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幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめその2【少しずつ更新中】

幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめ(仮)です。 その1と説明 https://togetter.com/li/1302000 5/18(土) 更新 次回更新は5/31(金)の予定です 続きを読む
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白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

なにしろ、目の前のアイドルは、一度は己と宿敵を出し抜いたのだ。 たとえそれが偶然であるにしろ、少なくとも“その偶然を打ち破った”という実績は作っておかねばならない。 呪術世界ゼオーティアでは、偶然は容易(たやす)く必然へと変わってしまうのだから。

2023-08-12 10:19:51
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ここでは、牽強付会(けんきょうふかい)が『事実』となり、思い込まれた妄想こそが『現実』になってしまう。 この世界において公的印象(パブリックイメージ)の操作は、完全な勝利を得るためには不可欠なのである。

2023-08-12 10:20:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そうした思いが、最後の最後で未練となり、かつての女神に一手を誤らせ、攻撃より質問を優先させてしまった。 けれど…それは、悪手だった。 幼き日、好奇心だけを胸に冒険を繰り返していた前世/来世に戻ってしまったかのような、反射的な対応(うっかり)であったのだ。

2023-08-12 10:21:19
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そして、その落ち度の結果は既にーー 「いやそういえば、貴方、“もう一人”は、一体どこにいきました? いつから、分身を解除していたのですか?」 ーー彼女の重大な見落としという形で、現れていたのである!

2023-08-12 10:22:07
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

その時、地下アイドルは、自らの特技を追加で発動させていた。 『心の抽斗』(こころのひきだし) それは、『夜の民』特有の収納能力。 この能力には特徴がある。 ーー取り出すだけなら、何の動作も不要なのである。 なにしろ、早着替えに使っている英雄もいるくらいだ。

2023-08-26 00:30:02
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だから、いくら全身を拘束されていても、ラリスキャニアが一つの物体を取り出すことに、何の問題もなかったのだ。 それは、全ての拘束を押し退けて出現した。 流石(さすが)の女王も、こんな戦法は予想出来なかっただろう。

2023-08-26 00:30:26
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そもそも、『夜の民』が『心の抽斗』にこれほど大きいものを入れていること自体が極めて例外的なケースである。 呪力回復のため、大量のお菓子を迷宮に持ち込む探索者でさえ、階層を一つ越える頃には、『抽斗』の中身もほぼ空になっているのが、当たり前なのである(※探索者協会調べ)

2023-08-26 00:31:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

だが、彼女が取り出したその物体は、持ち運ぶのも難しいほどの、大きさと体積を誇っていた。 それは霊長類型の形状(シルエット)を持ち、手も足もあった。 けれど同時に、明らかに生命ではなかった。

2023-08-26 00:31:42
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

タイトなスーツ、眼鏡、セミロングの髪、やけに描き手の力が入っている嫌味な表情。 そして、そこらの木や布、がらくたを集めて適当に組み上げられかのような、粗雑なボディ。 それら全てが、それがある一つの存在の模造物であることを示していた。 つまりそれは…ラクルラール人形であったのだ。

2023-08-26 00:32:30
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「やはり、そういうことですか!」 それを見て、人面樹(ディスペータ)は、猛(たけ)りたった。 自分に対抗出来るような相手なんて、そしていちいち邪魔をしてくるような敵手なんて、この世にただ一人しかいないに違いない。

2023-08-26 00:33:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

それは、彼女の根幹を成す思い込みであり、『信念』であったのだ。 だからこそ、次の瞬間、彼女は全力で攻撃を仕掛けていた。 高速で骨の枝が伸び、人形を大きく薙(な)ぎ払ったのだ!

