ギガベース日誌 ほのぼの閑話「木曾の性癖」リメイク

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「加賀さん、提督、おはようございます。提督がこの時間にいらっしゃるのは珍しいですね」 「おう。朝から御苦労様」 食事の注文は、入口部に4台ほど併設されたタッチパネル式注文機に識別IDを読み込ませる形式である。　#ギガベース日誌

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入力された注文内容は注文者と紐付けられ厨房へと送られる。加賀は決まった時間に同じものを食べるタイプの艦であり、間宮も開放前にある程度準備を済ませていたが、DfJの今日の注文は予想外の定食メニューだった。 「はい、どうぞ。提督の方はもう少しお時間頂きますね」 「ああ」　#ギガベース日誌

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渡し口から厨房に戻る間宮の背中からは、財団製のサブアームユニットが蜘蛛の脚のごとく面妖な存在感を放っている。 割烹着は背中が開いた仕様のものに新調されており、間宮は完璧にそれを使いこなしているように見えた。 「すまないな。いつもと違って面倒なのを頼んで」　#ギガベース日誌

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「いえ！えーと……タバスコか、七味などお付けしますか？」 「タバスコで構わん。細かい辛味の違いや風味なんてもうわからないからな」 DfJの全身を蝕むコジマ汚染。早い段階で表れた自覚症状の1つが、味覚の異常だった。　#ギガベース日誌

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異常は完全な喪失となり、DfJは食事という行為に対する興味をも喪った。 腕をそれなりに自負していた料理も行わなくなり、少しでも食べている実感を痛みとして得る為、彼は食事の際に辛味調味料を常備するようになった。　#ギガベース日誌

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自分が手塩にかけて作った料理を台無しにするかの如き行いに最初は得も言われぬ不快感を抱いていた間宮だったが、事情を知ってからは欠片もそんな事を思わなくなった。 「お待たせしました。朝定食です」 「ありがとう。で、サブアームの調子はどうだ？」　#ギガベース日誌

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「良好です！おかげで昼時の行列がほぼ解消できました！財団さん……でしたでしょうか？是非御礼が言いたいのですが」 「やめとけ。どうしてもって言うなら俺が代わりに伝えてやる。それと」 DfJは渡し口越しに間宮を手招きした。 「ちょっと話せるか？こないだの話の続きだ」　#ギガベース日誌

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「大丈夫です。今そちらに」 数日前と同様に机に座る間宮とDfJ。白米を紅く染め上げながら、DfJは気だるげに口を開いた。 「実を言うと“また”やられた」 「本当ですか？！今度は……」　#ギガベース日誌

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「しかも今度は、燃料とプラントから出た汚染廃棄物だ。燃料保管庫はすぐセキュリティを強化してから被害は無いが、廃棄物は完全にノーマークだった」 「なんでまたそんなものを……」 「一応使い道はあるんだがな。ミサイルに詰めて嫌いな奴の家に撃ち込むとか」　#ギガベース日誌

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眼に優しくない色彩を纏った白米を口に運びながらDfJはぼやく。 「そのまま海に棄ててもいい物だが、トーラスが買い取ってくれる。だから保管してたが……恐らく数週間前から継続してやられていた」 「そんな……」 「そろそろ本腰入れてとっちめなきゃならない段階だと思ってな」　#ギガベース日誌

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「ブラウニーに燃料と廃棄物となっちゃいよいよ目的から特定する線は難しいから、疑わしい奴に的を絞ろうと思ってな。食堂に来た艦娘に様子がおかしい奴はいなかったか？どんな些細なものでもいい」 「そうですね……あっ」　#ギガベース日誌

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「球磨さんと木曽さんです。よく来るようになったとこの前お話したと思うのですが」 「……すまん、覚えてない。それで？」 「ブラウニー泥棒のお話を聞いてから頻度が更に上がって……それも、お二人とも食堂ではなくてどこか他の場所で食べているようなんです」　#ギガベース日誌

