「フラグメンツ・オブ・エピック:ディープ・オーダー」「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#4
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そしてハンターは剣斧を、艤装へと突き立てる!「イヤーッ!」KRASH!KARRA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA!RA……「エントリイィィィィィィ!!!!」KRA-BOOOOOM!咆哮!そして爆発! 48
2018-12-31 12:26:00白亜の鱗と、赤い血がいくつか宙に散らばった。サメめいた頭部パーツが破損し、艤装は大海龍から脱落していく。かの龍は身じろぎし、重力に従い落ちていく。「何たることを!」ネクロマンサーは叫び、フレッシュゴーレムへと命じて走り出す。 49
2018-12-31 12:29:00「待て!」「「「イヤーッ」」」ライオンハートは追いかけようとした。しかしフレッシュゴーレム達はドーム状に覆い尽くそうとする。ネクロマンサーは血のように青紫色の霞を撒き散らす己の艤装を見上げた。その顔は、降って湧いた理不尽への焦燥に駆られている。彼の者は衝動的に叫びを上げた。 50
2018-12-31 12:32:00「あの艤装は私の最高傑作!あれさえ残っていればいくらでもやり直せる!そうとも、誰も私の上に立つことはできない!王であろうが、神であろうが、星を喰らう鬼だろうが!あれだけは壊させない…!」フレッシュゴーレムが、落下予測軌道へと辿り着く。その巨大な腕を広げ、受け止めようとした。 51
2018-12-31 12:35:00ネクロマンサーは落ちてくる己の艤装の奥に、光る物を見た。彼の者の深海強化視力は、その正体を知る。知ってしまう。それは夕日に照らされ、光を反射した蒼黒の甲冑である。それは大海龍の尾を蹴り、ロケットめいた速度で降り来たるハンターである。 52
2018-12-31 12:38:01そしてそれは、今まさに赤黒い稲妻となって刃を振り下ろさんとする理不尽である!ネクロマンサーは目を剥いて叫んだ!「ヤ、ヤメロー!?」「イィイイイヤァーーーー!!」SLAAAAAAAAAASH!赤黒い稲妻が、漆黒の装甲を斬り砕く! 53
2018-12-31 12:41:00夥しい量の装甲片を周囲に撒き散らし、そして遂には両断せしめたのだ!そして少し間を置いて、大海龍が海面へと着水!戦術兵器の大爆発めいて海水を噴き上げ、大瀑布を巻き起こした!ゴウランガ! 54
2018-12-31 12:44:00…巻き上げられた海水が、スコールめいて降りしきる。この現実感を伴わぬ圧倒的な出来事を前に、ネクロマンサーはただ濡れるに任せ困惑し、呻いた。「こんな、こんな事が!」「起こりえるのだ」背後から声!ネクロマンサーは振り返りながらチョップで薙ぎ払う!「イヤーッ!」「イヤーッ!」 55
2018-12-31 12:47:00そのチョップにチョップで以て鍔迫り合うのは吹雪だ!ネクロマンサーは見た。ドーム状に覆いを形成していたフレッシュゴーレムの一体が、胸に大きな孔を穿たれ、緑に燃えて沈み行く様を。ネクロマンサーは怒り狂う!「馬鹿な…このような道理が通るものか…!」 56
2018-12-31 12:50:01「理不尽が道理を殺す。それがインガオホーなればこそ…!」「何故そこまでする!貴様は人間だ!艦娘だろう!何故深海棲艦を助ける!何故関係のない事象に首を突っ込む!何故、何故だ!」「決まっている」吹雪は静かに言った。その左目からは緑の炎光が溢れ、左顔を無貌めいて覆い隠す。 57
2018-12-31 12:53:01変わる事のない、狂う事のない鶯茶色の右目がネクロマンサーを見返した。「私の戦いは今を生きるもの達の為。死んでしまった、殺してしまった者たちの弔いの為…そして、私が望んだ未来で生きる為だ」「下らん!そんなものに価値はない!」 58
