幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめその2【少しずつ更新中】

幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」のまとめ(仮)です。 その1と説明 https://togetter.com/li/1302000 5/31(土) 更新 次回更新は6/14(金)の予定です 続きを読む
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白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

あえて弱所を用意しておくことで、肝心の大言壮語への半畳(まぜっかえし)を防ぎ、主導権を握り続けるという、『呪文』戦の基本技術である。 とはいえ、この程度は幼年学校の生徒でも容易にこなす技法。 元女神(ディスペータ)も、本気で阻害しようと思ったのではないだろう。

2023-08-26 00:43:59
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

この程度の牽制(ジャブ)は、相手の真髄を暴くための弱い“打診”に過ぎないはずだ。 その証拠に、“幹”に浮かぶその表情には、一切の動揺が見られない。 しかし、地下アイドルがその次にとった行動への反応(リアクション)は、大きく異なった。

2023-08-26 00:44:26
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

なにしろ、ラリスキャニアは、その時、ずっとマントの隠し(ポケット)に持っていた紙の束を、彼女のファンからの手紙を突然取り出してーー ーーそれらの手紙を、食べたのだ。 その顔は青い鹿となり、むしゃむしゃと何通もの封筒、幾枚ものハガキを咀嚼(そしゃく)していく。

2023-08-26 00:44:51
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

かくして、呪術が進行する。 唖然(あぜん)とする人面樹(ディスペータ)を、その精神を置き去りにしたまま。 見れば、鹿頭の後ろには鉄願の民の頭が生えていて、ちょうど鹿頭が帽子のようだ。 いや、むしろ逆なのかもしれない。 鉄願の民の方が、鹿頭の背後を守護する魔除けの飾りなのか。

2023-08-26 00:45:21
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ともかく、もうひとつの頭は語った。 「死を司る魔女に、死に抗うものはただ一つ。 そう、『生命』! そしてその象徴たる現象! 春、過剰な消費、流行ファッション、植物の繁茂(はんも)といった『生育』や『成長』を表す振る舞い!

2023-08-26 00:45:38
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

更にそこへ付け加えるなら、それは『生育』を前提としてそれを消費する行為! すなわち『食』こそが、偉大にして強大なる貴女への理想的な対抗手段なのですよ! 魔女ディスペータ!」 堂々たる宣告。 だが、それを受けた相手は……

2023-08-26 00:45:54
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「そ、そんなものを食べたらおなかを壊しますよ!」 どうやら、まだ異様な振る舞いを目撃した衝撃からは、立ち直れていなかったようだ。 人間(ロマンカインド)、狼狽(うろた)えると本性が出るというが…元女王(ディスペータ)は、再生者たちの母。

2023-08-26 00:46:17
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ならば、彼女の『地』が、かなりの母性愛(オカン)気質であると言うのは、別に驚くべきことではないのかもしれない。

2023-08-26 00:46:33
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ともかく、その『母』の危惧は当たっていた。 なにしろ、バクバクと手紙を食べ続ける地下アイドルの口から、紫色の煙が漏(も)れ出している。 耳からも身体からも吹き出しているアレは、誰がどう見ても悪質な呪詛であろう。

2023-08-26 00:46:53
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

もっとも、呪術研究が進んだ今日日(きょうび)そんなものを仕掛けるのは、よほどの例外的な事例(ケース)でしかあり得ない。 こんな古式ゆかしい呪いは、効果が不明瞭(ふめいりょう)なうえに、非効率なまでに大量の呪力を要求してくるからだ。

2023-08-26 00:47:13
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

現代でわざわざそんなものを試みるのは、よっぽどの専門家(プロ)か、運任せの嫌がらせか、あるいはとてつもなく執念深く恨みを抱いた者ぐらいであろう。 それは例(たと)えば…そう、地下アイドルの反発者(アンチ)やストーカーや、ライバルのような。

2023-08-26 00:47:37
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

つまり、ラリスキャニアにこうして"ファンレター"を送ってきてもおかしくない者たちであり…だからまあ、そういうことであった。 と言うよりこの場合、それを熟知していながらも、あえてその呪詛をむしゃむしゃする地下アイドルの方が、よっぽどおかしいのかもしれない。

