幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめその2【少しずつ更新中】

幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめ(仮)です。 その1と説明 https://togetter.com/li/1302000 4/19(金) 更新 次回更新は5/3(金)の予定です 続きを読む
0
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

美しい唇が静かに動き、紡(つむ)がれるその言葉は、 「それらは全て、"アキラ様"という唯一無二の価値を得るための"材料" いわば、"引換券"のようなものに過ぎません。 『貨幣』と同じく、愛しく眼差(まなざ)せる対象が無ければ、それは無意味な増減する数値の表現でしかない。

2023-08-12 10:06:09
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

私がどのように臣民に 私には、アキラ様さえあれば良い 彼を所有し守り続けられれば満足です」 とてつもなく重く、切ない感情に満ちていた。

2023-08-12 10:06:51
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ラリスキャニアは勘違いしていた。 そこにあるのは、彼女が予想していたような、不運からくるひねくれと暴走(ツッパリ)などではなかった。 元女王(ディスペータ)が抱いていたのは、深い悲しみ。 そして、どうしようもない諦観(あきらめ)の意志だったのだ。

2023-08-12 10:07:08
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

異形の姿と成り果てたかつての王者は、その決意を静かに語る。 「それら全ては、ただ一つの大切なものを守り抜くための…必要な犠牲、代価(イケニエ)でしかありません。 それを自己中心主義者(エゴイスト)と罵(ののし)りたければ、存分に罵れば良いでしょう。

2023-08-12 10:07:23
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

望むものを唯一に絞り、それ以外を踏み台にしなければならない私を、無力で愚(おろ)かと非難したければ、すれば良い。 私はもう十分に欲をかき、無限に近いほどの失敗を繰り返しました。 もはや二兎を追ったり一石で二鳥をとろうとして、全てを失うのはゴメンです。

2023-08-12 10:08:02
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

“兎”は閉じ込め“鳥”はシメて、どちらも冷凍して保存すれば、永久に手の内に留めておけます。 強大な力の専制支配に対抗するには、自らも強大な力を以(も)って支配するしかない。 それが唯一の選択肢なのです」

2023-08-12 10:09:17
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

語り終えた太古の魔女は、口を閉じる。 あまりにも強く、そして悲痛な意思。 その静謐に込められたのは、一体いかなる感慨か。 少なくとも、本音をしゃべりすぎて後悔したり、炎上を恐れているわけではないだろう。

2023-08-12 10:09:36
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

人面樹から感じられるのは、何ものにも揺るがすことの出来ない不動の確信、それだけなのだから。 その前には、さしもの地下アイドルも、沈黙するしかないように見えた。 だが、彼女はなおも語り続けた。 骨の“有刺骨線”に縛られ、一語ごとに真っ赤な血を吹き出しながらも…それでも、なお。

2023-08-12 10:09:50
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「やっと分かった。 ボクが貴女に、いや、“貴方方”に何を求めていたのかを。 それは、死に向かい合う意志、その証明をすることだったんだ」 「貴方はまた、唐突に何をおっしゃっているのですか?」

2023-08-12 10:10:10
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

あまりに呆(あき)れたためか、なぜか攻撃の手を止め、元女王(ディスペータ)は、またもや質問に転じていた。 あるいはそれは、地下アイドルが指摘した通り、彼女が持つ生来の世話焼き気質に、由来するものだったのかもしれない。

2023-08-12 10:10:39
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ともかく、その隙とも言えない間を狙い、ラリスキャニアは語り続けた。 「ボクは本当は、失敗したり、負けたくないんじゃない。 “死にたくない”んじゃあないのです! ボクは、"ボクら"は、生きたい! 本当の本物として生きて、輝いていたいんだ!

2023-08-12 10:11:17
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

けれど、アイドルは死にます。 どうしようもなく、死んでしまいます。 たとえ戦争がなくても、暴力にさらされなくても! ひとたび発揮された技芸(アート)は、たちまちのうちに人気を失い、飽(あ)きられていく!

2023-08-12 10:11:49
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

敗れ去り、飽きられ、忘れ去られること。 それは、死です。 アイドルは、牙猪(パビルサ)のように、常に死に直面しています。 けれど、だからこそ…アイドルは、ボクたちは、転生していくんです!