2018-12-31 12:56:01ネクロマンサーは、絶望を吐き出すように反論!「こんな、放っておけば不可避の宇宙的破滅を迎えるこの星に未来はない!生命に価値はない!ただ私の死者の軍団のリソースたるべし!」「私が価値があると言った!」吹雪のチョップにカラテが滾る!その腕が松明めいて緑色に燃え盛る! 59
2018-12-31 12:59:00「貴女にとって価値が無くとも、私はそこに価値を、意味を見た!ならば奪わせぬ!何もかも!」「ほざけ狂人めがぁ!イヤーッ!」「イヤーッ!」「「グワーッ!」」双方の顔面にクロスカウンターめいてカラテストレート直撃!吹雪の体がカラテ反動で宙へと浮き上がる! 60
2018-12-31 13:02:01ネクロマンサーは声の限り叫び、フレッシュゴーレムへと命令を下す!「ゴーレムよ!この者を潰せ!」「イヤーッ」フレッシュゴーレムが両手で吹雪を挟み潰さんとする!アブナイ!このままでは血を吸い愚鈍となったモスキートめいて血を撒き散らして死んでしまう! 61
2018-12-31 13:05:01「スゥーッ…ハァーッ…」吹雪は調息した。既にフレッシュゴーレムのカラテと膂力は観察し終えている。血の中にカラテを巡らせ、己自身を調える。そして吹雪は新たに観察した。フレッシュゴーレムの体に、その筋肉の律動に、僅かな軋みを観た。 62
2018-12-31 13:08:00吹雪は腕を交差させ、そして渾身のカラテを込め、肉の壁じみたフレッシュゴーレムの両の掌目掛け、開くように掌打を叩きつけた!「イヤーッ!」CRAAAAAASH!「アバーッ」カラテ衝撃を余すことなく注ぎ込まれ、フレッシュゴーレムの両腕は肩から粉砕!拉げ飛ぶ! 63
2018-12-31 13:11:00ネクロマンサーは狼狽え、ワナワナと震えて言った。「バカな、あれだけ消耗させたんだぞ…それほどのカラテがあるわけが…!」「カラテとはエゴの力、意志の力だ」吹雪は六連回転着水し、決断的に言った。気が付けばスコールは止み、元の夕焼けを取り戻していた。 64
2018-12-31 13:36:53「私の心が折れぬ限り、私のカラテが枯れることはない」「コシャク…!だが我がフレッシュゴーレムは不滅…!」 「その話は聞き飽きました」吹雪は溜息を吐き、そして呆れたように言った。「貴女の弱点はただ一つだ。己のジツにアグラをかき、状況判断を怠っていることだ」「何…?」 65
2018-12-31 13:39:37その時、ネクロマンサーの背に恐るべき超自然のアトモスフィアが圧し掛かった。それは魂をヤスリ掛けめいて削るかのような荒々しさであった。思わず恐怖を覚え、振り返る。その視線の先には、海中より上半身をもたげ、口元から恐るべき量の泡を吹く大海龍の姿があった。 66
2018-12-31 13:42:47その全身は夕日すら染め上げるかのような赤い光を帯びていた…ナムアミダブツ!不遜なる死霊魔術師は、遂に荒ぶる海神の逆鱗に触れたのだ!大海龍は、その口元から大いなるブレスを解き放った!「GRAAAAAAAARHHHH!」SPLAAAAASH!「グ、グワァアアアアアーッ!!!?」 67
2018-12-31 13:45:57ネクロマンサーに、次の動きは許されなかった。いにしえより生き続ける古龍の生命とカラテ、そして憤怒を叩きつけられ、ネクロマンサーはフレッシュゴーレムごと、空の彼方へと押し流され、消え去った。空には虹がかかり、龍の怒りを宥めるかのように美しく煌めいていた。 68
2018-12-31 13:49:31「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#4 「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#5(エピローグ)へ続く
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