2023-08-26 00:48:18
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そもそも彼女は、最初からそれらが反発者(アンチ)私信(メール)であることを分かったうえで、それを保管し続けていたのだ。 こちらの方が、よほど驚くべき反応(リアクション)である。 類は友を呼ぶのだろうか。 あまりの異常事態を目撃して、とっさに更(さら)なる『母』の叱責が飛ぶ。

2023-08-26 00:48:34
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「ほら見なさい、何でも手当たり次第に口に放り込むからです! 下手すると魂まで損壊して、復活も転生も出来なくなりますよ! 早くぺっしなさい!ぺっ!」 とても、少し前まで全力で殺し合おうとしていた者の台詞(セリフ)とは思えない。

2023-08-26 00:48:47
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「大丈夫! ファンからの想いこそ、アイドルの動力源! 反発者(アンチ)も強火オタに変えてこその地下アイドルです! 『猫の国』(いせかい)でも言うそうですよ、”毒も皿ごと喰らえば無問題(モウマンタイ)”だと!」

2023-08-26 00:49:01
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ラリスキャニアは、相変わらず力強く反論するが、その口からは黒っぽい液体がこぼれている。 そして『猫の国』(いせかい)にそんな語句は無い。 思わず顔をしかめた『母』は、次の瞬間、別の要因で更に顔を歪めることになる。

2023-08-26 00:49:44
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

「これは…! そして、こ、この甘い香りは…?」 こぼれた液体は、またもや文字の形を描いていた。 その静謐な呪文が何を意味するのか、それはもちろん―― ゲンリノヨウセイカタリテイワク

2023-08-26 00:50:04
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

もう、"とりあえずこれを言っておけばなんとかなる"という扱いになってきた妖精呪文である。 実際には、そんなことは無いはずなのだが…寄生異獣よろしく己を蝕(むしば)む呪詛をも力に変えたラリスキャニアが、強引にその呪力を注ぎ込んで、効果を発動させているのだ。

2023-08-26 00:50:34
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

その結果、事象は書き換えられる。 口から漏れた液体は、甘いチョコのプレゼントであり、身体から出た煙はファン特製の香水である。 愛憎を反転させることにより、その効果も逆転。

2023-08-26 00:51:06
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

結果、地下アイドルの呪力と技量に大幅な増幅(ブースト)がかけられ…今、“もう一人”のラリスキャニアが待つ場所へ、夢世界への扉が、【門】が開かれる!

2023-08-26 00:51:21
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

朱色が辺りを覆う中、人形の不在の頭部を通して、異界の光景が漏れ出していた。 それは、高度な端末を必要としない、原始的な映像の受信。 疑似的で間に合わせ(ブリコラージュ)な生贄を用いた、コスト踏み倒しの接続呪術。 すなわちーー 「中継、繋がってますかー!」

2023-08-26 00:51:38
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

『夢』世界の実況中継である! そして、言葉と同時に、実況者の背からもう一対の青い翼が勢いよく飛び出す! 二対の翼は上下真逆の方向に向かい、構造色の輝きを放ち始めた。 その姿は、あたかも珍しき蝶のようであった。

2023-08-26 00:51:58
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

ーー少し前の時点、『夢』世界にて。 そこでは,、風が吹き始めていた。 五回転、六回転、七回転! それは、巨人と小人の戦い。 いやいっそ、象と蟻(アリ)の戦いと言っても良さそうなほど、圧倒的な体格差の戦闘(バトル)だった。

2023-09-09 00:05:19
白灰@無理せず少しずつ @hakuhai

そう、夢のラリスキャニアは、巨人の周囲をぐるぐると回り、ひたすらに攻撃を回避しながら己の演技(アピール)を叩き込んでいたのだ。 それは、現実と夢で分たれた二人の地下アイドルの、卒業と自由のための決闘(ダンス) だが一見したところ、それはとても陽気な舞踏のよう。

2023-09-09 00:05:47
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