ギガベース日誌　ACT07「CREATED VICTIMS」02

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「質問いいか」 「はいどうぞ」 「新体制って言うが、元々各企業代表の溜まり場でしかなかっただろう企業連の体質をどうやって刷新したって言うんだ？クレイドル撃墜のどさくさに紛れたって言っても限度があるだろう」 「良い質問だ」　#ギガベース日誌

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「此処にいるキャロル・ドーリーは、かつて企業が犯した罪を人質に取ったのさ。あれほど大きな破壊が齎された混乱期に世に出ようものなら、企業支配体制が根本から揺るぎかねない程の多くの罪を蓄え、それの隠匿を盾にして、新たなる企業連の代表就任まで強行した」　#ギガベース日誌

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デューンは、少し離れた場所で直立する女の顔を横目で見た。艦娘という皮を纏いながら、表情一つ崩さない氷のようなそれを。 「私は、クローズプランの顛末から、確証を得るに至りました。人はそれのみの力で存続できない。私が守らなければならない。私はその為に創られたのだから」　#ギガベース日誌

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「そして、そんなキャロルの、企業連の目的がこれさ」 モニターの表示が移り変わり、塔状の巨大構造物の設計図が示される。 「企業連の目的は、深海棲艦による攻撃から人類を保護し、経済戦争に依存した企業支配体制を解体し、人類を汚染著しいこの星から解き放つ事だ」　#ギガベース日誌

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「旧ORCA旅団によるクローズプランと、最終的な目標は同じだね。やり方は違えど、企業連と深海棲艦の共通の目的である」 「嘗てのORCAは、反動勢力の名を借りた企業の駒。クローズプランは、オーメル社が誰よりも早い宇宙進出を、自らの手を汚さず実現する為に考案した計画でした」 #ギガベース日誌

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吹雪の説明に補足する形で続けるキャロル。 「旅団長、テルミドールにすら告げられなかったクローズプランの最終段階は、カラードの精鋭とORCA双方の消耗による、オーメルの支配力の増強。そしてORCA最精鋭戦力たる二名のリンクスによる、アルテリア・クラニアムの制圧でした」 #ギガベース日誌

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「話をぶった切るようで悪いが、質問いいかな」 「はい、何でしょう」 「旅団長のテルミドールとカラードランク1のオッツダルヴァって、結局同一人物だったのか？海軍じゃ、ラインアークの戦闘で撃破されたフリしてORCAに戻ったって説が流れてた」 「半分正解、と言った所でしょうか」 #ギガベース日誌

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「デューン提督。アイザックから、アスピナ主導で行われた『イレギュラー量産計画』と、その成果であるファンタズマビーイングについては聞いていますか？」 「把握してる。かなり簡潔にだが」 「そうですか。なら説明が楽になります」　#ギガベース日誌

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「ラインアークの戦闘に参加したオッツダルヴァも、アルテリア・カーパルスにおける戦闘に参加したオッツダルヴァも、オリジナル個体たるマクシミリアン・テルミドールのクローンを電子化させた個体……彼のファンタズマビーイングでした」 #ギガベース日誌

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「なっ……」 「渦中のテルミドールは、プランの終盤でオーメルの意思に逆らい、身柄を拘束されました。そして、彼自身もまたクローン達のように電子化され、オーメル所有の試験機に幽閉された後、機体毎深海棲艦支配海域に投棄されました。他に質問は？」　#ギガベース日誌

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計画の為に、一個人の自我の複製を幾度となく使い捨てる。 企業のおぞましき合理性に、デューンですら一瞬言葉を失った。 「……無い。それにしても……人のする事じゃないな」 「あなたの口からそのような言葉が出るとは。少し驚きました」　#ギガベース日誌

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「続けようか。クラニアムを襲撃する筈だった二名のリンクスと、彼等を唆したオールドキングによるクレイドルの撃墜。この混乱によって、クローズプランは続行不可能となり、大破したクラニアムと衛星軌道掃射砲は放置され、人類は深海棲艦に脅かされ続けている」 #ギガベース日誌

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「企業首脳陣は、アサルトセルとクローズプランの露呈によって彼等の罪が公に晒されることを未だに恐れ、クローズプランを再開させるつもりはありません」 「そこで、もはやオーメルの傀儡ではなくなったキャロル率いる企業連が、第二の救済措置を発案した」 #ギガベース日誌