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「食器はちゃんと戻して頂いているんですが……役に立ちますかね？」 「それはこれからわかる事だ。これを食ったら奴等の部屋に殴りこむことにしよう」　#ギガベース日誌

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20分後。 DfJと間宮、そして付き添いの為に叩き起こされたレ級と不知火が木曽の部屋の前に立っていた。 「なんで俺なんだよ……」 「部屋が近かったから」 「なんで不知火まで……」 「秘書艦だから。うだうだぬかすんじゃない」　#ギガベース日誌

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「銀蠅の犯人探し役なんてもっと真面目な艦に回せよなぁ」 「あんまりしつこいとジャックに引き渡すぞ。生きた深海棲艦個体を確保してくれって頼まれてる」 「ジャックって……こないだ本社にいた頭おかしそうなレイヴンの片割れか？何に使うんだよ」　#ギガベース日誌

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「知らん。鹵獲した艦を釣り餌にするのは上手くいかなかったから、最悪お前をくれてやろうかとも思ってる」 「勘弁しろよ。暴れるぜ。どうせエイとかイルカみたいな用途で使うんだ」 「提督。さっさと突入しましょう。間宮さんもあまり厨房を空ける訳にはいかないでしょうし」　#ギガベース日誌

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「そうだな。それじゃ」 一応ノックだけはしておこうと思い、扉を叩くDfJ。反応は無い。 開閉スイッチに触れるも、扉は内側から何かで固定されているようだった。 「こりゃ黒いな。よし……」　#ギガベース日誌

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少し下がり、勢いをつけて扉に蹴りを叩き込むDfJ。しかし、扉はびくともせず、相変わらず室内からの反応は無い。 「おいおい弱っちいな人類種の天敵キック。いっちょ任せてみろ」 「任せた。壊しても構わん」　#ギガベース日誌

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「離れてな。こいつでぶち抜いてやる」 レ級の尻尾が変形し、口蓋の内から砲身が露出した。先端に緑光を蓄えた黒い筒はドアに向けられ、爆音と共に極小サイズの圧縮コジマ粒子が叩き込まれる。しかし、結果は4人の予想に反したものだった。　#ギガベース日誌

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「無傷だとぉ！？」 「それ以上は俺が死ぬからやめろ。しかし、耐コジマ装甲とは……いつの間に仕込みやがったんだ？」 「やべえよこのドア。防壁ド級flagship、フラドアって感じ。大和か武蔵でも呼んできた方が……」 「私に、やらせてもらえますか？」　#ギガベース日誌

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名乗りをあげたのは間宮だった。彼女のサブアームは既に変形し、8本の腕は財団の技術の粋が詰め込まれた最新鋭武装を構えている。 「……よし、やってみろ」 ドアから離れる3人。そして、間宮のアームが一斉にドアに襲いかかった。 #ギガベース日誌

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爆音と共に削れゆく扉。ドアノブから鍵部分にかけてあらゆる属性の破壊手段が叩き込まれ、トドメと言わんばかりに間宮本来の右腕とサブアームによる同時殴打が炸裂。ドアだった板は中心から引き裂かれ、部屋の内側へとめくれ上がった。　 #ギガベース日誌

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「よくやった、間宮。それじゃ、突入し」 「なななななななんだってんだよててっ提督って」 DfJが無残に引き裂かれたドアの裂け目から室内に顔を潜らせようとした瞬間、暗闇の奥から伸びた木曾の腕が彼の身体を押さえつけた。　#ギガベース日誌

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「おう、木曾。邪魔するぞ」 「のっの、ノックぐらいしろよ！！提督だからって勝手に艦娘の部屋に入っていいわけ」 「ノックならしたが？俺とレの字と間宮の3人がかりでな」　#ギガベース日誌

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「最初の一回以外ノックじゃねえだろぉ！！！」 「やっぱり聞こえてるじゃねえか。マス掻き中にお母さんに突撃されたティーンみたいに慌てやがって。お前今何してた？球磨は一緒か？」 「めめめ飯食ってただけだよ！それに、球磨姉さんなんか知らな」　#ギガベース日誌