Asadori_Qlyさん『宮崎真・早野龍五論文』を読む(2019.1.14作成)

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AsadoriQlyさん 第一論文を読む

asadori_Qly @AsadoriQ

遅ればせながらようやく宮崎早野論文の1を読んだ(他の原稿(複数)も目を通しています)。何人かの人がすでに指摘しているが(すみません、TLで指摘があったのは少し前なので個別に参照できてません)、この論文の大きなポイントの一つは概念の位置付けをめぐるもの。

2019-01-14 17:47:28
asadori_Qly @AsadoriQ

その前に、この論文の「Ethics statement」にガラスバッジの個人データについては緯度と経度を100分の1にして「擬似匿名化」したとある。緯度は1度が110キロくらい、経度は伊達市の緯度が38度くらいなので1度が88キロくらい。100分の1だと1.1キロと0.88キロ。

2019-01-14 18:01:55
asadori_Qly @AsadoriQ

伊達市は横15キロ縦20キロくらい(横とか縦とかインチキな言葉をつかってごめんなさい)。そうすると、緯度と経度を100分の1まで粗くしてFigure 3のデータは出せないのではないかと思う。

2019-01-14 18:05:30
asadori_Qly @AsadoriQ

あ、これも既出。すばらしい図つき。 twitter.com/hirax/status/1…

2019-01-14 18:05:56
Jun Hirabayashi (平林 純) @hirax

宮崎早野論文をきちんと読み始める。論文①冒頭に「解析に先立ち、緯度経度ともに1/100に丸めることで擬似匿名化してある」とあるが、なるほど、Fig.3(を地図に重ねた左図)は、緯度経度を1/100にしたらこうなる右図とは違う。このデータ扱いは行われたことと違うのだな。 iopscience.iop.org/article/10.108… pic.twitter.com/iggUFY1xho

2019-01-13 23:04:18
asadori_Qly @AsadoriQ

(上の「あ、」というのは、今気づいたという意味ではなくここで補足しなきゃという意味。)もう一つ全然関係ないけど、Table 1のB、C地区の扱いは本文の記述とずれてる?

2019-01-14 18:08:04
asadori_Qly @AsadoriQ

さて、概念。この論文は「入手可能な周辺線量率の調査データに基づき実効線量を評価する方法を確立する」ことを目的としている(日本語は黒川眞一さんによるものを一部改変)。

2019-01-14 18:13:38
asadori_Qly @AsadoriQ

この論文で大きなポイントは、個人線量率と空間線量率の比の平均が 0.15±0.03 ということ。ここで大切なのは0.15というのは比の「平均」であること。

2019-01-14 18:14:21
asadori_Qly @AsadoriQ

これを述べた直後に論文では、空間線量に基づいて追加実効線量を評価するために日本政府が採用した係数0.6を持ってくる。参照されているのは、ここ。 josen.env.go.jp/material/sessi…

2019-01-14 18:21:24
asadori_Qly @AsadoriQ

直前のツイート、少し正しくない。論文では日本政府が採用したシナリオに基づくと係数は0.6となると述べている(論文の10ページ)。それから、図4を参照して、0.15±0.03(ピンク)に対して0.6(濃い青)がはるかに上に来ることが示される。

2019-01-14 18:28:49
asadori_Qly @AsadoriQ

本文:"The thick blue line in each panel of figure 4 corresponds to this scenario. As shown, the blue line (the government estimate based on its standard behavioral scenario) lies well above the pink band, which is based on actual measurements."

2019-01-14 18:30:45
asadori_Qly @AsadoriQ

でこの文は、「標準的な行動シナリオに基づき日本政府が推定した」係数0.6で引いた青線は「実際の測定に基づく」ピンクのバンドよりもはるかに上に来る、と述べている。対比されているのは「シナリオに基づき推定された」値と「実際の測定に基づく」値。カッコの中。

2019-01-14 18:35:55
asadori_Qly @AsadoriQ

ちなみに、0.15と0.6の対比については「4. Discussion」でも、「本研究で得られた係数は政府が採用した係数よりも約0.25倍小さい」と述べられている。

2019-01-14 18:39:58
asadori_Qly @AsadoriQ

ところで、0.15は「平均」であった。図4に示されているように(箱ヒゲ図だから中央値と分位数、論文も分位数を使って議論しているところもある。分布がひどく偏ったものでもないので平均と中央値はあまり区別しなくてよさそうだし実際論文では図5を示してでは中央値での係数が0.15とも述べている)。

2019-01-14 18:44:46
asadori_Qly @AsadoriQ

中央値の方が楽なので中央値とすると、半数の人で、個人線量率は周辺線量率*0.15よりも大きくなっているということ。一方、0.6でも外れ値の一部はカバーできていない。

2019-01-14 18:48:04
asadori_Qly @AsadoriQ

ところで、この0.6は、平均を捉えようとしたものなのか、というとそうではない。そもそも論文で参照されている会議では、被曝を一人あたり平均1mSv/年に抑えるためにとはどこでも言っていない。

2019-01-14 18:50:09
asadori_Qly @AsadoriQ

それは当たり前で、追加被曝線量を1 mSvに抑えるというのは「すべての人に対して」が基本。病院の放射線管理区域とかでも「平均」ではないし放射線業務従事者の基準は「平均」ではなくすべての人一人一人において守られるべきもの。

2019-01-14 18:52:34
asadori_Qly @AsadoriQ

で、問題は、0.6という値の性質が論文では明確にされていないこと。なので、0.15と0.6が4倍違うというのは、A大学の学生の平均身長の実測値とB大学で最も背の高い学生の推定身長とを比較しながらB大学については最も背の高い学生を論じていると言わないような感じ(あまり素敵な喩えじゃない)。

2019-01-14 18:56:22
asadori_Qly @AsadoriQ

さらに例えば「4. Discussion」にある「These results show that coarse-grained airborne data can be a useful estimator for predicting the individual doses of residents living in contaminated areas.」のように「平均」が読み落とされてしまいそうな文がある。

2019-01-14 19:01:08
asadori_Qly @AsadoriQ

日本語:「これらの結果は、航空機による粗いデータが、汚染地域に住む住人の個人線量を予測するために有用な推定量となりうることを示している。」

2019-01-14 19:06:15
asadori_Qly @AsadoriQ

ここで英語表現「the individual doses of residents living in contaminated areas.」は、「住民個々人の個人線量」を意味する(「平均」を示す読みはこの英語の構造では、ない)。でも実際にそれはこの論文の枠組みではできないし、0.15はあくまで「平均」。

2019-01-14 19:11:00
asadori_Qly @AsadoriQ

ICRP報告111:「一般にきわめて非均質な被ばくの分布が生じ、状況を管理するには個別の取り組みが必要になる。結果として、「平均的個人」を使うことは、汚染地域における被ばくの管理にとって適切ではない。」

2019-01-14 19:12:35
asadori_Qly @AsadoriQ

関連して、2017年3月9日発行「だて復興・再生NEWS」Vol. 30の2ページにある宮崎真さんの記事「伊達市のガラスバッジ測定から明らかになった大事なこと」 city.fukushima-date.lg.jp/uploaded/attac…

2019-01-14 19:20:26
asadori_Qly @AsadoriQ

「実際の測定結果にもとづく解析によって得られた比例係数0.15は、環境省が2011年に採用した空間線量率から実効線量への換算係数0.6(「実効線量=0.6×空間線量」で示されます)が、結果的に4倍ほど安全側に立つ係数であったことを示しました。」 平均でよいという前提はないのでこれは不適切。

2019-01-14 19:21:57