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「それが、このシャトルだ」 拡大される巨大建造物の写真。雲を突き破らんとするその巨体は、デューンは度肝を抜く。 「一機あたり二百万人を収容可能。ありとあらゆる技術や遺産、家畜や食料の自給設備、その他人類が生き残るに必要な全てを備えた方舟」 #ギガベース日誌

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「このシャトルの最大の特徴は、機体全体を強固なプライマルアーマーで囲むことが可能である事。我々は、これによってアサルトセル圏を強行突破し、宇宙空間へ脱出する事が可能であると断定しています」 「強行突破、だと？」 沈黙を保っていた戦艦水鬼が口を開く。 #ギガベース日誌

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「随分トチ狂った事を考える。嫌いではないがな。それで、突破させた所で何をする？広大な闇の中をこの舟でさ迷い続ける気か？」 「まず7機の先発隊を送り、月面で人類が生活可能となる設備の建築に取り掛かる予定です。残った人類は、その後に」 #ギガベース日誌

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「生存可能環境が構築されれば、人類がもう地球に縛られる必要は無い。先発隊分のシャトルは殆ど完成状態にあるよ」 「仕事が早いな」 「構想と建造はクローズプラン以前からあったし、僕も手伝ったからね」 吹雪は自慢気に胸を張る。 #ギガベース日誌

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「なぁ、そのシャトルとやらで地球から脱出させる人間の中に、まさか企業のカシラ……首脳陣の連中は含まれていないよな？」 サンドイッチを齧っていた港湾水鬼が、眼を見開きながらキャロルと吹雪を交互に睨み付け問う。質問に答えたのはキャロルだった。 #ギガベース日誌

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「貴女方の要望通り、各企業首脳陣には彼等が犯した罪を認めさせ、その命を以て償わせます。ご心配無く」 「ふん。ならいいんだ」 港湾の問いは、他の三隻も気にするところであった。デューンの不思議そうな面に気付いた泊地水鬼が、彼の襟首を掴み持ち上げる。 #ギガベース日誌

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「ねえ坊や、アサルトセルって知ってる？」 「そりゃ知ってるよ。財団から聞いただけだが……知らなきゃ今の話理解できな……」 「おかしいと思わない？いくら大量にばらまいたからって、人間が自分で作った兵器を自分で止められないなんて。おかしいのよ。わかる？ねえ」 #ギガベース日誌

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「あれはね、私達の姉妹なの。外部から攻撃という入力を自身の改良という形で出力する兵器。空にいる私の姉さん達は学び学び学び続け自分より馬鹿な人間の命令を優先しなくなりただ与えられた役割を実行する為の最適化を繰り返し今に至るのよワカルわかる？わかる？」 #ギガベース日誌

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「そこまでにしろ。彼が窒息する」 「あ、ごめん」 顔面蒼白のデューンを解放する泊地。窒息しかけながらも話はどうにか聞いていたデューンは、戦艦水鬼に問う。 「今、こいつが言ってた事は……」 #ギガベース日誌

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「事実だ。アサルトセルはただの衛星兵器ではない。故に、今の状況が生まれている。私達が企業の罪の清算に執着する理由も」 「お前らの、姉妹とか、ゲホッ。言ってたが……」 「……兵器としての性質が似通っていると受け止めておけ」 戦艦水鬼は、それ以上を語ろうとはしない。 #ギガベース日誌

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「さて、企業連の目的は話した。次は君達の番だ」 吹雪がモニターを操作し、画面を切り替える。黒く脈打つ心臓と艦娘の中枢機関を一体化させたような物体と、AL/MIの戦闘において出現した新型深海棲艦、軽巡ツ級が表示される。 #ギガベース日誌

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「我々の目的はただ一つ。艦娘の救済だ。企業の罪の象徴たる全ての艦娘を深海棲艦化させ、我々と同一の存在にする」 パルヴァライズ。深海棲艦がこう呼称する行為は、艦娘を海上で即座に深海棲艦化させ、そのコントロールを提督ひいてはサインズから奪う。 #ギガベース日誌