幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめ【少しずつ更新中】
ラリスキャニアは、勝負を一対一の決闘から、一対多数、群舞(コール・ド・バレエ)VS独舞(ソロプレイ)に急に切り替えてみせたのだ。 いかな天才といえど、そんな急展開に確実に対応出来るわけがないし、事前にヤマを張って全力で罠を仕掛けてきた相手に対抗できるわけがない。
2018-12-07 02:26:43勝負が決まりかけたその瞬間、舞台に設置されたスクリーンに念写映像のメッセージが流れ始めたのだ。 それは”ライバルからの激励”という形を取った王子への声援だった。
2018-12-11 13:03:45あの不器用そうな王子に、こんな仕込みが出来るわけがない。 十中十四の確率で、これはあの赤毛ロボット魔女の仕業であろう。 それなら、このスムーズかつ機を得た工作の成立にも納得がいく。
2018-12-11 13:03:46あの魔女は、なんだかんだでこの階層の支配者であるし、その使い魔はある意味このアイドル迷宮そのものでもある。 あの悪辣ロボットは、スマルト関連でのこちらの工作を執念深く根に持っていたのだ。
2018-12-11 13:03:46メッセージはそれなりに長かったが、急ごしらえのためか、その内容はどれもシンプルだった。 それぞれ個性的な励ましを伝える空組の三人、あまり関わりがないがその技術を認める他のアイドルたちからの応援、そこまではまあ良かったのだ。
2018-12-11 13:03:47『動物想』からの激励を受けた瞬間、王子の動きは明らかに精彩を取り戻し、その見えざる眼すら輝いて見えた。 だが、最終的に王子の反撃を確たるものとしたのは、その次、最後のメッセージにあった。
2018-12-11 13:03:48シナモリアキラが経済的効果とか、わたしにーさまがどうのと戯言を述べたその直後、”彼”の左手に美しい唇が現れたのだ。 だが、そのスクリーンの中でその唇が口を開くことはなかった。
2018-12-11 13:03:49なぜなら…その瞬間、スクリーンは突如とした現れた乱入者にド真ん中からブチ破られたからだ。 舞台の裏側から、ドロップキックで、ただの一撃での破壊であった。 もちろん、それほどの破壊を成し遂げた者が、ただの凡人やチンピラなわけがない。
2018-12-11 13:03:49画面に降り立ち、ブチ破られたスクリーンの前で優雅にカーテシーを決める球体人形の少女人形。 メイド服がよく似合う砂茶色(オーカー)のアイドルこそ、このぶちこわしの明らかな犯人であった。
2018-12-11 13:03:50そこからは、もう崩落への直滑降であった。 メイド少女の登場により、それまでラリスキャニアが丹念に作り上げてきた舞台のムードは台無しになってしまったのだ。
2018-12-12 07:51:55「どうしてこんなことをした!理由を言え!」 「理由なんか無いわ。たまたまマザコンがママの映像を見ながら一人でリビドーしてたから、ちょっと蹴り飛ばしてやりたくなっただけよ」 「なんだと!」 「なによ」
2018-12-12 07:51:56その後はもう、完全に二人だけの舞台であった。 性的に奔放な王を女性として解釈することで、ミヒトネッセが女性だけを貶める性道徳を笑い者にすれば、対するクレイは、王の側近を保守的だが心優しい父親として解釈して、舞台を害のない喜劇へと切り替えていった。
2018-12-12 07:51:57メガネの貴公子が、男装して男社会に参入するも無残に敗北してその醜さを蔑む美女とされれば、その隣には”彼”から自由の意味を教わって民衆を立ち上がらせる奴隷少女が現れ、性別にこだわる社会との齟齬に苦しむ影の王には、そうした概念に囚われず王を遊びに引き入れる一人の女の子がいた。
2018-12-12 07:51:57そうした激しい舞台の解釈と再解釈が続くなか、ラリスキャニアが、何日も研究して混ぜ合わせた”海の香り”の香水は吹き散らされ、ざわめく触手たちが作り上げるリラックスBGMもかき消されてしまった。
2018-12-12 07:51:57* 「うう…ううう…」 かくして、場面は始まりへと還ってくる。 回想を終えたラリスキャニアは、独り洞窟状に改装したマイルームで、うめいていた。
2018-12-12 07:51:58だが、それは単なる苦悶のうめきではなかった。 そんな状態でありながらも、彼女は未だ逆転のための秘策を模索し続けていたのだ。 なにか、なにかあるはずだ…と。
2018-12-12 07:51:59だが、果たして逆転の手段など残されているのだろうか? 技術は否定された。 ラリスキャニアの技術は確かに高度であった。 けれども、メイド人形と女装王子、その二人の掛け合いと再解釈の応酬には、それを遥か下方に置いてけぼりにするほどの勢いと斬新さ、そしてアグレッシブな双方向の挑発があった
2018-12-13 06:45:00無数の吸血鬼王を樹木に見立て、あちらこちらへ飛び移り戯れたり、繰り返す時空を巡りながら、強迫的な欲望にとり憑かれた十字瞳の老婆女王に”正しい男女のお付き合い”をおままごと形式で叩き込んでいく氷の女装美少年の演技などは、ラリスキャニアには到底不可能であろう。
2018-12-13 06:45:00どれだけ変身と模倣を得意とすると言っても、ラリスキャニアは所詮ただ独りだけのアイドルである。 そうした【使い魔】に分類される関係性で実力派カップルと競い合うには、限度というものがあったのだ。
2018-12-13 06:45:00では、ラリスキャニアが勝負をかけるべきなのは【使い魔】の技法、”関係性”や”コネクション”なのか? ――――否。 あの二人だけであれば、あるいはそうした戦法も通用するかもしれない。 だが、それではダメだ。ダメなのだ。
2018-12-13 06:45:00まず【シナモリアキラ】が、問題だあの”男”は、対立する全ての関係性を自分の力として取り込んでしまうところがある。 その後の大騒動があったとはいえ、ラリスキャニアは、あの”アマランサスの惨劇”を忘れてはいない。
2018-12-13 06:45:01それだけではなく、グレンデルヒやスモー女といったかつての宿敵たちでさえ、【シナモリアキラ】は味方に引き入れてしまっている。 チームや軍団で”彼”に挑むのは、あまりにも無謀であると言うしかないのだ。
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