2023-08-26 00:34:42
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

一撃だった。 その一撃で、人形はあっけなく壊れて…ボールのように首が飛んでいく。 「これで…いや、あっけなさすぎる…?」

2023-08-26 00:34:57
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そう、その首は、あまりにも無抵抗に飛んでいった。 まるで、最初からそのように『設計』されていたかのように。 そして…その軽すぎる感触は、熟練の術師が己が失態に気づくには、十分なヒントであった。 元女神の驚愕(きょうがく)が、また思わず口から漏(も)れ出す。

2023-08-26 00:35:28
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「まさか、それが狙いで!?」 彼女は気づいた。 人形は、他の何かを引き出すカギ、一種の『索引』だったのだ。 言ってみれば、罠である。 つまり、首を無くすことで、初めて意味を持つスイッチ式のトラップ。 それが今、起動する…!

2023-08-26 00:36:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「傷口から、血!?いや、この“色”は!」 それはまるで、悪質なパロディだった。 切断された人形の首。 そこから、『朱』色が一斉(いっせい)に辺(あた)りに溢(あふ)れ出したのだ。 それは、血ではない。 それどころか、液体ですらなかった。

2023-08-26 00:36:51
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「この『光』は…!?」 溢れ出したのは、部屋全てを満たさんとする怪光。 夕焼けを思わせる色彩が、洞窟のような部屋を溶岩のように染め上げる。 まるでワインボトルを落としたかのような有り様だが、 もちろん事実は異なる。

2023-08-26 00:37:41
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そこで、どさくさに紛(まぎ)れていつの間にか牢(ろう)から脱出した“興行主”が、朗々とした声で 事態の説明を語り出した。 「夢へと繋がる“絆の扉”! それを通じて舞台を開き、再演を以(も)って、観客と一緒に生まれ直す! これが“ボクら”の転生です!」

2023-08-26 00:38:07
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そしてなぜか、その背後では、牢獄の役割を抜け出した二本の腕が、揃って黒い短光槍(サイリウム)を振っている。 瞬間、奇怪な状況に思考が追いつかず、またもや呆然(ぼうぜん)とするしかない元女王(ディスペータ) もちろん、逆転を目指す地下アイドルが、その隙を逃(のが)すわけもない。

2023-08-26 00:38:46
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

すると、 ガチリ という音が部屋に響いた。 どこかで、歯車の動く音がする。 その作用は、すぐに現れた、 これまでもひっそりとラリスキャニアの自室に飾られていた品、その留め具が外れたのだ。 狩人の絵が、落ちる。

2023-08-26 00:39:52
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ラリスキャニアの恐怖の、そして見事コンクールに受賞した名誉の象徴が。 床に叩きつけられ、塵芥(ゴミ)のように打ち捨てられる。 だが、地下アイドルはそれに目も向けない。 そんな余裕は、どこにもないからだ。 今、見るべきは、絵が飾られていた場所。 そこに隠されていたのは……

2023-08-26 00:40:26
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「黒い丸…『夜月』(スキリシア)ですか!?」 そう、それは呪術の基礎の基礎、類感の業(ワザ) かつて、原始の狩人たちが、失われた獲物を乞(こ)い願って行ったという、最古の呪術。 あらゆる分類が渾然一体(こんぜんいったい)となっていた洞窟の呪い。

2023-08-26 00:41:01
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

理想を観る『邪視』(まなざし)、それを具現化し有り得ざる奇跡をただの事実へと引き下ろすための『杖』(ぐげんか)、狩人と獲物の『使い魔』(かんけいせい) そして、最後に……

2023-08-26 00:41:28
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「具象化された図像は、異界へと、未知なる明日へと続く“扉” そしてボクが、その“扉”の案内人に、世界を変える蝶になってやります!」

2023-08-26 00:41:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

大仰(おおぎょうな)『呪文』(MC)が、それを補完する! 地下アイドルは、そこで再度『大見得』を切った。 黒い月を背景にしたその背からは、はっきりと、青い羽が広がっている。 だが当然、不用意な発言には、即座に批判(ツッコミ)が入る。

2023-08-26 00:42:30
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「夜に飛ぶのは蛾ですよ!」 「では、両者に差が無いことは、ご存知ですか? スキリシアでは、夜に蝶が飛ぶこともーー!」 だが、ラリスキャニアはそれを軽く躱(かわ)した。

2023-08-26 00:43:41
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