2023-08-12 10:12:09
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

一秒一秒、一瞬一瞬新しく、より新鮮で美しい輝きを目指して、生まれ変わっていくんですよ! 究極の先! 一瞬一瞬の全力の、更にその上を目指していく! それが、悪だったり、醜いわけがありません! アイドルは、みんな全力で生まれ変わるのです!

2023-08-12 10:12:34
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ボクらの舞台を観た全てのヒトビトが、新たな舞台を観るたびに、再会するたびに毎回、"時よ止まれ、あなたは美しい"と、そう語れるような、ずっと語り続けられるような永劫の飛翔を目指して!」 また突然の熱弁。 それを最古の女神は、更なる諦観を以(も)ってまたも迎え撃つ。

2023-08-12 10:12:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「世迷(よま)い言を。 いくら転生を、繰り返しを続けたところで、絶対的な力の差はそうそう変わりません。 デビュー作を超えられなかったり、新しいアイディアを思いつけない作家なんて、いくらでもいますし、若い頃の記録を更新出来ないスポーツ選手はリアルでも『e』でも珍しくありません。

2023-08-12 10:13:33
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

生来持ち合わせた、本質的な魂の質と格。 それが圧倒的なまなざしの力の差となって、世界における序列を、勝敗を決めていく。 それでも貴方は、挑戦こそが善であると、思考停止した積極性(ポジティブ)さを押し付けようというのですか?

2023-08-12 10:14:06
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そして、大切なものを限って引きこもることを、いかにもな魔女の邪『悪』だと罵(ののし)るのですか?」 地吹雪のように叩きつけられる、疑問の形をとった否定(アンチテーゼ)の数々。 それらは、呪文となってラリスキャニアを打ちのめす。 けれどやはり、地下アイドルはそれでも立ち上がる。

2023-08-12 10:14:30
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

いや、実を言うと倒されてはいる。 けれど彼女は、打ちのめされるたびに『再転生』によって復活しているのだ。 そして、その反撃は、復活から間を置くことなく放たれる。 「ですから、そのために"死"が必要なのです

2023-08-12 10:15:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

本当に、きちんと死ななければ、本当に生き直すことなんか、転生なんか出来るわけがありません! 確かに、この第五階層でなら、たとえ死んでも転生出来るかもしれません。 けれど! ボクは思うのです。

2023-08-12 10:16:30
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

それだけじゃ、本当に助かることには、古い自分の業(けってん)を捨てて、生まれ変わることにはならないんだ、と。 命をかけなければ… 完全燃焼して死の淵に近づき、自分の力量の果て、自身の限界(りんかく)を確認しなければ、最高の演技(ひょうげん)なんて出来るわけがありません!

2023-08-12 10:17:00
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だから、ボクは…ボクらアイドルは、いつだって生死の淵で自分の限界を覗いているのです! 『現場』で転生を続ける生き様! ボクらアイドルが持つ、限界を除く力! それこそが、これから貴女を打ち倒す、ボクの決め業(ワザ)です!」

2023-08-12 10:17:19
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「仮にも『死の女神』ーー元・死の女神たるこの私に『死』を説きますか。 本当に身の程知らずですね。 あるいは既に、貴方の芸術的センスは『死んで』いるのではありませんか?」 静かなる圧迫。 それは実際の『死』に至る脅威だった。 圧倒的な力を持つ視線が、地下アイドルを押し潰さんとする。

2023-08-12 10:18:05
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そこへ更に、駄目押し のように追加で問いが投げかけられた。 「そして、ずいぶんとおしゃべりが長いようですが…“助っ人”とやらは、どうしたのですか?」 地下アイドルのあまりの長広舌に、すっかり毒気を抜かれてしまったのだろうか。

2023-08-12 10:18:43
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

先程までの怒りはどこへやら、人面樹(ディスペータ)は、すっかり余裕の構えだ。 まあ、それも当然。 この実力差では、何をしたところで形勢(けいせい)を覆(くつがえす)すことは不可能だろう。 しかし、それでも元女王様は、その質問だけは、せずにはいられなかった。

2023-08-12 10:19:11
1 ・・ 31 次へ