ギガベース日誌 ACT07「CREATED VICTIMS」02

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

暗く、静かな部屋の中。 一人の男が、目を覚ました。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:17:22
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

日課である午後の祈りの途中で寝てしまった為か、窓から注ぐ光は夕暮れの光ではなく、既に月明りのそれであった。 ガタが来始めている自身の身体を、軋む音が聞こえんばかりに動かし、男は部屋の電気を点ける。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:18:20
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「……また中途半端な」 独り言に舌打ちが続く。生活リズムの崩壊は、それが微細であろうと、男にとって大きなストレス源だった。コジマ粒子に侵され尽した肉体は、些細な変化で連鎖的に不具合を訴えかねない。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:18:53
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常に安全な立場で有利に立ち回る事が、男の人生であり生きる意味であった。 たとえ、それを突き詰めた結果、世界を戦火の泥沼に蹴り落としてしまおうとも、彼が罪悪感で眠れぬ夜を過ごすような事は一度も無かった。故に、彼は自身の肉体への負荷については人一倍敏感だった。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:20:06
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就寝時間は過ぎていたが、眠気は嘘のように消え失せていた。生活リズムを正すべく、睡眠薬を飲む為にコップに水を注ごうとした時、男は異変に気が付いた。 ウォーターサーバーの水位が、僅かに波打っている。 「……地震か?」 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:21:37
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揺れる水面。断続的に与えられる揺れは、視覚的な証拠を得た瞬間、全身で感知できる程のものとなった。 彼が住む場所は、企業によって管理された、地上に残る数少ない除染区域。体感できる程度の揺れが探知されれば即座に警戒を促すアナウンスが放送される筈だが、音沙汰無い。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:22:52
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揺れは止まない。男は端末を手に取り、除染区域の管理部との連絡を試みる。 しかし、端末は無感情な電子音を返すばかりで、連絡は通じない。 男が部屋の外に出て状況を確認しようとした瞬間、爆音と共に、今までの比にならない揺れが彼を襲った。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:23:49
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揺れというより最早衝撃でしかないそれによって、男は派手に転倒する。 ロッカーの中に閉じ込められたまま外側から叩かれるような音と感覚。困惑する男の目の前の壁が、続く爆音と同時に崩れ落ちた。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:24:40
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「阿賀野一番乗りーっ!……って、早速見つけちゃったわ!」 「んなっ……」 壁を突き破り家の中に侵入してきたのは、黒と真紅のツートンカラーに塗装された艤装を見に纏う少女。紛れも無い艦娘であった。 「はしゃぎ過ぎよ阿賀野姉。まだこいつと決まったわけじゃないわ」 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:25:16
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「でもでも!50から60ぐらいのおじさまって条件にぴったりじゃない?!早速本人に聞いてみましょう!」 「正直に吐くわけないでしょ。私が照合するわ」 正面に立つ阿賀野と能代の後ろから現れた同型の軽巡艦娘矢矧が、ゆっくりと男に接近する。逃げようもない。男は覚悟を決めた。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:26:05
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「失礼します」 矢矧は男の手首を掴み、掌を艤装と接続された端末に押し付けた。 「照合完了……本当にターゲットだわ」 「ほらね?ほらね!?見たぁ!これが阿賀野型の実力よ!酒匂!他の娘達も呼んじゃいなさい!」 「もう呼んだよ~」 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:26:44
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「君達……何を……」 「安心してください。言う通りにしていただければ、私達は貴方を傷付けたりはしません。しかし、ここまで来るのに少々荒っぽい手段を必要としてしまった。驚かせてしまい、申し訳ない」 矢矧の語り口に敵意は見受けられない。男の心拍数は少し落ち着いた。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:28:10
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矢矧は男に少し待つように伝え、3人の姉妹と共に通信機器に向け喋り続ける。 破壊された壁面の向こう側ではドーム状に展開された模造空が崩壊し、本物の月明かりが刺し込んでいる。 幻想的なその光景に呆気取られていると、新たな艦娘達が次々と男の家の周囲に集まってくる。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:29:47
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「もう終わったって本当ですか?皆遊び足りないって思ってるでしょうに」 「別働隊は貴女みたいなサディストばっかりじゃないのよ、鹿島」 「速吸、ただいま到着しました!」 「待ってたわ。彼のバイタルを平常化させつつ、移送の準備を」 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:30:37
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補給艦速吸は、慣れた手つきで艤装から測定器具を取り出し、男の身体に接続していく。後から駆け込んできた伊良湖は、親切さを隠さない手つきで男に水と栄養食を手渡す。 そして、黒をメインカラーとした艦娘達の中で一際目立つ純白の軍服と艤装に身を包んだ艦娘が、男の前に現れた。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:32:53
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「派手に壊しやがって馬鹿共が……。さて、先の非礼について謝罪させて頂く。貴方を確保する為には、こうする他無かった」 「……このタイミングで私の身柄を拘束しに来るとは……君達、オーメルの差し金かね?」 それを聞いた艦娘は、わざとらしいほどに豪快に笑う。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:34:48
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「何がおかしい」 「ははは……いやいや、重ねて失礼した。残念だが我々はオーメルの艦娘ではない。これを見てもらえば、理解していただけるかな」 艦娘は整った軍服の襟をめくり、雪のように白い首筋を見せつける。その肌に刻まれたエンブレムを見た瞬間、男は絶句し、凍り付いた。 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:35:22
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「申し遅れた。私は、ギガベース鎮守府第2艦隊旗艦兼指揮官代理。正規空母、グラーフ・ツェッペリンだ。我々と共に来てもらうぞ、エミール・グスタフ。我がAdmiralが、貴方に聞きたいことが山ほどあるらしいのでな」 #ギガベース日誌

2018-12-28 17:37:12

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「さて、ようやく役者が揃ったんだ。僕等はお互いの最終目的をよく理解しておく必要がある。そこで今日は、この同盟をより強固にする為の親睦会兼説明会といこうじゃないか。特に、今日連れてきたデューンは、事の全貌の1割も理解できていないだろうしね」 #ギガベース日誌

2018-12-29 00:14:27
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クイーンズランス他3隻の深海棲艦上位個体、キャロル・ドーリー、デューン・薙沢が一堂に集う伏魔殿の最奥。財団を名乗る駆逐艦吹雪は、そこら中を駆け回りながらモニターやポインターといった機材を準備する。 「まめだねぇ。まぁ、実際そうしてもらえると有難い」  #ギガベース日誌

2018-12-29 00:18:35
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持参したサンドイッチを港湾水鬼と分けて食していたデューンは、吹雪が10分以上かけて準備した巨大モニターを一望できる位置に移動する。 「さて、準備完了。じゃあ、始めようか。まずは、キャロル率いる企業連の目的からだ」 #ギガベース日誌

2018-12-29 00:21:53
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「統治企業連盟、通称企業連。企業支配社会における秩序と平和維持をお題目に成立したこの連合体は、ORCA事変以前は当然のようにまともに機能していなかった。形骸化した企業の総意とは即ち、政治力に秀でていたオーメルの意思の代弁に他ならない」 #ギガベース日誌

2018-12-29 00:25:23
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「ORCA旅団所属リンクス、オールドキングが起こしたクレイドル撃墜事件によって、企業は多くの力を失った。彼等が対応と復興に追われる中、企業支配体制の盤石さを宣伝する看板でしか無かった企業連は、キャロル率いる新体制となって生まれ変わった」 #ギガベース日誌

2018-12-29 00:29:48
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