「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃４

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フラグメンツ・オブ・エピック：ディープ・オーダー」シリーズより 「ナバルの章：ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ？」＃４

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(これまでのあらすじ：「海中に出現する巨大な何か」を追いかけるリカルド・吹雪師弟はディープ・オーダーのライオンハート、そしてはぐれネームド深海棲艦のナバルと協力し、遂に「何か」の正体が偉大なる『大海龍』ナバルデウスであると突き止めた。)

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(だが、大海龍は突如としてリカルドとナバルに敵意を剥き出し…) togetter.com/li/1291045

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「GRAAAAH！」光届かず、音すら絶えた暗い海の中が、震えていた。超常の威圧アトモスフィアとカラテが、世界を怯えさせる。リカルドは恐怖と歓喜の入り混じった表情で、巨いなる者を見ていた。 1

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古龍種。伝説のドラゴン。命の中に在って命を超える者。自然より生まれ出で、太古より悠久の時を生き続け、あらゆる生態系から逸脱した超自然の支配者。真なる狩人、モンスターハンターがその道の果てに辿り着く、運命の化身。 2

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『大海龍』ナバルデウスもまた、その古龍種の一角。海の深淵に棲み、支配する者。その超越者の敵意が、全てリカルドに注がれていた。並のハンターでは発狂するであろうその威圧アトモスフィアを総身で受け取り、しかしてリカルドは笑みを深めた。 3

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ハンターにとって、自然とは敬意を払い、その上で戦うべき相手だ。古龍種とは言わばその極致に立つ相手。自然を超え、自然を支配し、自然を規定する世界そのもの。多くの狩人はごく少数の例外を除けば、多大な幸運を伴わぬ限り出会う事はない。 4

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モンスターハンターでなければ決して必然には出会えない存在。その存在が今、リカルドの眼前に居る……リカルド・ベレンゲルという男は、ハンターである。狩りを愛し、誇り、血肉とする者だ。だが、決して彼は真なる狩人、モンスターハンターではない。 5

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彼が心の奥底で求めているものは、調和ではない。決して満たされることのない渇きを潤す事。成功も失敗も保証されぬ、命を懸けた狩猟の舞台のみが、彼の狩猟本能を掻き立てる。彼は今、偶然という糸にぶら下げられた極上の肉を目の前にする犬めいていた。 6

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もはや待った無しだ。リカルドは背負った己の得物を…剣斧ヘリオスクラッシャーを振りぬこうとした。その時だ。((待って！))コトダマが、稲妻めいてニューロンを打った。リカルドは恍惚の海から意識を浮上させる。微かに不快感を露わにし、リカルドは振り返った。 7

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その視線に、ナバルの咎める視線が返された。リカルドは思わず視線を外してしまう。ナバルはがなり立てるようにエコーを投げつけた。((あなた、何をしようとしていたの！))リカルドは肩をすくめた。彼は冷静さを取り戻していた。熱狂は夢めいて去り、現実と向き合う。 8

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眼前の大海龍は、どう見ても怒り狂っている。ナバルがコミュニケーション方法を誤ったか？ネクロマンサーの傀儡共が煩わしかったのか？否。そうではないだろう。リカルドは観察した。数少ない文献資料の共通項から、リカルドは大海龍の生態的特徴をある程度把握している。 9

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((発光色は……「青」だ。「赤」じゃない))過去、交戦経験があると思わしき資料は皆一様に、「光の色」について言及していた。曰く、「さまよえる海の神、その逆鱗に触れし者は赤き光を末期の景色とするだろう」「巨人の光が赤へ染まるならば気を付けろ。汝は彼を怒らせた」 10

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どの文献も赤い発光色を大海龍の怒りの感情へと結びつけていた。では、眼前の大海龍はどうか。青紫色の霞に覆われ視認し難い状況ではあるが、ハンター視力は大海龍の発光色を青色であると捉えている。これは妙だ。古龍種とは、ほぼ全ての生き物を歯牙にもかけぬ強大な生命だ。 11

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真なる狩人、モンスターハンターか同族である古龍種以外で彼らの生命活動を阻害する存在はいない。故にこそ、古龍種は他の生命に意識を向けることはない。眼前の大海龍に追い詰められた様子は見受けられない。なればこそ、答えは一つ。((ネクロマンサーとやらの、ジツか)) 12

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「GRAAAAAAAH！」大海龍が身を捩り、突進を繰り出した。ナバルはリカルドの腕を掴み、急速浮上し、悲鳴を上げて大海龍へとエコーを投げかける。((ちょっと！私のことが分からないの！？))リカルドはナバルに向けて腕を斜めに交差させた。無駄な行いであるという意思表示だ。 13

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ナバルはその意図を汲み、コトダマの叫びをあげた。((なら、どうしろって言うの！))リカルドは応えなかった。ただ、行動で示すのみ。その背に負った己の誇りを抜き放つ。複雑な機構が蠢き、無数の牙を持つ剣の形を成す。そして刀身からは、漆黒の海を焼く赤黒い稲妻が迸る。 14

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「GRAAAAAAAH！」大海龍が方向転換、再び突進を繰り出した。その巨躯と圧倒的カラテに接触すれば、負傷は免れない。リカルドはその動きを観察する。極度集中から、主観時間が泥めいて凝る。((観察し、己を調え、そして観察せよ)) 15

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幾度と繰り返し、ニューロンに刻み込んだインストラクションの反芻。ソーマト・リコール。過去からの教えが、再びニューロンを稲妻めいて駆ける。(((狩りとはすなわち、大いなる自然との語らいなり。己のみでは成り立たず。さりとて為すが儘でも成り立たぬ…))) 16

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大海龍がゆっくりと迫って来る。リカルドは惑わない。その目は決して大海龍から逸らされることはない。(((観て察せよ。獣たちのカラテは言葉よりなお雄弁である。そして己がカラテを調えよ。カラテにはカラテで以てせよ。互いのカラテの交差の果てにこそ…更なる観察が待つのだ))) 17

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ゼンめいた教えであった。今もって、その意味を真に理解できているとは言い難い。だが、得るものは常にある。大海龍が迫る。リカルドは綿毛めいて、浮くように逃れる。足元に潮の流れを感じ取る。それと同時に、古龍の持つ超自然のアトモスフィアも。その中に混じる不純なアトモスフィアすらも。 18

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((流れは、何処だ))如何なる力にも、「流れ」が存在する。カラテは意志より湧き立ち、生命の力は陽の光から始まり、血の巡りが循環させる。では、ジツの流れは如何に？((古龍に影響を与えるほどの力、よほど大きな力か…或いは)) 19

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リカルドは観る。大海龍の頭上を取ったことで彼はより広く、高い視座を得た。大海龍の全身を覆う青紫色の霞は、全身を均一に覆っているのではない。徐々に、徐々に拡がっているものだ。霞は頭部から背、尾に向けて濃くなっていく。 ((…接触するほどの近接距離！)) 20

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((アレ！))鋭く、ナバルのコトダマが響いた。彼女は大海龍を指差してエコーを響かせる。((尾っぽの方！何か光ってる！))リカルドもまた感じ取る。不純なアトモスフィアの終着点は尾の背中側！一番霞が濃密な箇所！確かに、不気味なまでに光っている！青紫色に！((あれが、そうか)) 21

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((あそこに悪さしている奴がいるんだね！))ナバルの口元が、激しく泡立った。恐るべきカラテの高まりが、海水越しに感じ取れた。やがてナバルはカラテと共に、膨大な水量を解き放った！激流めいたブレス攻撃だ！「イヤーッ！」SPLAAAAASH！ 22