誌_Re

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「アイザック。この女と子供が、お前の言っていた企業の統括者と、見出した協力者か？」 「臭い……艦娘が増えたわ……臭くてしょうがない……」 「ガキは嫌いだ。絶対に失敗する。ガキはダメだ」 「……」 #ギガベース日誌_Re

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深海棲艦達は本体の数倍ものサイズを誇る艤装に、玉座に座るかの如く身を預け、吹雪達を見下ろしている。 デューンは、一目で彼女達が「姫」クラスの個体より更に強化された存在だと推測した。 「紹介するよ。企業連代表のキャロル・ドーリーと、民間提督のデューン・薙沢だ」 #ギガベース日誌_Re

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「企業連代表？民間提督？」 港湾棲姫に良く似た深海棲艦が、鬼の形相がそのまま貼り付いてしまったような顔を突き出し、容姿に合わぬ幼い声で続ける。 「その女はともかく、ただのガキが何になる？馬鹿にしてるのか？今更海軍側の味方など」 「おい」 #ギガベース日誌_Re

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「あ゛ぁ゛？！」 「僕はもう声変わりは済んだんだけど、お前はまだだろう？年上に向かってそんな顔するもんじゃないぞ」 港湾似の深海棲艦が艤装の砲にデューンに向ける。 #ギガベース日誌_Re

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「港湾、砲を降ろせ。ただの人間相手にそう吼えるな」 リーダー格の戦艦型が指示すると、港湾型は大人しく砲を下げる。 「アイザック。こいつ、いや、この男。何処で拾ってきた？」 「馴れ初めかい？海軍のデータバンクで彼を見つけて、僕から声をかけたのさ」 #ギガベース日誌_Re

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「信頼できるか？」 「いや全然？だけど、彼が抱く艦娘という存在への憎悪は本物だ。たぶん、僕と同程度」 「……そうか」 戦艦型は自らの艤装から降り、デューンの前へと歩み寄った。 #ギガベース日誌_Re

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「紹介が遅れた。私の名はクイーンズランス。海軍や企業の命名法則に則りたいなら『戦艦水鬼』とでも呼んでくれ」 「クイーンズランス？そりゃあんた、BFF本社艦の……」 「あぁ。リンクス戦争で轟沈した、あの船だ」 #ギガベース日誌_Re

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コロニーアナトリアに所属していた傭兵によって撃沈され、その喪失がリンクス戦争激化の一因となったBFF本社艦。デューンは両親からその名を聞いていた。 「あそこで黙ってるのは空母水鬼。元艦娘だ。オリョールでの戦いはお前も耳にしているだろう」 #ギガベース日誌_Re

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「あそこの2人はそれぞれ泊地水鬼、港湾水鬼。アイザック……財団が生み出した純製の強化型深海棲艦だ。多少性格に問題はあるが、志は等しい。使える奴らだ」 クイーンズランスはしゃがみ込み、デューンと目線を合わせた。 「少し触るぞ」 #ギガベース日誌_Re

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その両手で頭部を掴まれた瞬間、デューンは強烈な寒気に襲われた。氷のように冷えた手でデューンの頭を掴んだクイーンズランスは、握り拳ほどあろうかという巨大な瞳孔を押し付けるようにして、デューンの瞳を20秒近く見つめ続けた。 「……同じだ。やはり」　#ギガベース日誌_Re

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「メルツェルと、同じだ」 「は？お前今なんて……ぐえっ」 「艦娘という存在そのものを、私達を生み出した世界そのものを心から憎んでいる。摩耗しているが、死んではいない目だ。今の我々にはそれが必要だ。救済と報復を同時に成す感情が必要だ。お前なら報復を担えると見た」　#ギガベース日誌_Re

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急に手を離されたデューンは、尻餅をついた事で自分が少しばかり持ち上げられていた事に気が付いた。 いや、それよりも。 彼は自分の耳を疑う事で精一杯だ。 目の前の深海棲艦は、何故ORCA事変の首謀者とされる、あのリンクスの名を口にした？　#ギガベース日誌_Re

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「彼の役目は？」 「海軍末端から中間部にかけての情報収集及び、不自然な動きをする各鎮守府の視察及び解体。それと、戦闘の激化促進。AFの確保もさせる予定」 「そうか」 クイーンズランスは自身の艤装へと戻り、吹雪に目配せする。 #ギガベース日誌_Re