私と人形９ ドルフロ：ショートショート

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#私と人形　私は『指揮官』辺境の分屯基地で人形を率いて時に闘い、時に重要人物の護衛を行うのが仕事。 今日は後者の仕事だった。G&Kの支部曰く、とても重要な人物らしい。私はナガンとARを率いて輸送用のカモフ・ヘリコプターへと乗り込んだ。ダミー達も引き連れて。少し仰々しいかもしれない

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M16と、最近着任したばかりのSOPIIはこの『お出掛け』に参加出来なかった事を不満に思っていたが、私は説明した。「もしもの場合、M16は戦闘経験が豊富で指揮モジュールが無くても人形達を率いて戦えるでしょ？SOPIIはM16との連携が取りやすいからお留守番をお願いした訳。OK？」

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斯くして私達は機上の人となった。「時に指揮官、今日の任務は何なんじゃ？」ナガンの問い掛けにAK47、FAL、63式、そして9A91は不思議そうに私を見つめた。私は答えた。「正直に言うわ。私でさえ詳細な情報は貰っていない。分かる事は私達の基地の近隣の分屯基地へと向かう事だけよ」

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「何だか焦臭いわね…」FALの言葉に、私を含めて全員が頷いた。「何はともあれ、秘密の箱を開けてみない事には始まらないわ」9A91が言う「配られたカードで勝負するしかないんです。それがどういう意味であれ」彼女の言葉にAK47は問い掛けた「誰の言葉？」「Да、絵本にあった言葉です」

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私達は飛ぶ。大した距離ではないが。其所には見知った顔が居た。広範囲に鉄血の人形が疎らながらも広く展開した時に共に闘った指揮官だ。そしてその近くには、G&Kの黒服の制服を着込んだ護衛が立っていた。尤も、護衛と言うよりは昔の映画のエージェントか、悪党の手下にも見えなくは無いのだが。

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黒服の制服を着込んだ護衛が言う。「今回の任務ですが、G&Kの支部まで彼女を護衛して下さい」その言葉に私は訝しがった。「何故我々が？　彼女の基地の人形を用いて支部まで移動すれば良いでは無いですか」すると黒服の男が言った。「これには歴とした理由があるのですよ。貴女には迷惑かもですが」

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何はともあれ、私は知人の指揮官と久しぶりの握手を交わした「健康診断なんですって」彼女は屈託無くそう言った。「まぁ、別段珍しい事では無いですね」私だって、定期的に義体のメンテナンスを受けている。最近は手先の器用なグリズリーに二日に一度の定期的なチェックをして貰っているが。

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やや時間は過ぎて、G&Kの支部に我々は到着し、我々は暇を潰す事になる…ハズだった。私だけを除いて。「『指揮官』殿、少しお立ち会いを願いたいのですが」黒服が言う。私は渋々タンブラーを片手に黒服の後ろを付いていった。其所はマジックミラー越しに、部屋を見る事が出来る部屋だった。焦臭い。

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其所には件の彼女が椅子に座っていた。二人の技師を前にして。「あの、私…状況が飲み込めないのですが」彼女の困惑した表情から、それは確かにうかがえた。「改めて、このＸ線写真をご覧になって下さい。此方が人形の物。そして此方が貴女の物です」私は嫌な予感がした。とても背筋がピリピリする。

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「端的に申し上げましょう。貴女は人間の指揮官を模した指揮能力を持った人形です」私はやっぱり…と言う嬉しくない感情が湧き上がった。「どうして…どうして、そんな」「…昨今では、指揮官としての能力を満たす人材が足りていないのですよ。そして貴女の様な存在が産まれた」私は頭が痛くなった。

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「そして…申し上げにくいのですが、最近の貴女は少しばかり作戦のミスが見受けらる。我々は貴女の指揮能力をデバッギングをすると共に、システムのアップデートを掛けたいと思います」「そんな！私は…いえ、私をパソコンか何かだと思っているんですか！？」彼女の気持ちも尤もだ。私だって嫌になる。

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「お気持ちは判ります。ですが…申し上げにくいのですが、このまま貴女を放置し続け、貴女と貴女の指揮する人形を失うのはとても悲しい。どうか此処は一つ、ご協力を…」その言葉に彼女は最後の質問をした。「…私の記憶は、消されたりしませんか…？」「ご心配なく…確りと残ります」

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私は黒服に言われるまでも無く、踵を返してその部屋を後にした。とても胸くそが悪かったからだ。「ゴ－ストを持つ人形と、四肢を義体化する羽目になった私と、果たしてどちらが人形で、どちらが人間か判ったもんじゃ無い…ふんっ！」飲み終えたタンブラーをゴミ箱に投げ込み、私はつかつかと歩いた。

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そして、人形が待つ待合室へと私は入っていった。「どうしたんじゃ『指揮官』、随分と苛ついているでは無いか」そう言うナガンを、私は抱き締めた。「何じゃ何じゃ。唐突に」他のAR達も私の行動に不審を覚えた。「…自分の存在、自分のアイデンティティに不信感を感じたからよ…」私は正直に言った。

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正直に心中を暴露すると、ナガンは私の背中を撫でてくれた。「何があったかは到底判らんが…『指揮官』はわしらの大切な『指揮官』である事に代わりは無かろう」…彼女の言葉に、私の生身の目から涙がこぼれ落ちた。この涙が、アイセンサ－の潤滑保護液でない事を、私は切実に願った。怖かったから。

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…暫くして件の彼女は現れた。「…ああ、良かった。貴女との記憶がちゃんとあって。都合良く、上書きされたのかと思ったから」彼女の言葉に、私はどんな表情をすべきか悩んだが、仕事の顔をする事に決めた。「要件は無事に終わりましたね？それでは帰りましょう。貴女の帰りを待つ人形達の場所へ」

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…その後暫くは、彼女は確りと人形達の指示を取っていた。時折、バックアップとシステムのアップデートを取りながら。曰く彼女は貴重な指揮官型人形の初期型の一体らしい。壊れては成らないからこそ、この辺境の地に送り込まれたのだとか。人形の隣人に、私は如何接するべき悩んだが、結論に至った。

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たとえ人形だろうが人間だろうが、同じ指揮官同士、死ぬ時は死ぬし、生きる時は生きる。 我々はそう言う存在なのだから。 生も死も等しい。人形だろうが人間だろうが。 ならば、生きねばなるまい この過酷な世界を。 武器を持つ、戦術人形達と共に。

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ドットハライ。